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Biddel  作者: TuNa


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1/1

1「劇的な変化」

初投稿になります!

お手柔らかにお願いいたします。

「ああ、くそ、またコイツかよ。やってやれっか!」



日が沈み始めた頃、部屋が薄暗くなってきたことに気付くこともなく自前のPCオンラインゲームに夢中になっていた佐藤成実は、着けていたヘッドセットを無造作に机に放り投げ立ち上がると、ベッドにうつ伏せに飛び込んだ。


昨今、世界的に流行っている【Biddel】というオンラインゲームは、操作キャラをはじめ、使用武器や魔法のスキルなど、すべてクリエイティブに創作することができる。中学を卒業して早二年と半年、引きこもり生活を続けている何者でもない成実にとって、【Biddel】は何にでもなれる居心地のいい空間だ。このゲームに出逢ってから一年ほど経つが、今では世界中の猛者たちと肩を並べるほどに強く、上手くなっている。


その中でも成実がもっとも苦手な強敵、シークというプレイヤーはいつもエンカウントする度に惨敗している。たった今も、そのプレイヤーに負けてやる気を削がれたばかりだ。



「つまんねぇ、こんな生活……。」



引きこもり生活を始めて二年半、両親はまだ何も言わないが、きっと失望しているに違いない。申し訳ない気持ちと、今更どうにもならないという気持ちが半々というところだ。


枕に向けて深くため息を吐き、ベッドから起き上がるとまたパソコンと向き合う。



「──続きやるか……ん?なんだこれ?」



PCのホーム画面に、見知らぬフォルダがあるのを見つけた。名前は文字化けしているようで読めないそのフォルダを、成実は少し不安を抱えながら開いてみた。


すると突然、画面が真っ白に切り替わり、大きな光を放つ。すっかり日が暮れ暗くなっていた部屋の時間が巻き戻ったかのように、大きな光が成実もろとも包み込んで──。














眩しさに目を擦りながらゆっくり目を開けると、肌に暖かさを感じた。つい先程まで自室にいたはずの成実だが、目の前には見知らぬ風景が広がっていた。



「な……え、なんだこれ?ここどこ!?どうなってんの!?」



状況を理解できないまま、ゆっくりと辺りを見回すと、おおよそ日本とは思えない洋風な街並み、その道路の真ん中に、成実は立っていた。


呆然と立ち尽くしていると、ドン!と肩に強い衝撃が走り、軽く吹き飛ばされその場に倒れ込んだ。



「あ、すいません……。」


「危ねえな!ボケっとしてんじゃねえぞ!」



鎧のような武装をした大柄の男とすれ違いざまに衝突し、男はそのまま去っていった。


「痛ってぇ……ってことは、夢じゃない、のか。日本語も通じるみたいだし、でも、どう見ても日本じゃないよなここ……。」



肩を押さえながらゆっくりと立ち上がると、もう一度辺りを見回す。ようやく目も慣れてきたので、とりあえず歩き出すことにした。



「夢みたいな話だけど、これっていわゆる異世界召喚的なやつか?にしてもチュートリアルも何もないってのは優しくねぇよなぁ。」



ボソボソと独り言を呟きながら歩き続けていると、いつの間にか街の外に出てきてしまった。街へ引き返そうと振り返ったその時、背後から声が聞こえてきた。



「キャー!だれか助けてえ!!」



街の外側、そのもう少し先に、女の子の姿が見えた。今の声の主はきっと彼女だろう。咄嗟に走り出していた。



「だ、大丈夫!?何があったんですか!?」


「ああ、助けてください!そこに……」



少女が正面に向かって指をさす。その先に目線をやると、水色の丸くて柔らかそうな見た目……いわゆる[スライム]のようなものが、こちらをじっと見つめている。見た目こそ可愛らしい顔と形をしているが、スライムはかなり好戦的のようだった。



「えっと……お姉さん、これどうしたらいいの……?」



どこかでペットとして飼われていても不思議ではない見た目だ、もしかしたらこの少女が飼い主で、散歩の途中に喧嘩でもしたのかもしれない。



「かいぶつよ!はやくやっつけてちょうだい!」



泣きながら少女に左腕を掴まれた成実は、女子耐性の低さ故に動揺を隠しきれないと同時に、この子の前で少しでもカッコつけようとやる気が湧いてきた。



「倒すって言ってもなぁ……。あ、お姉さん、それちょっと貸して!」



少女の腰に添えられていた短剣をひょいと引き抜き、スライムと対峙する。とは言っても人間相手ですら喧嘩の経験もない成実は、この借り物の短剣をもってしてどう戦えばいいのかわからない。



「おりゃっ!」



とりあえずがむしゃらにスライムに向け短剣を振り回すと、思っていたより簡単に目の前の怪物は倒れ、弾けるように消滅した。



「おぉ……はじめての感覚……気持ち悪ぃ……。」



まるで豆腐でも切ったかのような感触だったが、生物を殺してしまったという事実に恐怖を感じた。



「とはいえ無事に終わってよかったぜ……。あ、これ、ありがとね。」



短剣を少女に渡すと、先ほどまで泣いていた少女はこちらを見てニッコリと微笑んだ。



「助けてくれてありがとうございます。スライムと言えどモンスターに会うのは初めてで怖くって……でも、さっきのあなたの戦いぶりを見ていたら、私でも簡単に倒せたかもしれないわねっ!」



「え、俺そんなにビビってたかな!?たしかに俺も初めてだったけど!?」



ふふふ、と笑う少女に成実は肩の荷が降りたように安心し、その後、少女の案内で街のはずれの一軒の家へとやって来た。



「こ、これってもしかして、助けてくれたお礼にムフフな感じってこと……!?お父さん、お母さん、今までありがとう!俺、この世界で上手くやっていくよ……!!」


「何言ってるの?バカなこと言ってないではやく入って。」



その少女は呆れた顔でため息をつきながらドアを開け、先に入れと言わんばかりに成実を見つめている。



「お邪魔しまーす……!?はっ……これって。」


「紹介するわね。これが私の家族よ。」



目の前にいた()()らは、生気を失い、例えるならそう、ゾンビのような廃人の姿をしていた。










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