~第2章~ 偽りと過去(2)
新キャラが多いかもしれませんが
宜しくお願いします
零がトイレから帰って来た、ただ今の時刻午前11時43分。
残り時間。あと……17分。
緊張感は抜けず、未だ心……いや心臓は鼓動を早め、血流を早める。
何故……そこまで緊張する?
知らない人だからか?だが、オレはそこまでひきこもりではなく、人見知りでもない。なのにこの緊張。
口元へ運ぶ水の入ったコップは震え右手はガクンガクンし、いつ水を自分にぶっかけてもおかしくない状況。そんな中……オレは自身と闘い気を休めようと努めている。
そう、気を安らかにという言葉を心の中、そして頭の中で連呼して……。
そんな落ち着かないオレに気づたのか雪上は心配そうに声をかける。
「アイスコーヒーは飲まないの?」
そこかよっ!!
オレの心配ではなく、飲んでもらえないアイスコーヒーの心配をするとは。
少しはオレの心配というのはしてもらえないのだろうか……。
「あの……成人先輩?なんだか、緊張されているみたいですが?……大丈夫ですか?」
おお。ありがとう零。
零はオレがものすごく緊張していることを気遣ってくれるんだな。
「心配してくれてありがとう。……オレは大丈夫だ」
いや嬉しいよ。雪上は例外として心配してくれるなんて……、
「でさ、零?このあとどうする?4人で遊べるところ近くにあったかなぁ?」
「確か……近くにあったような……気がします」
「れ……零?」
「あ、そうですか成人先輩」
あ、そうですか。そうですね。オレはもうこのメンバーから省かれているのか。
で、今の時刻は……午前11時52分。
残り8分。
何故か緊張し焦っているオレと、この後の予定を楽しそうに決めている雪上と零。
そんな所に一人の男性が来る。
てか、オレと同い年のような気が……する。
髪型はテンパがかっていて髪色は茶。顔立ちは西洋より。身長は175㎝ぐらい。目はキリッとしている。……表現が悪い。
鷹のように鋭い目を持っている、という表現がふさわしいか。
「少し遅れてしまったか」
そういうと男はオレの横の席に座る。
「遅れてないよ、全然。早いぐらいだし」
雪上にそう言われ男は腕の時計を見る。
「あ、確かニ7分早い。……可笑しいな。ここに来るのが遅れるだろうと思い5分早く出ようと思い、その出ようト思った5分前に家を出たんだが……」
「妥当だよ。ここに着く前の5分と出る前の5分合わせて10分早く着くことになる。7分早く着いたのはその通りだと思うが?」
「言われてみれば……そうですね。あ、申し遅れました。私エニエル・ダウといいます。真隼さんのことはよく静さんから聞いています。あと、ゼロさんからも」
「いえ、あの……私は零です」
「おオ、そうデした零さん。すいません」
日本に慣れていないのか少しカタコトなエニエル。彼の言動とその真摯さから、ただのボケをかます外国人としか今は断定できない。まぁ微かに魔術師という感じがするが……。
エニエルが雪上と零の知り合いと考えれば、その可能性は低いかもしれない。
一応、警戒ぐらいはしておこう。
「ダガ断る!!」
「へ?」
何故いきなりオレにだが断る!!ネタを?
