本編第6話 竜の口本家のお嬢様とのミーティングが紛糾する(1)
エマは二郎をどのようになげとばしたのか、なぜなげとばしたのか。
本編第6話 竜の口本家のお嬢様とのミーティングが紛糾する(1)
自分はめんくらっていた。
本家のお嬢様竜の口エマ・桜子・由美子及びおつきの女性を、岡山駅新幹線ホームからホテルグランビィアまで自分鬼頭二郎と妹の美羽、親戚の犬山さとわで送り届け、ジュニアスイートの応接に全員はいり、最後に自分がはいったところで、エマに自分は背負い投げで投げ飛ばされた。
ふかふかの絨毯のうえで受け身をとってころがり、すぐに立ち上がる。
あら、頭から落としたはずなのに、ちゃんと受け身をとっているわね、エマがつぶやいたのか、ほかの本家のひとがつぶやいたのかはよくわからない。
何すんねん、と思う。
いまの背負い投げは竜の口家伝統の体術だとありえない舐めプレイだ。基本的に投げるときは大外刈りか小内刈りであり、相手に背を向けることはない。相手が武器やら暗器やらもっているかもしれないし、打撃技がくるかもしれないからだ。背負い投げだと背をむけたあとに後頭部や脳天に肘やパンチをいれられたり、紐状のもので首を絞められるおそれがある。
それに、いまの背負い投げはひざを畳んだあとにのばしている。現在の柔道では禁じられている投げ方だ。しかも脳天から落とそうとしたので自分は、投げられる際に少し蹴って無図から投げられたうえ反転して立ち上がっている。
おきあがる際にネクタイを脱ぎ、武器にして構えた。本気でやる気ならネクタイごと絞められていたことだろう。だいたい夏服でネクタイをして人に会っているのだからこちらに敵意はないと服装で表明しているようなものなのだが。
とりあえず、まっすぐ自分の席に動かなかった以上、不審な動きだ、というのがエマの言い分だった。自分はどの席に自分がいくかわからなかったので部屋を見渡しただけなんだが。
華子さんが二郎は受け身は万全よ、とおっしゃられたから試しただけよ。桜子に不埒なことをしそうな感じもしたし。
えええ、そんな理由で暴行を加えていいの…
自分がからノーダメーじだけど一般人なら死んでたかもしれないのに…
受け身をとったときに結構大きな音がしたはずだがおつきの女性も平然としたものだった。
護身術は全員身に着けているということ、考える前に発動しなければいけないからしょうがない、ということを言われた。
なんだかひどい話だ。憲法の部分社会論を連想する。
いや、いまの舐めプレイは絶対ふざけてやってます。このエマはおそろしい女だ。やつあたりされたらどんな目にあうかもわからない。絶対避けていこう。
自分は憮然としたいのであるが、作り笑いを浮かべつづけるしかない。
全員席の前にたち、おのおの自己紹介をしていく。とはいっても、学校名と学年と名前をなのるだけだ。おつきのひとは、20代半ばくらいの自分と同じくらいの背のひとで加納亮子となのったが名刺はくれなかった。
エマは自分を投げたことを謝りもしなかった。あいさつのあと口をきこうともしていない。桜子・由美子は、犬山・美羽と談笑している。自分には、なんだかよくわからない日焼け止めのはなしだ。
部屋にはいるときに3姉妹は帽子を脱いでいる。
エマ・櫻子・由美子は席についてサングラスとマスクをとった。
かなりの美少女だが、同じ顔をしているように見える。
ボーイがはいってきて、ルームサービスの紅茶とショートケーキが各自の前に置かれる。
ボーイが去ったあと、一息ついたあと、叔母さんがやってきた。
叔母さんと加納さん、お嬢様がたは既知の間であったらしく、お嬢様がたはキャーという嬌声をあげながらまとわりついていく。180センチ100キロのスーツ姿は恰好いいのだろう。
騒ぎが落ち着いてから椅子にすわる。
加納さんと、叔母さんがノートパソコンを開く。ホテル側でプロジェクターやスクリーンは用意してくれた。
加納さんが口を開く。
本家で決まった今回のルールです。
庶民生活を味わうこと。そのうえで一族になんらかの有意義な提案があること。
