第四拾四話 戦闘開始
守護四家は主殿へとたどりついた。
途中、腹をすかせた雑魚妖鬼が襲ってきたが、返り討ちにしてやった。
「左近、火気を使う時は注意してくださいね」
「そうじゃ、妖鬼を倒す為とはいえ、楼閣に燃え移ったりしたら姫殿に危険が及ぶ」
「わかってるって」
いつまでも続く階段に、左近がうんざりして言った。
「なぁ、宝玉の気配がしねぇよ。姫さん…大丈夫かな?」
「大丈夫に決まっています。くだらないこと言ってないで宝玉の気配を探しましょう」
「うむ」
先頭を行く天壱からの返事はない。
(絶対に助けてやる。待ってろよ、結子)
ようやく主殿の最上階らしきところへ出た。
広い石畳の正面には、踊り場と階段がいくつも連なり、祭壇のようになっていた。そして、そこには巨大な襖らしきものが開かれている。左右は剥きだしの岩肌だ。
「なっ…なんだ!?」
「大当たりのようですね」
「気をつけろ。感じる…近くに妖鬼がおる」
実は四人が真っ先に目を奪われたのは祭壇ではなかった。
岩肌にそって連なっている無数の白い繭──その中には幾人もの少女たちが閉じ込められていた。
「結子、結子はどこだ…」
おびただしい数の繭、繭、繭。
縦にも横にも隙間なく埋め尽くされた繭の中では、命あるモノの気配。
「彼女たちは生きていますよ。おそらく姫様もこの中の何処かに…」
「めんどくせぇ、手前から壊しちまおーぜ!! 夜叉丸、変化だッ」
「うっきぃ」
「それは困りますわ」
夜叉丸が仕込み刀へと変化した瞬間、芙蓉、明凛、香頭羅の三人が現れた。
「ようやくおでましか」
「また会ったな。だが言ったはずだ。この次会う時がお姫様を失う時だと」
天壱は刀を二本かまえた。香頭羅もまた肩にかけていた輪状の刀を両手にかまえる。
「来るぞ」
「万里は姫さんを探してくれ!」
戦いが始まった。
天壱は香頭羅と対峙している。彼の武器は輪状の刀だ。
片方で天壱の刀を受け流すと、もう一方の武器を投げ飛ばす。
思いがけない方角から弧を描いて戻ってくるので、気がそがれて集中できない。
天壱は押され気味だった。
「そらそら、どうした! 力を得たといっても、所詮はその程度。百年前のように可愛がってやるよっ」
「くそっ…!」
その近くでは左近が芙蓉と空中戦をしていた。
芙蓉が巨大な鉄扇で暴風をおこすと、左近も負けじと翼を使って応戦した。
「サルみたいに身軽ですわね! 脳ミソも軽そうですわ」
「うるせー、年増!!」
「なんですってっ」
「千年生きてりゃ、十分、ババアだ!!」
空中では舌戦も繰り広げられていた。
ようやく戦いが始まったというカンジであります。
実は携帯から投稿しようとしたら、なんか変な操作をしてしまったらしく、44話が43話より先に掲載されるという失態をしでかしてしまいました。
一瞬とはいえ、もし44話を先に読んでしまった方がいたらすみません。(泣)