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Merciless night  作者: 陸の海草
Merciless night ー境界の魔女ー
11/17

~第1章~ 表裏の空(11)

ストックが尽きました

だいたい頑張って執筆できて6000字程度です。

アカイロイロさんが羨ましい


 


 『揺籃の目』は充填された魔力を一気に噴き出す。

 それが意味することは二つ。

 ファミーユの安否が不確かになったこと。

 もう一つは、この街が戦争状態に入ること。

 放たれた魔力はオレの遥か上空に罅がはいる。

 そして、魔力が罅に注がれるたび空の亀裂は広がりついに空を穿つ。

 割れた破片は上空からヒラヒラと舞い降り、塵となって空気中に消える。

 その光景は空が墜ちてきた、そのものだった。

 

 空に張られたガラスを割った後、『揺籃の目』は消え失せる。

 だが、その後ろに月はなく、ただオレたちに雨が降っただけ。

 

 作戦は成功されてしまった。

 この作戦内容は、この都市に張られている結界を壊すというもの。

 結界について詳しいことは知らないが、飛羽市への魔術師の侵入を全て遮断しているらしい。

 ここで誰もが疑問に思うことは、なぜそんなものを壊す必要があるのかということ。

 それは戦争を起こすため。

 それを前面に推すことで本来の目的を隠すというのがあちら側の作戦らしい。

 で、当然オレがこのことを知っているということは、ここへ侵入し戦争を起こす首謀者の協力者であったことを意味する。

 そして、その首謀者の後ろにはギガスという組織がある。

 ここまでで分るとおり、オレは攻める側から守る側へ逃げた浮いた存在。

 なぜ、守る側へ就いたかはまた話すことにする。

 

 今、本来の目的が達成できなかったことを悔やむ暇はなく、次なる問題が出てきた。

 『揺籃の目』は役目を終え消滅したものの、坂宮固有と思われる魔力の暴走が働いていること。

 本来見えないはずの魔力が具現化しつつあり、その魔力が坂宮の廻りを竜のような波がうねっている。

 魔術師の暴走というのは余り珍しいことではない。

 魔術師は自身の魔力量を制御しながら魔術を駆使している。

 しかし、自分のキャパティシを超える魔術を使用する、自身の身体に異常をきたす強化魔術や精神、血を使う魔術の長期使用といったことにより理性を失う可能性がある。

 こうして理性を失った魔術師は自身の魔力に取り込まれ暴走する。

 今の坂宮がそういう状態だ。

 一度理性を失えば本の人格に戻るのは難しい。

 だからといい、坂宮をこのままほっておくオレじゃない。

 『揺籃の目』を潰せなくても、坂宮だけは救う。

 

 そのためのオレの魔術。


 坂宮のためなら別に命を捧げてもいいだろう。


(別に好きとか、そういうのじゃないんだから)


 と、心でツンデレてみる。

 さ、真面目にいくか。

 まずは坂宮の持つ魔力の素性がわからなくては意味がない。

 取り敢えず、坂宮に触れることができなければ、こちらも対処のしようがない。

 そういうわけで、剣の柄を強く両腕で握りしめ全力で坂宮に立ち向かう。

 