しかも微かにオレの思考がバレテいるような言動だし、エニエルはやはり警戒しておこう。
「いえ、何でモありません。ただの戯言です」
「ごめんね、成人。エニエルはよくこんなことがあるから疲れないでね?」
「おい。本人目の前に疲れないでは酷くないか?」
「大丈夫デス。慣れましタ」
「慣れるなよ」
なんか、エニエルにはいろいろと突っ込みどころがあるな。友達になれそうで良かった。警戒はするがな。
「あの、エニエルさん……何か注文しませんか?」
「おオ。そうですネ。私はフレンチピザで」
そういえば昼飯がまだだった。もしかして雪上と零が飲み物を頼んだ理由ってエニエルが来てから飯を食べるまでの繋ぎみたいなものか。
「じゃあ私はミートドリア。零ちゃんは?」
「私は鮭定食にします」
そしてオレへとメニュー表がわたってくる。
さあ、オレは何に……、
「そうイえば、真隼さんの自己紹介を聞いてないです。ぜひ聞かせてください」
「そうだった。オレの名前は真隼 成人。双葉高校2年です」
「おオ。なら雪上と同ジ学年ということですか?」
「ねぇ零ちゃん?注文以上でいいよね?」
「でも、……まだ成人先輩が」
「いいのよ。ほっといてみない?」
「まぁ、そういうことだ。少し小声で質問していいか?」
「いや、でも……それは」
「ゆ~い~」
エニエルはオレの目を見てからゆっくりと耳をオレの方に傾ける。
その間、雪上と零は何か相談しているが気にしないでおく。
「お前の年齢はいくつだ?」
エニエルは何も驚かず淡々と答える。
「私ノ年齢は20ですが……」
そうか、俺より一つ上か。
「ありがとう。ま、オレの年齢は言わないが」
「何故いってくれナいのですか?」
エニエルは両手を広げ必死に年齢を知りたいことをアピールする。それでも、オレにとって知ったことではないが……、
「じゃあ、いただきますか零ちゃん」
「あ、……ぅん、はい……」
ん?どういうことだ?
なぜオレの知らぬ間に料理が届いている?
「あの……私ノ分は?」
「えと……エニエルの右手前に」
「おオ。ありがとうございます」
オレの分以外は全部、届いているだと……。
「雪上……オレの分は?」
「ああ……何かエニエルと話していたから先に頼んじゃった」
「そうか。先に頼んじゃった……じゃねぇ。マジかよ」
「うん、マジ」
「雪上……今そのノリはいらない……」
やられた。雪上と零でオレをはめるとはいい度胸じゃねぇか。
なら、オレだって仕掛けてやるから覚悟しとけよ雪上、……そして零。
暗い部屋にただそこに置かれる長い机に一人座る魔術師。
会議用のその机の幅は広く一人が机に座ったとしても、あと7人は席に着くことはできる大きさを持つ。
そこで片足を抱え座る魔術師の背は低く髪色は茶色に髪型はツインテールである。髪型から察することが出来るように、辺りは暗いが女性だとわかる。
その慎重の小柄さから歳は15だろうか。
少女はただ空を眺め雲の様子を窺う。当然、空は暗いのだから雲など見えるはずもないのだが。それでも、ただただ上ばかり、雲ばかり見る。
その目に映るは、空の黒だけ。それ以外に……、
「ここにいたのか、フォイス・クライミス」
暗い部屋に明かりを灯し部屋の入口に立つ青年。
少年というには顔立ちは大人びており、そのはっきりした顔のラインは魅力を放つ。世間でいわれるイケメンの一人だ。
「暗い中一人何を見ていたんだ?」
青年はフォイスと呼ばれる少女に近づく。
フォイスはそれに構わず未だに雲を見ている。
「今日も雲一つない空だね」
青年も少女と同じように空を見る。だが、少女が見ているのは雲だ。
同じ場所、同じ角度でもお互いに見えているものは違う。
「雲はあるよ……お兄ちゃん」
その言葉に青年は驚くことなく、何も言わず首を縦に振る。
「そうだね。フォイスには俺に見えないものが見えるのか……。俺も、……見てみたいな」
「みえるよ。お兄ちゃんなら」
青年は無言で少女の髪を撫でる。
「ありがとう。俺も見えるように頑張るよ」
青年は少女の髪を撫でていた手を離し、そのまま少女の元からゆっくりと部屋の出口へ行く。
青年はドアノブに手をかけドアを開け、
「余り俺の傍から離れるなよ」
自分の言った傍の範囲の広さを笑いつつ部屋を後にした。
「遅かったわね、池井」
