第一章 ヘヴンズライフ03
中年男性の取り立てを終えて、ロージーは再びデッドの運転する車に乗っていた。表情を強張らせたまま沈黙するロージー。固く口を閉ざしたその彼女に運転席のデッドが煙草をふかしながらニヤリと笑みを浮かべる。
「温室育ちのお嬢様には、ちと刺激が強かったか?」
デッドのおちょくるような発言に、ロージーは苛立ちを覚える。緊張から早鐘を打つ心臓。それを深呼吸でどうにか鎮めつつロージーはデッドをギロリと睨みつけた。
「……どうして、あのようなひどい真似をするのですか?」
口調がつい普段の調子に戻る。ロージーの質問にニヤニヤと笑みを浮かべるだけのデッド。返答しないその彼に、ロージーは「聞いているのですか!?」と口調を強くした。
「あれのどこが取り立てですか!? あれではただの恐喝です!」
「貸した金を返してもらおうってだけだ。それと口調が元に戻ってんぞ」
デッドの指摘にロージーは「……分かってま――るわ」と荒げた呼吸を整えた。
「……確かに借りたお金を返さないのは彼の落ち度だと思う。でもだからと暴力を振るうなんて看過できないわ。お金がないというのだから少しぐらい待ってもいいじゃない」
「もう何ヶ月も待っている。それに金がないというなら金を作ればいいだけだ」
「だから彼の歯を折った……と?」
「そういうことだ。まあ歯を折ってやったのは脅し半分だけどな。こんなろくに歯磨きもしてない男の歯なんて二束三文にもなりはしない。これであいつも死に物狂いで金を稼いでくるだろう。テメエ自身が換金されないためにもな」
「呆れたわ……お金なんかのために、貴方は人の命を何だと思っているの?」
ロージーの言葉にデッドが「金なんかのために……ね」と笑みを鋭くする。
「そいつは見当違いの非難だな。俺は市場価値に応じて適切にそれを換金しようとしているだけだ。人の命に価値があるとして、それ相応の金に換えることの何が悪い?」
「人の命をお金に換えるという行為そのものが浅ましいと話しているのよ。この世の中にはお金なんかよりも大切なものが沢山ある。それが貴方には分からないの?」
「分からないな。そんなものがあるならぜひともご教示願いたいところだ」
「お金よりも大切なもの。それは人の心よ。人の心はお金なんかに換えられないわ」
ロージーは自身の胸に手を当ててハッキリとそう告げた。このロージーの発言にデッドが「くっくっく」と可笑しそうに肩を揺らす。
「随分と陳腐な答えが返ってきたものだ。絵本にでも書いてあったのか?」
「馬鹿にしないで。確かに陳腐かも知れないけど事実なんだから」
「まあ何でもいいさ。それにお前があの男を同情するのは勝手だが、あいつはそれほど立派な人間でもねえよ。ギャンブルと酒におぼれて借金したんだからな。仕事もろくすっぽ行かなかったみたいだし、この顛末はあいつの自業自得ってだけだ」
「……だとしても、貴方のしたことは立派な恐喝です。犯罪者よ」
「俺が犯罪者ね……」
デッドがまたくつくつと肩を揺らして浮かべていた笑みを皮肉げに歪める。
「それなら丁度いい。後学のためにお前にその本物を見せてやるよ」
ここでロージーはふと気付く。車がいつの間にか人気のない通りを走っていた。窓から見える景色。その雰囲気がこれまでと違う。通りに並んだ建物がひどく寂れており周囲の空気も冷たく凍えていた。何となく危険な気配を感じてロージーは表情を青くする。
「あの……因みになんだけど、私たちはどこに向かっているの?」
ロージーの質問にデッドがあっけらかんとした調子で答える。
「スコールズ・ファミリーの事務所――平たく言えば、ギャングのアジトだ」
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商業都市マガーリッジには一般人が決して近づこうとしない区画が存在する。それは旧市街地区。一般人がその区画を避けるのは簡単な理由だ。単純に危険だからだ。
