表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻り治癒士は今度こそ相棒を救いたい〜身代わりで呪いを背負ったら、ヤンデレ化した狂犬騎士に重すぎる愛で溺愛監禁されました〜  作者: 水凪しおん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/15

第12話「共鳴する魂と奇跡の光」

 刃が肉を裂く嫌な音が、リアンの鼓膜を冷たく突き刺した。

 エリアスの体がゆっくりと崩れ落ちる。

 リアンは床に滑り込むようにして、倒れる彼を両腕で受け止めた。

 彼の背中から、どくどくと温かい血が流れ出し、リアンの手を赤く染めていく。


「エリアス……嘘だ、嫌だ」


 リアンの目から大粒の涙がこぼれ落ち、エリアスの青ざめた頬を濡らした。


「泣く、な」


 エリアスの血に染まった手が、ゆっくりと持ち上がり、リアンの涙を拭う。


「お前が泣く顔は……嫌いだ」


 掠れた声が、リアンの胸をナイフのようにえぐる。

 男が背後で下品な笑い声を上げた。


「美しい愛の終焉だ。二人仲良く、呪いの灰となるがいい」


 魔力炉が限界を超え、ひび割れた水晶から黒い光が漏れ出し始めた。

 あと数秒で、すべてが爆発する。

 だが、リアンはもう男の言葉にも、魔力炉の崩壊にも興味がなかった。

 腕の中にいる、冷たくなっていくエリアスの体温だけがすべてだった。

 自分を犠牲にすれば、彼を救えると思っていた。

 一人で背負えば、彼を悲しませずに済むと思っていた。

 それは傲慢な思い上がりだったのだ。


『僕の命は、僕だけのものではない』


 エリアスが誓約を交わしたあの時、彼は確かにそう言った。

 彼の命の半分は自分であり、自分の命の半分は彼なのだと。


「エリアス」


 リアンはエリアスの冷たい唇に、自分の唇を強く押し当てた。

 これは祈りではない。

 二人の命を完全に繋ぎ合わせるための儀式だ。


「僕のすべてを、君に預ける」


 唇を離し、真っ直ぐに彼の青い瞳を見つめ下ろす。


「だから、君のすべてを僕に預けて」


 エリアスの瞳に、わずかな光が宿った。

 彼がリアンの背中に腕を回し、最後の力を振り絞って抱きしめ返す。


「……あぁ。俺のすべては、お前のものだ」


 二人の心臓の鼓動が、完全に重なり合う。

 魂が共鳴したその瞬間だった。

 リアンの体内に蓄積されていたどす黒い呪いが、内側から激しく沸騰し始めた。

 黒い泥が反転し、純白の光へと姿を変えていく。

 それは身代わりとなって引き受けるだけの欠陥魔法ではなかった。

 互いの命を完全に委ね合い、愛と信頼で満たされた時にのみ発動する、真の癒やしの力だ。


「な、なんだこの光は」


 男が怯えたように後ずさる。

 リアンの体から溢れ出した眩い光が、地下の空間を太陽のように照らし出した。

 光の波が魔力炉を包み込み、暴走していた黒い瘴気を一瞬にして浄化していく。

 灰色のガラスが透き通るように、水晶は本来の美しい透明さを取り戻した。


「馬鹿な……私の呪いが、消えていく」


 光の奔流に飲み込まれた男が、絶叫を上げながら塵となって消滅する。

 広間に満ちていた死の冷気は完全に消え去り、代わりに温かな陽だまりのような熱が空間を満たしていた。

 エリアスの背中の傷が、光に包まれて跡形もなく塞がっていく。

 灰に染まっていた彼の髪も、本来の美しい白銀の輝きを取り戻した。

 浄化の光が収まると、地下室には静寂だけが残された。

 リアンは全身の力が抜け、エリアスの胸の上に崩れ落ちる。


「……終わった」


 リアンが小さくつぶやくと、エリアスの力強い腕が彼を抱きしめた。


「あぁ、終わったな」


 エリアスの声には、確かな熱と命の響きがあった。

 二人の頬に、天窓から差し込んだ一条の朝陽が柔らかく降り注いでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