これが課題です。ホストといっしょに評価されます。大人の関与はリハーサル1回だけです。関係者はGPSで監視され、必要以上の接触や会話は禁止されます。
ホスト・ゲスト間は自由です。AIの利用は禁止されます。
各自5分程度、本家の総会、毎年9月の秋分の日におこわれる、で発表すること。15×7家で105分、まあ、だいたい130分くらいのイベントで順位は観客の人気投票とと首領の判断で決まります。今回は北家が首領です。
観衆は分家あるいは雇っている人々ですが、各家が20名ずつ手配できます。
いちおう買収とかは禁止されています。
あの、いちおう、というのはつけるべきことばなんでしょうか。
各家の政治力とからがわかることになります。
あ、もちろん、内部紛争はご法度ですよ。一族どうしの殺し合いをして王権を失うイングランド・スコットランドのプランタジネット家とか三国志以降の司馬家の八王の乱みたいになっても困りますからね。
首領になっても役得はとくにないようになっていて、まわりもちですし、順位がついてもとくに表彰状の右上部分がかわるだけで、1位だからといって2位以下にマウントをとってはいけないことになっています。
いけないことになっています、という表現もここでやることでしょうか。
まあ、息子や娘のためにどれくらい政治力をつかうかで、その子息らが期待されているかどうかもわかりますからね。
ひとによっては結構な試練になるので参加は中学1年から高校3年まで、参加しなくてもかまいませんが、それは本家の役職からは排除を意味する…かもしれません。
大学以降が捨て扶持になるか、期待されての投資を受けられるか、ということですね。海外留学とかで億に近い金を出す場合は、一家がいくら金をだせる状態であるにしても、恥ずかしいひとを外に出すわけにはいきませんし。
あのう、一人5分でほんとに決めていいの?叔母さんに小声できいてみる。
馬鹿ねえ、そんなもの順位に意味ないといったでしょ。課題に素直かどうか、能力はどうかをとりあえずみるだけよ。いろんなひとがいろんなところで、おぼっちゃま、お嬢様をみているのよ。総合考慮に決まっているじゃないの。だた、アガリ症とかはわかるわね。
21人も本家7家にこどもがいるのか。少子化の時代に多いですね。
大学生以上や小学生以下を加えるともっと多いわよ。その事情は16歳になってから知ることね。
あと、修学旅行の定番は調査先として禁止とします。
岡山勢力のうち、犬山をのぞく自分、美羽、叔母さんがずっこける。
今後の修学旅行を楽しめなくおそれがあるためです。
岡山だと聖ミカエル学園の修学旅行はまず来ないと思いますが、ほかのところとの公平のためです。
交通機関は公共交通機関のみ。
ヒッチハイクなど無料で載せてもらうことは禁止。ヤラセがありえますからね。
安全面は本家とホスト側で配慮する。30度以上だと500m以上歩かせない。これ大事ね。
叔母さん、ここでニヤリと笑うのはなぜですか。
6年に1度のイベントなので、2回目のひとはいません。初体験として新鮮な気持ちでやってみてください。
まず、どこをどう調べていくか、きょうから7日間のざっとした予定をくんでみてください。
自分の考えていた岡山城で1日か2日、宇喜多直家・秀家の聖地巡礼で2日か3日は岡山城NG,30度以上だと徒歩500m制限でだめが。
美羽の考えていた大原美術館も修学旅行制限でだめだ。
犬山は岡山後楽園を自分でボツにしていたのでダメージはないようだ。あらかじめ知っていたのかはわからない。犬山とお嬢様型及び加納さんとはきょうが初対面のようだった。そもそも引きこもり気味の犬山に、そうそう友達がいるとも思えないし…
二郎くん、なんか今わたしに失礼なことを考えていたでしょう。
心を読むのはやめてほしい。うちの一族はみな読めるのだろうか。
やけ気味に思いつきを言ってみる。メイド喫茶のメイド体験はいかがでしょうか。
関東のひとだと、知り合いにまず会うことのない地域なので、顔バレの心配なくできます。
後頭部を3人からはたかれた。
お嬢様になんてことをさせるのよ、3人が唱和する。