旧市街地区には社会からのはみ出し者――反社会的勢力が息を潜めて活動している。間違ってもその区画の奥深くに立ち入ってはならない。もしそれをすれば無事に区画を出ることは困難となるだろう。そう噂されていた。
ロージーには当然縁のない世界の話だ。ゆえに彼女はその噂の真偽などこれまで気にもしたことがなかった。だが今にして思う。その噂は恐らく事実だろう。なぜなら、ギャング一味だというスコールズ・ファミリーの事務所もまたその区画に存在していたためだ。
「お忙しいところ、わざわざ足を運んでいただき申し訳ない」
旧市街地区の一画にある古びたビル。その三階の部屋にロージーとデッドはいた。部屋の内装は建物の外観に反して立派で、一見して分かる高価な絨毯やソファ、銀食器が飾られた食器棚や観葉植物などが置かれていた。だがその部屋がどれだけ立派であろうと到底くつろぐ気になれない。なぜならロージーの目の前には――
ガタイの良い強面の男たちがずらりと並んでいたからだ。
「ヘヴンズライフ様には心より感謝しております。まだ駆け出しで活動資金の乏しい私たちに多額の活動資金を融資していただけたのですからね。おかげさまで私たちスコールズ・ファミリーも多少名の知れた組織へと成長することができました」
右目に大きな傷跡のある若い男が革張りのソファに腰掛けてにこやかに話をする。態度だけを見るなら男はとても友好的だ。だが男と対面しているロージーはソファに腰掛けながら否応ない緊張感を覚えていた。
「満足しているなら結構だがね。そんな礼を言うためだけに人を呼びつけたのか?」
ロージーと同じソファに腰掛けているデッドが煙草を咥えたまま若い男に尋ねる。強面の男たちを前にして何とも不遜な態度だ。
「もちろんそのような無礼は致しません。ヘヴンズライフ様にお越しいただいたのは、追加融資の件でご相談があるためです」
右目に傷がある男のその返答にデッドが「追加融資ね」とニヤリと笑った。
「前に貸した金がもう底をついたか。何か大きな買い物でもしたのかね」
「ええ。つい最近多額の投資をしましてね。前回の融資を返済する前にこのような話を持ち掛けてしまい申し訳ないと思っています」
「あんたらのところは決められた返済をきちんとしているからな。信用してやるさ」
「ありがとうございます。では早速本題に入りたいのですが――」
ここで右目に傷のある男がロージーに視線を移す。ドキリと心臓を鳴らして表情を強張らせるロージー。まるで値踏みするように彼女を見やり男が眉間にしわを寄せた。
「そちらのお嬢さんは新顔ですか? 私の記憶にはありませんが」
右目に傷のある男のその問いにデッドが「まあな」と肩をすくめる。
「うちの新入社員だ。ほら、お前も客に挨拶ぐらいしやがれ」
「あ……も、申し訳ありません。新人のローズマ――ロージーと申します」
ロージーは慌てて名刺を取り出すと右目に傷のある男にそれを差し出した。男がゆったりとした所作で名刺を受け取り「初めまして」とロージーに向けて微笑む。
「私はウォルト・スコールズと申します。失礼ですが私たちが生業とする仕事内容についてはすでにご存じでしょうか?」
「は、はい……スコールズ・ファミリーの……ギャングということは伺っています」
「その通りです。ヘヴンズライフ様は我々のようなはみ出し者にまで多額の融資をして頂き大変感謝しております。ロージーさんとも友好なお付き合いができれば幸いです」
ギャングと友好なお付き合いなど願い下げだ。だがそれを正直に口にするのはさすがに憚れる。結局ロージーは「はあ」と曖昧に返事するだけに留めることにした。
