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Merciless night  作者: 陸の海草
Merciless night ー境界の魔女ー
7/17

~第1章~ 表裏の空(7)



 何が待っているか分らぬまま、また同じ公園に来てベンチに座る。

 

 午後八時に公園。

 

 オレが何なのかを一応把握しておいて呼び出すなんて、いったいファミーユは何を考えているんだ。

 サッパリわからない。

 ここに侵入してきた時点でオレは敵だというのに。まぁ亡命してきたとも考えられるだろうが、不可解だ。

 て、待てよ…………。

 侵入者と断定しているのなら、


(オレを殺しに!!)


 こうしている場合じゃないじゃないか。

 早く逃げなくちゃ。でも、どこえ……。

 自宅……はだめだ。

 国外……パスポートがない。

 なら、国内逃亡……飛行機への搭乗予約してなかった。でも自由席なら……まず金あったっけ……。

 クソッ。

 オレに逃げる手段は残されていないじゃないか。

 まさか……この事態を見越してファミーユは……、


(NOぉ~)


 ここで死ぬのか……。こうして考えるとオレの人生短かったな~。まだ未経験のことたくさんあるんだよな~。

 最後にあれだけは……てやったか。そうだ経験済みだったな。良かった。これで心置きなく死ねる。


「誰が心置きなく死ねる、ですって?」


 電灯に照らされる白い肌、くせっ毛のある茶髪の長い髪、凛とした顔、まさしく目の前にいるのはファミーユだ。


「成人、心配しなくても、あなたが思う通りのことをしにきたわ」


 せ、背筋が凍る。


 オレが思う通りのこと。つまり、遠まわしにオレを殺すと……。


「いいさ、もうとっくの昔に心の準備はできている」


 ベンチから立ち上がり、右手を腰に当て胸を張り叫ぶ。


「来るなら来い!」


「いい心構えね。なら、あなたの望み通りに!」


 ファミーユは少し口元を釣り上げると、人がぎりぎり目で追える速さでこちらへ接近する。


「クッ」


 オレの目で追える早さだ。そんな速度では甘い。

 右足に力を入れる。そして、体の重心を右へと思い切り右足で地面を蹴り、ファミーユの速さより先に右へ避ける。

 その刹那、横へ人が通り過ぎるのが分った。

 人とは思えない。

 2、30mはあろう距離をおよそ2秒で詰める。

 魔術師だからか……。

 うかうかしている余裕はない。次への行動に移らなければ殺される。振り向き次のファミーユの行動を見定めようとする。

 だが、遅かった。

 振り向くころにはファミーユは目の前にいた。


(The end)


 ファミーユはオレの背中に手を回し、体を自分のほうへと近づけ、そのままハグをする。

 なんだ……、この状況は。

 戸惑うことしかできな。何とも言えない空気。


「殺さないのか……」


「誰が成人を殺すのよ。私は成人に手伝いを依頼しに来たのよ」


「手伝い?」


「そうよ」


 小悪魔的な笑みをこぼすファミーユ。オレは未だこの状況をつかめていない。とりあえず話を整理すると、オレを殺しに来たのではなく、ある手伝いをしてほしいと頼みに来た。そして、オレはハグをされている。

 まったくハグされている状況がわからないが。


「なんでお嬢様はハグをされているのですか?」


「男ってみんな、女性に抱きついてもらいたいと思っているんじゃないのかしら?」


「それは、大きな間違いだと思うぞ」


「そうなの?」


 呆気にとられて、何も言えない。どうしたらそういう発想に繋がるのか。

 とにかく、ファミーユの不思議発想力はほっておき、オレの体に当たるこの大きな胸をどうにかしなくては。


「とりあえず、離れてもらってもいいか?」


「それは出来ないわ」


「え!!なんだそれは」


 驚きの発言。まさかわざとか……。

 だとしたら何を考えているんだ?オレを虜にして地下牢へ閉じ込め……、


「SMプレイ!!」


「なにいきなり」


「いや……なんでも」


 つい声が。思考よりも先に、つい声が。


「それより、オレを解放してくれないか?胸が苦しくて……」


「ああ、ごめんなさい」


 少し不満そうに、両手をオレの背中から外し離れる。それと同時に男として少し虚しさが残る。もう少しあのままでも……。いやだめだ。窒息死しそうで……じゃなくて、今はそんな時じゃない。


「で、手伝いってなんだ?」


 ファミーユがここへ呼んだ理由。なぜオレを呼ぶ必要があったのか、一番の疑問だ。


「単直にいうとリティを殺す」


「これまた物騒な。で、同じ侵入者であるオレならリティの力を知っているだろうと」


 ファミーユの顔は氷になっていた。見たものを凍てつかさんとする威圧感。だからこそ最高位の魔術師なのだと納得せざるを得ない。例え、ハグをされたとしても。


「成人の言うとおり私は彼女の能力を知らない。そして、成人には手伝ってもらう義務があるわ」


「義務?ああ、侵入した件か」


 思い当たるものはそれしか見当たらない。


「という訳で、この件を片づけてくれさえすれば帳消し」


 そうか、もし仲間であれば殺せないと踏んでか……。さすがと言いたいが、オレには助けたい人がいるんでね。例え仲間であろうと裏切る覚悟はある。


「分った。リティについて知っていることを話そう。リティの能力は自分の殺した相手の魂を甦らせる力。だが、甦った魂に意思などない。命令されるがまま、なされるがままの人形。そして、個人にかかわるモノから、その個人を甦らす力。個人のモノっていうのは、ただ所有している本とか鉛筆とかそういうモノじゃない。個人に直接関係するモノ。その人個人の髪とか血とかそういうモノ。以上だ」