「ハッ……」


 坂宮のハルバードが弧を描き綺麗な線を描きオレを襲う。

 だが、オレにはまともに戦うという選択肢はない。

 剣を素早く地面に突き刺し柄を踏み台に、坂宮の頭上スレスレを飛び、肩をポンと叩き着地する。

 触れることはできた。まだ、それしか出来ていない。

 剣が囮と知るやハルバードの矛先はオレへ迫る。


 触ったことでわかったのは、魔術師であるが魔術師ではない。異質な存在。


 咄嗟にポケットからナイフを取り出しハルバードを受け止める。

 時間はわずか2秒。

 2秒後――

いとも簡単にナイフは両断される。

 それでもオレにとって2秒は十分だ。


 異質な理由は、喉応術性神経は普通魔術師の場合声帯から体全体に伸びているはずなのだが、それが声帯からではなく脳から伸びていた。

これが指し示す答え――


 ナイフが砕ける寸前に手を離し、両方のハルバードでオレを仕留めようとししたため、ガラ空きとなった脇腹に回し蹴りをいれる。


 さっきはド忘れしていたが、今思い出した。坂宮は疵術師しじゅつしだ。


 蹴られた反動のためか少し体勢が揺らぐ坂宮。


 疵術師は簡単に言えば魔術師の派生。上位種ではない。

 魔術師と違う点は喉応術性神経が伸びている場所が違うこと。そして、“源血”を持っているという点だ。

 “源血”とは、それぞれの疵術師特有の交換不能な“純性魔力”のことを指し、“源血”により使える魔術が限定される。

 源血の例としては“読むこと”、“戻ること”などがある。

 感じ的には魔術師より劣ると思われるかもしれないが、疵術師は詠唱しなくても魔術の威力は下がることはなく、なお且つ『源破顕現』という能力を使うことで、上級魔術師かそれ以上の力を引き出すことができる。

 詠唱が意味をなさない理由は、喉応術性神経が伸びている場所の違いにある。

 先の説明の通り、魔術師は声帯から神経が伸びており、疵術師は脳から喉応術性神経が伸びている。魔術師は魔術を行使する際、詠唱文を唱えそれに対して脳に記憶されている魔術が呼応すること神経を伝い魔術を発動させることができるのだが、疵術師は脳から神経が伸びているから詠唱により魔術を呼応させることなく行使できる。

 オレの持ち得る情報からは魔術師と疵術師には能力的差はない。

 まぁ、五分五分か。

 

 その隙をつき剣を取り返す。

 助ける人物に蹴りをいれるとはいかがなものか?と言われそうだが、オレは命がかかっている。て、坂宮も同じか。

 だが、オレは坂宮を助けて死ぬ。

 だから、蹴りもOKだろう……。

 だめだな。


「グッ……」


 と、そんなに簡単にはいかないか。

 剣を掴んだ右腕が切りつけられた。

 リスクは覚悟の上だ。

 さて、問題はどう坂宮の暴走を止めるか、よりもオレが坂宮に触れただけでなぜそんな個人情報を得られるのか?

