ド不運男の異世界転生、魔力ゼロで最弱テイマーになったはずが実は伝説の役職でした。相棒はこの世界のラスボスのようです。
『久我厄斗よ聞こえていますか──』
天使のような優しい囁き声が聞こえた。
あぁ俺は死んだのか、今考えればろくな人生じゃなかったな。
彼女に浮気されトラックに轢かれる。
不運のフルコースだ。
しかも母親は変な宗教にハマり、父親はギャンブラー。俺がいなくなった今この家族を支えられる人間はいない。
……いや、正直言うと
その重荷から解放されたと思っている自分もいる。
そんな事を考えていると天使のような人の声がだんだん荒くなってきた。
『久我厄斗よ!聞こえているなら返事をしなさい!』
あぁそうだ俺は話しかけられていたんだ。
そんなことを思い返事を返した。
「は、はい!すみません……考え事に夢中で……!」
『聞こえているならよい、私はこの世界の神
エリオスフィアだ。まぁ気軽にエリとでも呼んでくれ。』
神……神かぁ、本格的に死んだって感じするなぁ
てかこの人めちゃくちゃ可愛くないか?
金髪ロングでエメラルド色の目、高身長でスタイル抜群……!!どこをとっても完璧な美女だ。
『……聞こえておるぞ、私は心の声が読めるんだ。』
「えぇ!?すみません……!」
『まぁ良い、というか話が全く進まないからとりあえずこっちに来い!!』
エリさんに言われる通り後ろをついて行くと真っ白なソファとモニターのような物があった。
そこに映っていたのは草木は枯れ空は淀み戦争が絶えない一つの国だった。
「うわぁなにこの国、絶対こんなとこに住みたくないわ……」
『そうか、だが残念。お前には今からこの世界の勇者になってもらう。』
え……?は?はぁぁぁぁぁ?!
そう雄叫びをあげるとエリさんは嫌そうな顔をしてこちらを見つめる。
『しょうがないだろ、お前死ぬタイミング悪いんだもん。』
まぁつまりは余り物ってことですよね……はは
俺は死んだ後でも運が悪いのかよ、普通異世界転生ってキラキラファンタジーで可愛い女の子に囲まれながらキャッキャウフフするもんじゃねぇの?!
なんだよこれ!地獄じゃねぇか。
転生した瞬間殺されるぞ??
『ま、まぁそう案ずるなお前には最強能力を付与してやる。』
「最強能力?!おぉ!それってどんな能力ですか!」
なかなか異世界転生っぽくなってきたな、
最強能力といえば攻撃力がステータスがMAXだったり特別な魔法が使えたり色々な物を作り出せたりととにかくチートな能力のことだよな。
さぁ俺にはどんな最強能力が付与されるんだろう
と心を踊らせているとエリさんが答えた──。
『ズバリ、どんな魔物でも仲良くなれる能力だ!
役職的にはテイマーに値する。』
「え……?テイマー?テイマーってポケ〇ンみたいな事……?」
『まぁ簡単に言えばそんな感じだ。』
俺は驚愕した。
最強能力ってバチバチに戦えるかっこいい能力じゃねぇーのかよ!?
魔法使ったり剣術で無双したりできねぇじゃん……
なんなんだよ……もう最悪だ、
『じゃあ勇者久我よ、行ってこい!元気でな!』
「もう勘弁してくれーーーー!」
そんなテイマー勇者久我の冒険が始まる。
『『何者だ……?!捕らえろー!!』』
はい、早速捕まりました。
え?なにこれこんな秒で捕まることある??
まだ転生して5秒なんですけど、
しかも何この服装!?ださっ!よわ!
全身ボロボロの皮装備……しかもちょっと臭い。
「お前何をしに来た、ここは俺達の縄張りだぞ。」
「そうだそうだ!何しに来た!」
そこには全身皮と鎧の装備を付け、メイスを持ったモヒカンの盗賊二人がいた。
いかにもな見た目でこちら側を警戒している様だ……
ちょっと神様ー?何してくれてんの、
もっと安全なところに転生させろよ!!なんっでいきなりよく分からん盗賊の縄張りに転生させるかな?!
さっそく大ピンチですが!!