「成……人……」


 ファミーユはオレを凝視し、丸でオレを敵とするかのように見据え身を構える。 まあ、実際敵なのだが……。


「そこまで驚かないでくれ。オレの能力は、相手の得意魔術及び、個人の能力を探知できる。アビリティーサーチャというものだ」


 ファミーユは納得いかない顔でオレに尋ねる。


「なら、私の能力も分るってことよね?」


「へ?」


 ま、待て。

 ファミーユの能力だと……。そんなこと、でも怪しまれるわけにはいかないし……。

 黒騎士戦を思い出せ。

 あの時のファミーユの使っていた武器を……。手に握られる光。手より放たれる光弾。


「ファミーユの得意魔術は魔力の圧縮系統か?」


 あくまで推測。はっきし言うとわからない。

 まあこれも能力の内ということで。


「まぁ、間違ってはないわね。けど詳しく説明すれば違うわね」


「ち、違う……。そこは大目に見て……」


「まぁ、成人の能力もでたらめじゃないみたいだし、疑わないわよ」


 ファミーユはオレの顔を見て微笑む。


「ありがとう」


 これ以上疑われなくて良かった~。


「で、本題に戻るけど。リティがそれだけの能力があるならなんで魔術団に入らなかったのかしら?」


 確かに……。リティの能力を知っていれば誰でも思う疑問。だが、オレや彼女の周りにいる人間なら理由はわかる。分っている。


「入らなかったんじゃなくて、入れないんだ」


 オレの言葉にファミーユは眉をひそめ、


「それってどういうこと?」


 冷めた口調で訊く。


「言葉のまんまだ」


 そう答えるしかオレには術がない。その先を答えれば自身が人間かどうかも、生きている理由さえも霧(疑問)となり消える。


「分ったわ。なんか問題だらけね、彼女も、成人も」


「そうだな」


 オレという存在は伏し穴だらけだ。ハチの巣状態のオレの心で、自身として確かなことは一つだけ。



 あの約束を……。



 ゴオオオオオオ。

 大地を揺らす轟音。街の各地で赤いベールが空を目指し高く光る。


「これは……」


「結構なことをやってくれるじゃない」


 都市全体を飲み込む結界。どうやらリティは大規模の魔術式を発動し、事を起こそうとしている。



 この卵の殻を破壊するために。



「魔術式の核は……双葉目学園のようね」


 確信したように呟くファミーユ。魔術式の核。つまりは中心部分のこと。魔術式は異なった役目の式をつなぎ合わせ一つの式へと導く。そのためにはそれぞれの式を一か所で制御しなくてはならない。なぜなら異なった式が個々で発動するのを防ぐため。だからこそ式を発動するものは、その中心にいなくてはならない。要するに、魔術式の核イコール、リティの居場所となる。


「そうか……、双葉目学園か……。ておい!!どうしてオレの通う学校なんだよ、と言うと思ったかファミーユ?」


「何?その切り返し……」


 面倒くさそうに訊くファミーユの気持ちを知りつつオレは答える。


「オレは初めから云々」


「重要なところが抜けてるわよ。というより、ただ言いたかっただけ?」


 そういうこと。だがオレは屈しな……、


「いいたかっただけ」


 屈しました。あまりのファミーユの詰らない、と書かれた顔に圧倒された。

 オレは到底かなわない……顔芸で。


「何か思ったかしら?」


 笑顔でオレの顔を見るファミーユ。

 何を思った、て心の声聞こえているのか?

 それはヤバい。

 疑心暗鬼におちいりアタフタする。


「何しているの?」


「すまない、つい気が動転してしまって。じゃあ話を戻そう」


「ええ」


「リティは学校に居るんだな」


「そうね。もう時間も少ないわ。急がないと」


「わかってる。けど、二人で倒しに行くのか?オレは魔術を使わないし、戦力的に一対一。でもって彼女の能力からすれば自身の倒した奴を総動員するかもしれない」


「もともと二人の予定だけど」


「御守星は?」


「つれていかないけど……」


「なんだって……」


 ファミーユがいくら最高位の魔術師だとしても無茶があるような。因みに御守星は最高位の魔術師である『賽の目』各六人の魔術師一人一人が持つ護衛の魔術師。賽の目一人につき御守星は5人。総勢30人の御守星がいることになる。御守星に選ばれる基準等については知らない。

 取りあえず、ファミーユの考えは分らないが御守星を連れていかないらしい。そうすると他の魔術団員も連れて行かないということ。

 圧倒的に不利のような……。


「もし、オレとファミーユ、二人死んだ場合は?」


「大丈夫。主人公キャラは死なない設定だから」


「チョイ待て。まるでファミーユが死ぬようなこと言うな」


「それでも、……この街を守りたいから」


 そうだ。ここで何言っていても始まらない。

「行くか、ファミーユ」


「それはこっちのセリフよ、成人」


 いろいろと不安はあるが、やるしかない。

 振り返ることなく公園を後にする。目指すは双葉目学園。








 



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