 実はストーカーを……。それはオレが現状に至る経緯を辿れば、そんな暇はないことがわかるだろう。

 暇さえあればしていたのか?と聞かれれば絶対にNOと答えるかどうかはわからない。

 で本題について。

 オレの得意とする魔術系統は特にない。強いて言えば解析魔術。

 魔術により相手の魔術を解析し原理・元素を解き明かす。

 というような感じの魔術を使っているようだ。

 実を言うとオレも分らない。

 とりあえず魔術の研究を重ねるうちにそんな魔術を使えるようになった。

 そのおかげで、先ほどの通り刃を交えるだけで創型魔術に使われる材質純度も0.01コンマまでは的確に分る。

 いや、刃を交えなければ分らないとするべきか……。

 刃を交えた際に魔術を使ったのか?と言われれば勿論NO。

 魔術を使っていれば、今頃地面で寝そべり昇天している。

 ならどうしてかと。

 またまたオレには分らない。

 刃を交えた際に魔術は使っていない。研究のせいで分る体質になった。

 一応これがオレの能力だ。


 ハルバードのリーチ外へ引く。

 坂宮は依然として虚ろな瞳でオレを見る。

 対してオレは左腕で剣を持ち、額から流れる汗を気にせずにただ坂宮を見つめる。

 坂宮からはどんどん魔力が抜けていく。このままその状態で時間が過ぎれば、いつか自身の魔力を使い切り死に至る。

 助ける方法は一つ。

 魔力を強制的に断つこと。

 魔力が発せられるということは、魔術を行使するための喉応術性神経の暴走に他ならない。

 ならば、喉応術性神経を切る。

 切ると言っても腕や足に伸びている神経を切っただけで魔力の暴走は抑えられない。

 神経は体全体に伸びているのだから。

 しかし、いくら体全体に伸びていようと、必ず一か所でまとめて通る場所がある。


「坂宮……耐えてくれ」


 左腕で剣を強く握ったまま、ゆっくり歩みを進める。

 風を劈き疾風の如く迫るハルバード。

 鋭き突きはオレの脇腹横をかすれていく。

 学生服は破れ傷口からは血が流れる。

 避ける動作が間に合わなかった。

 ハルバードは止まらない。

 オレも止まっていられない。

 輪舞する矛を脆き剣の刃で受け止め少しずつ削られていく。

 こちらの必死さを知らず矛の華麗な刃がオレの前を飛び交う。

 一歩を踏み出しては二歩下がり、一発を受け止めたかと思えば二発目が襲う。

 そう。らちは空くことはない。

 なら、死線を越えなくては。

 坂宮は二本のハルバードを互いの死角を補うように振り回す。

 それを掻い潜りオレはしゃがみ脚元に回し蹴りをいれる。

 それを見きり上へ飛ぶ坂宮。そのまま落下し右腕のハルバードでオレの頭上の死角を突く。

 完全に避ける時間はなかった。

 オレは少し左にズレ、突き出したハルバードの柄を、右肩から腰まで切り付けれながらも掴む。

 オレにとって精一杯の動作だった。

 

 坂宮は掴まれたハルバードをすぐに手放し、着地するなりハルバードの横薙ぎの一閃を放つ。

 死を予期する、オレ。

 正真正銘「死」を纏った一撃だった。

 しかし、坂宮は一瞬ぐらつき繰り出された刃はオレの頬を掠っていく。

 まさか……、まだ理性が残っているのか?

 オレは坂宮がぐらついた刹那を見逃さず、右腕に持つハルバードを片手に坂宮に接近する。

 それを拒むように坂宮は左腕に持つハルバードを振るう。

 それでもオレには届かない。

 オレの右より迫る刃を同じハルバードで防ぐ。

 坂宮は反射的に掴む手をハルバードからオレの右腕に変える。

 右腕に掛けられる魔力の重圧が腕の骨を潰していく。

 それを気にせず、オレは魔術を行使する。

 オレの右腕喉応性神経を犠牲に坂宮の首にある喉応術性神経だけをオレだけがみえる形に具現化させる。そして剣を材質変化させその神経だけを切るよう透視化する。

 

「はぁぁぁぁぁ……」


 坂宮の首元に剣を向け左腕に全力を込め振り切る。


 サッ――


 左手に握る剣はその刃毀れに似合わず坂宮の首に見える神経を鮮やかに切断する。

 それと同時に、具現化しつつあった魔力の波は消え去る。

 オレは全てが終わったと情けなく立ちつくす。

 そして、自分が死んでいないことに気づいた。


「なぜ!?」


 分らない。オレは確かにあの時、ねがいを叶えてもらったはずだ。

 オレ自身も体質により死に至る魔術であることは把握している。

 でも……、


「――生きている」


 トッ――――


 微かに右腕を握られる感触がした。

 オレはその感触で全てを悟る。









 2026年12月5日、それはオレが双葉目学園に編入した日であり、全ての始まりの日だ。

 池井の薦めでオレは双葉目学園に編入した。


「真隼 成人、これからよろしく」


 そっけない挨拶と共に着席する。

 当初のオレは目が虚ろでまるで人形のようだったと雪上はよく言っていた。入学当初はクラスの人とは馴染むことなく、違うクラスの池井とだけ言葉を交わす。

 それが数日間続いた。

 そんなある日、オレに喋りかけるヒトがいた。

 些細なことだった。  

 机から消しゴムを落としてしまい、拾ってもらうと言うもの。いかにもベタだが、何かが違っていた。消しゴムを拾った女子は消しゴムを渡すと共に手を握ってきた。するとその女子は悲しい表情をした。その後、悲しさを振り払うように、無理に笑顔に変えオレを見つめこう言った。