先ほどの部屋よりも比べ物にならない広い部屋。
部屋には幾多もの机が歩くスペースだけをつくりバラバラに置かれている。
「すいません。私用で遅れましたケイト姫」
部屋の最奥の机に座る初見の者には恐怖を見た者には威圧を与える目を持つ、テンプル魔術団最高峰の位に座すケイトの位、ファミーユ・リ・ルーシェに一礼し傍にある机の前に立ちケイトの方を向く。
「構わないわ。では、話しを始めましょうか」
部屋の空気は変わらず張りつめた空気は常人なら息さえもつまらさせる。
「ここにいる全員が知っているでしょうが、昨晩私がこの街に張っていた結界は破られギガスに所属する3人の魔術師に侵入された。その内の一人と私自身が対峙しましたが、その他のギガス所属の魔術師と対峙したディエンビならわかる通り、その強さは賽の目に匹敵すると推測し下手をすれば私を上回る。おかげでその魔術師と対峙した私はこの通り自分で張った結界の破壊を許してしまったわ。申し訳ないけど相手の増援が来ないとはいきれず、ここが日本ということからこちらに救援が来ることは無きに等しく現状は予断を許さぬ状態。私を愚かと思ってもらって構わないわ。しかし、これ以上のギガスによる侵攻を許さず、侵入した一人一人を叩きつぶすためにあなた達『御守星』の力を借りたいと思っているのだけど、この街の力になってくれるかしら?」
ケイトの失敗により自身の張った結界を破られたこと、敵戦力の大まかな報告から始まった久しぶりの会議。ここにいる全員は口を開かず部屋の最奥の机に座るケイトの一点を見つめる。
その中、御守星の一人が口を開く。
「ガッハハハハ」
部屋中間付近の机の隙間に座る中年の男はケイトの失態を豪快に笑い、
「ケイトの小娘がヤラレたってんじゃぁ話にならな」
ケイトに睨みを利かせる。
「全くだわね。私がこれじゃあ言葉になにも意が乗らないわね」
ケイトは俯き自嘲気味に笑う。
「でも、今件において御守星が無関係……なんて真似は出来ないね」
池井の右前の机に座っていた長身の女性は自身の長い髪を揺らしながら立ち上がり、部屋の中間に居座りケイトを笑った中年に問いかける。
「あなただってもともとこの街、ケイトに手を貸すのは賛成なんでしょ?」
中年の男は自身の頭の中での演出が上手くいかなかったことを愉快に思い、ケイトを睨んでいた顔のしわを緩め、
「全く……もう少しタイミングを待ってはくれんのか……カタリアは。ワシには自分の出るカッコイイタイミングがあったのじゃが……これじゃあ仕方ないな」
そう言うと中年はまた豪快に笑いだす。
「俺はすでに賛成済みで構いませんが、ケイト」
ケイトに一番近い机に腰を当て、腕を組みながら俯く男はケイトに賛成の意を伝える。
「ええ。あなたが戦ってくれたおかげで、侵攻される時間はわずかに遅らすことは出来たわ、ライ」
「俺もケイトに手を貸すことを賛成したいのですが、結界を破られるきっかけとなった闘いにおいて、元ギガス所属であり俺の友人の真隼成人を参戦させた理由についてお尋ねしたい」
ケイトから一番離れた机の前に立つ池井は極めて真剣にケイトを見る。ギガス元所属とはいえ、ケイトが友人である真隼成人を一昨日の戦闘に参加させた理由を池井は知りたかった。
「彼についてはこの街へ侵入した罪があったわ。でも、味方を裏切り私と共闘するすることでその罪を帳消しということで参戦させた、ということだけど納得してもらえるような理由にはならないわね。けれど、彼自身が仲間を裏切ったことにより彼がギガスの標的の一つとなり危険にさらされるのは確実だわ。だから、私は彼をそうさせた責任を取り、今後も彼に関わるけど何かあるかしら?」
ケイトの答えに池井は口元を緩める。これまで何も自ら行動を取らなかったケイトが動くということは彼自身に危険が及ぶのは必然であり、ただその機会が早まっただけの事。それを認識し自分より先に動いたケイトを半ば池井は関心していた。
感心した、というのはケイトに対し、ましてや魔術団最高位の位の者に対し上からの態度に見えるだろうが、池井にとって家族と認めたもの、そして友人、仲間以外を自身と同等に考えない。
自分の守るべき関係の人にとって魔術団が危険な存在となるならば裏切る覚悟も彼自身は出来ていた。