「あのー、俺別に怪しい者じゃなくて……
ただ道を間違えてしまったんです!!」
「なので離してもらえませんかね……」
「ほぉ、道に迷ったと、それでこんなに山の奥地に来たと言っているのか……?怪しすぎる。」
「そうだ!そうだ!怪しいぞ!」
もーめんどくせぇ!ここ山の奥地なのかよ……
せめて草原とかさ村の近くとかあるじゃん……
しかもなんだよ横のヤツ、全肯定botかよ……
とりあえずここから脱出しなければいけない訳だが俺に何ができるんだ?
今は手足が縛られていて動けない状態、
……あ、!ここは異世界!なら魔法が使えるじゃねぇか!!
(とりあえずステータスを見よう)
「……ステータスオープン!!」
「「?!」」
ちょっと小っ恥ずかしいがステータスを見ることが出来た。
……は?だがここでまたもや衝撃を受けることになる。
MPがゼロ……??……は?
『あ、魔力付け忘れた……まぁいっか』
良くねぇよ!!
久我の運はことごとく悪いのだ。
Lv一でMPはゼロ、おまけにNO武器、終わったな俺……
もう泣きてぇよ。
「ギャハハ!親分!こいつMPゼロですよ!
おまけにLv一のクソザコ!!」
「ふっ、お前今までよくそれで生きてこれたな。」
いや転生したのさっきですからね?!
とでも言いたいが言ったら確実に面倒なことになるので言わないでおこう。
「本当に道に迷っただけっぽいな
いいよ、逃がしてやる。」
「!親分いいんスか?!せめて金だけは貰っていきましょうよ!!」
「……確かにな、おいお前!縄を解いてやるから金を出せ。」
ひぇ、おっさんの顔面ドアップはきついっす。
でもまぁ逃がしてくれるとは思ってなかったな、盗賊の中では良い奴なのかも……
金は取られるが。
……あれ?金なんて持ってたっけ?
そう疑問を持ち体の隅から隅までを探ってみる。
うん、無いな。
終わった。
「あの……お金持ってなくて……
ごめんなさい!!ど、どうか命だけは!」
情けない叫び声を上げながら土下座する様子は誰が見ても滑稽だと思うだろう。
ほら、実際に盗賊さん二人も哀れみの目を向けている。
だがいいんだ!命さえあればどうにかなる。
そう思い顔を上げた。その瞬間。
──ドォン。
まるで山が動いたような鼓動。
地面が揺れ、草木が薙ぎ倒されていく。
「「「……は?、」」」
砂煙の奥。
巨大な影が、ゆっくりと姿を現した。
それはぎょろりとした目をし、紅に染まる鱗を持ち、天を貫くように反り返った二本の黒い角を生やす。
「……ドラゴンじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「親分!!親分どうしましょう?!」
「……こんなデカイの初めて見たぞ……」
アニメしか見たことのない存在。
伝説。
災厄。
人類の天敵。
それが、目の前にいる。
まさかここで死ぬとは思わなかったよ。
サヨナラ俺、サヨナラ盗賊。
最後に見る顔がおっさんとはな……
ドラゴンは一歩、また一歩と近づいてくる。
俺の足はガクガクに震えていた。
そりゃそうだろう、だってさっき転生してきたんだもの。
こんな序盤からラスボスに出会うなんて思わないよな普通。
もうダメだ……殺すならせめて痛くないようにしてくれ……
その時、誰もが目を疑う光景が広がった。
「クゥーん」
そうだ。ドラゴンが犬のようにひっくり返り腹を見せ、しっぽを振りながら俺に甘えてきたのだ。
「親分……!?どういうことですか親分!?」
「お前は一旦黙れ、殺すぞ。」
「ひぇ」
俺は「へぁ?」とかいう情けない声を出しながら
驚愕した。
こんなの意味が分からない、なぜ俺に懐いているんだ?
そう思った時ふと思い出した。
「あ、そういえば俺テイマーだわ。」
「「テイマーだって……!?」」
俺がポロッと口から零すと盗賊二人は驚いたような顔をした。
「テ、テイマーといえばこの世界で数人しかいないという伝説の役職じゃないか……!!」
え、なにそれ。
テイマーが伝説の役職?
様々な異世界系アニメで不遇とされるテイマーが"伝説"だって?
なんだよそれ『最高じゃねぇか』
ドラゴンがクーンクーンと甘えてくる。
「おすわり」
──スタッ。
「お手」
──ポンッ。
ふっ、俺この世界で勇者になってみせるよ。
このポチと一緒にな!!
「「いやポチはねぇだろ!!」」