「これからよろしく、ナッリー」


 そして、


「どんなに誰かに阻まれようとね、人の思いは運命を変えられるんだよ」


 それが坂宮との出逢いだった。それをきっかけに、いや、坂宮のおかげで隣の席の雪上と仲良くなり、それなりにクラスに馴染んでいった。


 人としての喜び、幸せ、楽しみを分かち合うことができた。これまでのオレにはどれも無かったことだ。初めての感覚だった。



 それでも――――


「ごめんね……ナッリー」


「坂……宮……」


 地面に脚を崩して立てない小鹿のように座り、力のない手でオレに語りかける坂宮にオレの脚は震え、ぶつけようのない怒りが全身に走る。

 やがてオレの脚は力なくし片足の膝をつき、目線を坂宮から地面に変える。




 あれからオレは死に対する考えが変わった。

 その心が今のオレ自身の心と違っていたとしても、こうして自我を継承し以前の思考を保っていられる。


 全部……坂宮の、おかげだ。




 だけど――――


「こんなのは……認めない。……認められるか!!」


 オレは拳を強く握り締め口を固く閉じる。

 何で……。

 疑問ではなく、己を質す。


「……坂宮、オレの死を“受け入れ”たのか?」


 今にも消えそうなか細く弱い声で坂宮は答える。


「……そう、……だよ」


 途切れそうな声をそのまま、あの時のように苦い顔を無理に笑顔に変え……、


「私の……“源血”は……“受け入れる”こと」


 その一言で、これまで浮き出ていた謎、黒騎士の魔術をなぜ使えるのか、坂宮を送り届ける途中で記憶が飛んだのか、なぜ『揺籃の目』の発動と共に坂宮が必要だったのか……。

 黒騎士においては、ファミーユが黒騎士を倒した時、鎧に憑依していた純性魔力、魂が昇天する際に坂宮の能力に惹かれ坂宮に受け入れられたためで、送り届けるときはオレが家に変えることを望んだため、坂宮はそれを受け入れた。

 『揺籃の目』はその魔術自体に魂を集める能力はなく、そこら辺に浮遊している純性魔力は器を求め浮遊している。そのため、坂宮の体を魂の器として受け入れるという源血の効果範囲を広域化することで、『揺籃の目』まで純性魔力を引き寄せ吸収させる役目を坂宮は負っていた。

 それを、長時間もやらされていたら理性を失う、魔力が暴走するのは当然だろう。

 それでも、力は必要なのだろうか……。

 ここに生きていた魂を使い、今を生きる坂宮までも死に追い込んでまで。己の望み、若しくは力を欲し得たものに意味はあるのか?

 ただ、オレには確かな答えはない。

 疑いようもなく、オレもそうやってここまで力を得て、生き永らえてきたのだから。


 そしてまた、今も……のうのうとオレは生きようとしている。


 虚ろな瞳には色が灯りオレを見つめ、両腕をオレの首の後ろに回しそのまま抱きしめる。


「私は……ナッリーに……生きてて、欲しかった」


「オレは……」


 何でこんなことになったのか?

 これは元々オレに定められた宿命なのかもしれない。

 だけど、明日が定められていないように、自身の運命もオレ自身が握っている。

 でも、その思いを支えてくれていたのは……。


 坂宮の言葉を振り切るようにオレは叫ぶ。


「坂宮がいたから、自分の新しい生き方を見つけられた。それなのに、坂宮がいなくなったら……」


 坂宮がいなくなったらオレ自身の存在がなくなるのではと恐怖した。

 オレがオレでいられなくなると……。

 オレは表世界では殺人鬼でしかなく、人格を誰かに改竄するほか日常に溶け込む方法はなかった。

 でも、坂宮はオレの全てを受け入れ友達として接してくれた。

 人形または怪物と変わらないオレに……。

 オレの裏側を知っても、何も変わらず接してくれる人がいると思えたからこそオレは自身を変えようと思えた。

 人形から人間に変わろうと思った。

 それは坂宮がいたから。

 やっと……、やっと自分の思いと向き合い、自分のために目指す場所ができたのに……。


「だから、……ナッリーがいたから、ナッリーの……抱えているものに気づけたから……私は私で頑張れた。…………全部ナッリーの、おかげなんだよ」


 その言葉にオレは何も反応出来なかった。

 それは坂宮の思っていることとオレの思っていることが似ていて、自然に言葉が心に沁み込み思いが同化したからだろう。

 オレと坂宮は同じなのだと。

 オレが気づいたころには、ただ一筋の雫が頬を伝う。

 そんなオレを見てか、坂宮は安心させるようにオレの背中から両腕を離し、オレの涙を右手で拭いそいつは……、


「…………生きて」


 囁くように、然しその声は力強く笑顔で目を静かに閉じ、坂宮は眠る様にオレに倒れた。

 オレはそっと坂宮の頭を抱え。

 無理やりに笑顔をつくり呟く。

 



「ありがとう…………」


 

 それはせめてもの、……坂宮へのオレが生きることの償いだ。




第1章は次で終わろうと思っていますが、どうなるかは未定

あと、前回報告しました通り

次回からは投稿が不定期になりますのでご了承ください

女の子可愛い~



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