「いえ、彼に関わることに何もありません。ですが、ケイト自身が赴いてはこちらとしても危険と思いますので、真隼成人の護衛は俺にやらさせていただきたい」
ケイトは少し不満そうな顔をするも、
「ギガスの戦力を承知の上の申し出。存外、彼には護衛がいらないかもしれないわね。では、その任務を池井に託すわ」
その任務を許諾した。しかし、それは簡単なものではなく命を伴うこともケイトは心得ている。それでもなお、ケイトは池井の思いを優先させた。
そこには二人ならば危険を切りぬけられるであろうことを考慮したのだろう。
「さて……イデア。全員賛成のようだから始めて」
ケイトが呼ぶ声と同時にケイトの前に現れるイデアと呼ばれる女性。
その直後、乱雑に部屋に置かれていた机は消え、代わりに部屋の中心に大きく円が引かれ、その中に 極東第二魔術団直轄施設を中心とした飛羽市の半径20㎞を映し出す。
「始めから全員賛成と踏んでおったのか……全く、ケイトの小娘は。ガッハハハハ」
「言葉を慎んでもらえませんか?ケイトの前ですよ?」
「構わないわよ、カタリア。この会話が私との信頼だものね、倶梨伽羅じぃ?」
可愛らしく名前を呼ぶケイトに対し、倶梨伽羅と呼ばれる中年は口元をにやつかせ、
「そうじゃな……ワシの可愛い娘だからな」
自身の口元の髭を触る。
その二人を余所にライは円に近づき、
「それはともかく、侵入したギガスの奴らにどう対処されるのですか?」
今後の策についてケイトに問いかける。
「そうだった。本題を忘れるとこだったわ……。まず、ギガスの目的は三年前の『ローマの悲劇』と同様ヴァルハラの顕現。そのため、敵は大規模な魔術式をこの街に形成する必要がある。何故敵がこの街にヴァルハラを顕現させえようとしている意図は掴めてはいないけれど、三年前との共通点は『賽の目』がいる場所を狙っている、ということ。だから、今回もギガスは私を狙ってくる可能性があるわ。そこで、この極東第二魔術団直轄施設でイデアに命脈の術を使ってもらって、私はここに残り囮となるから」
命脈の術とは一定の生物の共通の素を割り出し居場所を割り出すもの。普通は特定のモノを探す際用いられるが、上級魔術師にはその探知を振り切られてしまう。その大抵の理由は個人を特定するために相手の魔力の痕跡を探るため自身の魔力を魔術に乗せ飛ばす。その際、上級魔術師はそれを感知し、探知魔術に対するアンチ魔術を行使する。そのため、探知するまでに振り切られてしまう、というもの。
しかし、探知魔術の対象を全てにすれば特定ではないため探知魔術に対する対策がとれなくなる。そうなった場合、相手がとる行動は一つ。
探知魔術の発動術者を止めるのみ。
今回において、ギガスは少数精鋭での隠密行動をしつつ大規模な魔術式を形成しなければヴァルハラの顕現を成功させることはできない。そのため、自分達の居場所を探知、察知されることはヴァルハラノの顕現の成功確率を大幅に下げてしまう。そうなれば、相手としては誰かが探知魔術を行使する元を断たなければなくなる。
これを利用しケイトは自身を囮の身としてさしだした。今回も『賽の目』を狙うという推測が正しければこの策に相手は乗るだろうという仮定をもって。
御守星の全員はその策に異論、反論せず黙したまま首を頷かせる。その策からこの場にいる誰もが、自分達にケイトが命を預けたことを悟ったからだ。
「この作戦において、ここを中心としたこの街の半径20㎞にいる魔術師の居場所は丸わかりとなる……魔術団側も含めてね。そこで魔術団の魔術師の位置はある程度固定しておく。御守星においても同様。池井とイデアを抜いた三人はそれぞれ私が規定した場所で待機してもらい、ギガスメンバーがここに接近してきた場合その迎撃に当たってもらうわ。敵の位置情報は随時イデアから御守星全員に伝達されるから」
ケイトは今作戦の内容を話し終えると、『御守星』全員の顔を見渡す。
周りの視線を一身に浴びつつ、ケイトは視線を正面に向き直し御守星に、そして自分にケイトは重く言葉を放つ。
「この戦いで誰も死なせることなく、街を守りきること。いいかしら?」
御守星はケイトに向かい全員膝間つき、王に忠誠を誓うが如くその意を体で伝える。
――――この場における最高の尊敬を込め
今回説明文も含まれていて理解しにくい
部分等があれば指摘をお願いします