「それでは本題の話をしましょう。今回ヘヴンズライフ様に融資して頂きたい金額ですが、率直に申し上げまして5000万ガルほど工面して頂きたいと考えております」
右目に傷のある男――ウォルトの提示した金額にロージーはぎょっと目を見開いた。5000万ガルとは随分な大金だ。ロージーは眉をひそめてポツリと独りごちる。
「5000万ガルもの大金、私が幼い頃にふざけて壊してしまった骨董品と同額だわ」
「……お前は少し黙ってろ」
デッドがなぜか不機嫌そうに呟く。言われた通りお口にチャックするロージー。デッドがコホンと咳払いして「5000万ガルね」と煙草の煙をふうと吐き出す。
「さすがにそれだけの額を二つ返事でというのは難しいな。その大金を利子含めて本当に返済可能なのか。まずはこれからどんな事業を展開するつもりか聞かせてもらおうか」
「先程も少しお話ししましたが投資ですよ。私たちがさらに拡大していくために必要な」
「その投資とやらの具体的な内容は?」
「あまりお話ししたくないのですが、どうしてもお聞きになりますか?」
「用途不明なら融資はできないな」
「……承知いたしました」
ウォルトがソファから立ち上がり部屋の出口に向けて手をかざす。
「説明いたしましょう。場所を移動させて頂きますので、どうぞこちらへ」
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ウォルトに案内されて訪れたのは、彼らの事務所があるビルの地下であった。厳重に施錠されていた扉を開けて闇に満たされた地下室へと入るロージー。地下特有の冷たい空気に体を震わせていると、照明が点けられて地下室が淡い光に満たされる。眼球が光に慣れるまで五秒弱。ロージーは霞んだ視界を瞬きさせて地下室の中心に視線を向けた。
「――ひっ!?」
ロージーの口から悲鳴が漏れる。明かりに照らされた地下室。その中心に黒い影が鎮座していた。像ほどもある巨体。黒い体毛に覆われた全身。姿形は狼に酷似しているが、その額からは一本の角が生え、手足にも杭のような分厚い爪が伸びていた。
デッドが煙草を咥えたまま「こいつは……」と目を見開く。ギャング相手に平然としていたデッド。そんな彼も地下室にいた奇妙な動物には驚いていた。奇妙な動物に動きはない。どうやら目を閉じて眠っているらしい。
「これは魔獣ですよ」
ウォルトが穏やかに言う。ロージーは表情を強張らせながらウォルトに視線を移す。五人の強面の男を背後に従えたウォルトが淡々した口調で説明を始めた。
「これが私たちの投資をしているモノ。近代兵器に変わる最強の生物兵器です。魔獣についてはお二方も知識があるでしょう。300年前に魔女が使役していた怪物ですよ」
「300年前の魔女……それは『魔女狩り』として知られているあの魔女のこと?」
「はい。まさしくその魔女のことです」
ロージーの疑問に丁寧に返答しつつウォルトがまた説明を再開させる。
「300年前。この世界には魔女を名乗る一族が存在しておりました。科学とは異なる力の概念――魔術により人類と敵対した彼らを国は軍を投入することで駆逐しようとします。しかし正体を隠して社会に暗躍する魔女を見つけることは非常に困難でした」
学校で授業を受けている者ならば誰もが知るだろう基礎的な歴史。だが平和な時代を生きる人間からすると現実味のない過去。ウォルトがニヤリと笑い僅かに瞳を細める。
「そこで一人の男が立ち上がります。男は一代で莫大な財産を築いた資産家でした。その彼が魔女に対して多額の懸賞金を懸けたのです。するとどうでしょう。これまで他人事のように静観していた一般の方々が、我先にと魔女の捜索を始めました」
ウォルトが可笑しそうに肩を揺らす。