ただ、お嬢様がたはきょとんとしている。
文化祭でやるとお金がもうかるあれね、毎年どこのクラスがやるかでくじ引きがでているわ。
コツとかは高等部1年になるとみなわかるみたいよ。うちは3クラスだからね。
お嬢様高校への夢を壊さないでほしい。
二郎ちゃん、用意したものをそのまま出すのじゃだめよ。相手の身にならなくちゃ。
まず、趣味嗜好はいままで知らなかったんだから、希望をきいてみましょう。
オタクは自分に興味があるものはひとも興味があると思いがちだけど、そうではないことはもう中学3年なんだし、わかるでしょう。
一生わからないような大人をたくさん知っているような気がするが、心のなかに留めておきます。
じゃあ、年の順でお願いね。
エマです。高校2年です。演劇部にはいっていますが、脚本を書いたり演出したりするのが好きです。文化祭や芸術祭に向けての稽古時期に1週間休むことを申し訳なく思っています。
エマは、演劇少女だったんだ。文化部といっても舞台芸術だから体育会系的なとこもあるから身体を鍛えていたんだろうか。
桜子です。中学3年です。文芸部にはいっています。高等部といっしょなので、レベルの高い先輩がいて楽しいです。
由美子です。中学1年です。漫画研究会にはいっています。高等部といっしょなので、レベルが高いのですが、活動内容が文芸部もそうなんですが、なんとも言いにくい…
桜子と由美子は顔を真っ赤にしてうつむいている。
エマが雰囲気をよまずにBLばっかりになっているのよね。
顔とか体格とかほんとによく似ているのに性格はまるで違うようだ。
学業が平均以上でないと部活動はできないそうなので、3人とも優秀なのだろう。身体能力はエマに関しては高い。インターハイレベルはあるようだ。
んじゃBLの棚がちゃんとわけてある大型書店にいって15冊くらい購入して読書ざんまいで1週間というのはいかがでしょうか。
手を抜くことばかり考えるんじゃないの。
ここはあと1時間でてて、ホテル自慢のバイキングよ。
そのあとからはうちに荷物を移動して庶民生活になるわよ。
演劇だと地元の演劇の稽古をみるのはどうでしょうか。
暑いなかでやってるんじゃないでしょうね。
あと、うらじゃ祭りの稽古をやっていますね。
暑いなかでやってるんじゃないでしょうね。
冷房のきいたジムとか水泳はいかがでしょうか。オリンピック準拠のとこまでありますけど。
庶民生活じゃないわ。
吉備路文芸館はいかがでしょうか。
地元出身作家ばかりね。活躍したのは岡山でない人が多いわねえ。文物はいいけど、人間にあったほうがいいかもしれないわ。
犬山はなに考えてたんだ?つっこみにばかりまわっているけど。漫才でもボケのほうが創造力がいるんだぞ。
備前焼き体験で焼き抜き。これなら暑くないわ。
『ハルカの陶』の映画とマンガをみて、ついでに岡山ローカルの俳優の稽古をみて、なんなら体験して、というのはいかがかしら。
伊部駅周辺ならトイレは男女別の水洗よ。
えええ、水洗じゃないとことかあるの。
足守駅が竜の口公園のトイレが水洗じゃなかったりします。
慣れていない女子はいきにくいわね。
あら、もう時間だわ。
スクリーンにはむなしく自分たちがつくったプレゼンテーションが流れていた。
高層階でのバイキング料理にはお嬢様はサングラスをかけて参加していた。
自分は今後のことが不安であまりのどをとおらなかった。
岡山城も岡山後楽園も晴れているのに自分には泣いているようにみえていた。
デザートまで食べたあとはとりあえず実家への移動となる。
サムソナイト4つかかえてバスはだいじょうぶだろうか。
実家は岡山駅から500m以上はなれているので、バス移動となる。サムソナイト4つの女性陣だが、実家へのバスにはすいていたので、荷物ごとなんとか乗ることはできた。女の荷物はなんでこんなに多いのだろう。
今後の予定はまったく決まっていない。
実家のリビングで8人での会議が続くことになる。
乱暴なひとといっしょにやっていけるのだろうか。
ホテルグランヴィア岡山の昼食バイキングはいいですよ。岡山に来られたらご利用ください。




