表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣の烙印  作者: 日野枝 弥
42/53

第四拾弐話 結界を解け

 かつて暁城が存在したところは荒地となっていた。

 あまりの変わりように四人は言葉がない。そもそも建物自体が見つからなかった。

「ここ……だよな?」

「微弱な妖気を感じる。おそらくは結界で隠しておる」

 白蓮は盲目なだけあって、人間や(あやかし)の放つ気には敏感だった。

「では、私が」

 万里が背負っていた箱の中から、独鈷(とっこ)を取り出した。そして荒地を囲むよう、等間隔(とうかんかく)に独鈷を地へと投げ込んでいく。


(姫様……必ず、お助けいたします)


(カイ)!! 雷気召喚っ!!」

 万里が叫ぶと天から(いかずち)が落ちてきた。独鈷で囲んだ土地の中を稲妻(いなずま)は放電し続け、なにか重量感のあるものとせめぎあっているように見える。

 力を解放した万里の顔に、天壱の腕に似た斑紋(はんもん)が浮かび上がった。それについて、もはや誰も追及しなかった。



 やがて──幼き頃より慣れ親しんだ暁の城が現れた。今では魔物の巣となっている。

 妖王の根城とはいっても、人間の姿も妖の姿もなく閑散(かんさん)としていた。

「こいつは……妖王の趣味か?」

 幾つも建てられた楼閣(ろうかく)、繋ぐように架けられた渡り廊下に天壱はあきれ顔だ。

「趣味悪いし、薄気味わりぃ〜」

 左近がうんざりした口調で言った。

「妖鬼の姿がねぇな…」

「本来、妖鬼は統率(とうそつ)するとか、されるといった概念(がいねん)をもちませんからね」

側近(そっきん)たちが例外ってことじゃな」

「行くぞ」




 ドン!! という衝撃波と共に妖王の城は揺れだした。

 一所(ひとところ)に集っていた側近たちは、結界が破られたことをすぐには理解できなかった。

「なーんか揺れたねぇ…」

 血を思わせるような紅を唇へと塗っていた明凛(めいりん)がのんびり言った。

「来たな」

 香頭羅(かずら)だけが椅子から立ち上がり、肩に武器を担いだ。

 戦うことが好きな妖鬼は、骨のあるヤツと戦うことを心底楽しむつもりだった。

「来たって何が?」

「ヤツらがお姫様を奪還(だっかん)しにきたのさ」

「もしかして…私の衣装を焦がしてくれた方たちのことかしら?」

「なんだって!? あの二人組…絶対に許さない、行くよ芙蓉(ふよう)!!」

 以前対峙(たいじ)したことのある女妖鬼たちは、鼻息荒く室から出ようとしていた。それを蛆理(うじり)が引きとめる。

「何人いるか知らねぇが、俺ひとりで十分だ。お前らは祭壇を見張れ」

「……ではそうしましょう」



 あれから香頭羅は、主殿へとやってきた。

 ひとり不服そうな顔をしたままの妖鬼は、ふと立ち止まった。

 岩壁に連なった繭の中に、暁の巫女の姿がある。

 結子は繭の壁に両手をかけたまま──硬直していた。瞳は見開かれたままだ。その瞳にもはや生気はない。

 生け贄を捧げてアムリタを作り出す。それで妖王・朱羅(しゅら)は復活する。

 香頭羅は祭壇の最上階を見上げる。

 そこに現れた巨大な襖は──開かれていた。


 ぼちぼち終盤に近づけていかねばなりません。

 しばらくは戦闘が続きそうなので、テンションあげて書かないと。がんばれ私〜!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