「暗躍していた魔女が次々と炙り出され、狩られていきました。魔女は魔術を行使する。しかし多勢に無勢だったのでしょう。結果、国軍ですら対処できなかった魔女が僅か数年で駆逐されました。これが有名な魔女狩りです。そして魔女狩りを指導した資産家の男。財力で人類を救済した勇敢なその彼を――」
一呼吸の間を空けてウォルトがその言葉を口にする。
「人々は金勇王と称賛したとのことです」
説明を終えてウォルトが口を閉ざす。魔女狩りに関する一般常識。それをなぜウォルトがこと細かく説明したのか。ロージーは困惑しながらウォルトを見やる。ウォルトの感情が読めない視線。それは魔獣を眺めているデッドに向けられていた。デッドが煙草の煙を吐きながら「……魔獣ね」と口を開く。
「確かにペットショップで購入した愛玩動物ってわけじゃなさそうだな。だが魔獣を生み出すためには特別な施設が必要だ。お前たちは一体どこでコイツを手に入れた?」
「3Sの人間からです。貴方ならば噂ぐらい耳にしたことがあるのではありませんか? |第二世代魔女科学研究所《SecondSorceressScience》。先程お話しした、私たちが投資している組織ですよ」
デッドが魔獣からウォルトへと視線を移動させる。デッドの鋭利な視線。その冷たい気配にロージーは背筋を震わせた。デッドの視線を受けてウォルトもまた瞳を鋭くする。
「3Sは魔女の力をこの世界に蘇らせようとしている。人類が制御できる形でね。私は彼らの理念に共感したのです。ゆえに彼らの研究を支援したいと考えています」
「共感とはよく言うぜ……お前たちは連中の研究成果で金儲けがしたいだけだろ?」
「彼らの研究成果を私たちが資金に変える。そのお金が彼らの研究資金として利用される。ただそれだけのことですよ。しかしそれをするには元手が足りない。そこでヘヴンズライフ様にご協力いただきたいと考えたのです」
「さて……どうしたものかね」
「やはり魔女絡みとなると、ヘヴンズライフ様も腰が重たくなるものですか?」
魔女絡みとなると腰が重い。その言葉の意味が分からずロージーは疑問符を浮かべた。煙草を咥えたまま返答しないデッドにウォルトが「なるほど」と得心したように頷く。
「どうやら噂は本当のようですね。300年前の魔女狩り。その発起人となる資産家の男。金勇王と呼ばれた彼こそヘヴンズライフの創始者であると」
魔女を駆逐した男。金勇王。その彼とヘヴンズライフの意外な繋がりにロージーは驚愕した。誰もが知るだろう偉人が貸金業者の創始者など俄かには信じがたい。
「貸金業により莫大な資産を築いた金勇王。その彼が設立した組織がヘヴンズライフの前身となっている。そして今なお、金勇王の血は受け継がれており組織のトップに君臨している。ヘヴンズライフの現社長こそ『金勇王の末裔』なのでしょう」
「……だとしたら何だ?」
デッドの問いにウォルトが「あくまで私の想像ですが」と話を続ける。
「金勇王にとって魔女は宿敵のはず。そんな魔女に与するような人間に多額の資金を融資するなどヘヴンズライフ様としては心情的に難しいのではないかと思いましてね」
「ひとつ勘違いしているようだが……」
ウォルトの探るような口調に、デッドがひどく面倒臭そうに嘆息する。
「魔女が俺たちの宿敵だなんてことはない。確かに金勇王と魔女は敵対した。だが所詮は過去のことだ。会社に飼われているだけの俺たちはもとより、金勇王の末裔――あいつもそんな馬鹿げたことは考えてないさ」
「……そうでしたか。それは余計な詮索をしてしまったようですね。申し訳ありません」
ウォルトがやや拍子抜けしたように表情から鋭さを消す。二人の話について行けず呆然としているだけのロージー。だがここで彼女はふと思う。魔女云々はともかく、ギャングに多額の資金を融資することは、彼らの犯罪を助長させることに繋がりかねない。
「ではヘヴンズライフ様としても問題はないということで融資して頂けると――」
