空のアトリエ
「今日は何を作ろうかしら?」
まんまるおめめをパチパチさせて、ビスタはうでを組み、考え始めました。
ビスタの目の前には、白いモコモコとしたくもがプカリと浮かび、彼女を待っているかのようです。
「きのうはうさぎ、おとといはかめでしょう。今日は……くまにしてみようかな。」
やわらかいくもを手に取ると、手ぎわよく胴体から作り始め、顔に鼻と口、目をつけて、最後にくまの耳をつけて出来上がりです。
ビスタは願いを込めて、そのくまを地上へと放しました。
「どうか、このくまを見つけて……。」
ビスタから放たれたくまは、遠く見えなくなりました。
休むまもなく、ビスタは同じようにくもでくまを作ります。何体も何体も……。
そしてまた、地上に向けてくまを放し続けました。
「あっ、おまんじゅうのくもだ」
地上では、たくさんの子供たちがそらを見上げては、くもの形を見て当てっこ遊びを楽しんでいます。
空には無数くもが浮かび、ビスタの作ったくまがいろんな形に変化していました。
「あれは、トマト?」
「あっちに、ドーナツもあるよー。」
子供たちの口から”くま”のくの字も出てきません。
「今日もダメだったわ。」
子供たちの声に耳を傾けていたビスタは、ガックリと肩を落としました。
「ビスタ、気を落とさないで。あなたはまだ始めたばかりなのだから。」
やさしい瞳をした女性が、ビスタを元気づけました。
そう、ここは空の上に建つ芸術学校。くもを使って作品を作り、地上へ放ち完成品が出来るまで、自分のうでをみがいています。
ビスタも先生や先ぱいのように、早く完成品を地上に届けられるよう、今日もがんばっています。