「あ、ちょっと待ってください。この話は日を改めてから相談――」
この直後、ロージーの声を掻き消すように数発の銃声が響いた。
強烈な銃声に視界が揺れる。ロージーは困惑しながらも周囲の状況を探った。ウォルトの背後にいた屈強な男たち。その彼らがバタバタと床に倒れていく。
「――な!?」
ウォルトが目を見開いて驚愕する。ロージーは唖然としながらも視線をさらに巡らせた。彼女のすぐ隣にいる男。デッド。その彼の右手に黒光りする拳銃が握られている。
「っ……なんのつもりですか?」
ウォルトが表情を引きつらせる。彼が初めて見せる明確な敵意。その迫力たるは彼がギャングの人間であることを思い出させるに十分だった。だがギャングの敵意の込められた視線などものともせずデッドが不敵にも笑う。
「悪いな。ちとお前に訊きたい話ができちまってよ。だが後ろの連中がいると穏便に話をできそうにないんでな。少しの間だけ大人しくしてもらおうと思ったんだ」
拳銃に撃たれた男たちが体を丸めて苦悶の声を漏らしている。致命傷ではないようだが動けるほど軽傷でもないらしい。ウォルトが鋭く舌を鳴らして言葉を吐き捨てる。
「やはりヘヴンズライフ様は魔女を敵対視しているということですか?」
「いいや、さっきも話したことだがヘヴンズライフは魔女と敵対するつもりはない」
「ならばなぜ?」
「あんたに説明してやる義理はないな」
ウォルトの左目がピクピクと痙攣する。
「貴方の事情は知りませんが、このような真似をしてタダで済むとお思いですか? いくら恩義あるヘヴンズライフ様であろうと相応の対処はさせて頂きますよ」
「強気なのは結構だが、この状況であんたに何ができる?」
「ヘヴンズライフ様の宿敵であるかも分からない魔女。その話をするというのに、私が何の対策もしていないとお考えですか?」
ここで床を引っかくような物音が鳴る。奇妙な物音に瞬間的に背中を凍えさせるロージー。言いようのない悪寒を覚えながら、彼女は恐る恐る背後へと振り返った。
空気の冷えた地下室。その中心に黒い体毛を生やした魔獣が立っている。今にも飛びかからんと四本の足をたわめて、鋭い牙の隙間から唸り声をこぼしている魔獣。先程まで閉ざされていた瞼も見開かれており、そこからギラギラと輝く赤い瞳が覗いていた。
「あ……ああ……」
ロージーは声を震わせながらその場に座り込んだ。敵意を剥き出しにする魔獣。すぐに逃げなければならない。それを理解しながらも足が動かない。腰が抜けたのだろう。どこか冷静にそれを理解したところで――
「ぐぉおおおおおおああああ!」
魔獣が駆けた。
魔獣との距離は目測十メートル。体の大きな魔獣ならば一瞬で縮められる距離だ。もはや今から逃げても間に合わない。魔獣が涎を垂らしながら顎を開く。子供なら丸呑みできそうな大きな口。大人でも二口か。ロージーが恐怖して目を閉じた、その時――
魔獣がピタリとその足を止める。
「……え?」
ロージーはぽかんと目を丸くした。ロージーの目の前で静止した鋭い牙。人間を軽々と噛み砕くだろう凶器。それを口の中にしまいこみ、魔獣がちょこんと腹ばいに座る。そして前足で顔をポリポリと掻きながら――
「くぅうん」
魔獣が子犬のように鳴いた。
「な……なんだ? 一体どうした?」
滑稽なほどに狼狽するウォルト。敵意を完全に無くしたのか、魔獣が赤い瞳を閉じてまた眠り始める。静かにスヤスヤと寝息を立てる魔獣。その姿は体の大きさこそ違うも、可愛らしい子犬そのものに見えた。
「何を寝ている! さっさと起きろ! なぜこの連中を襲わないんだ!」
「知らなかったのか? 魔獣ってのは忠誠心が高いんだぜ」
動揺するウォルトにそう告げて――
デッドがその瞳を鋭利に細めていく。
「さて、そんじゃあ話を聞かせてもらおうか」




