【ガブリエル・レイヴン ルート】第2話
あの日から、ガブリエルは本当に——
私の護衛を自称するようになった。
朝、寮から出ると、必ずガブリエルが待っている。
「おはよう、リディア!」
「お、おはようございます……」
「今日も一緒に学園に行こうぜ!」
(毎日って言ってたけど、本当に毎日なんだ……)
登校途中、ガブリエルは常に私の周りを警戒している。
「リディア、そっちは石がある。こっち来い」
「あ、ありがとうございます……」
「リディア、日差しが強い。こっち側歩け」
日陰の方に誘導される。
(過保護すぎる……!)
でも、その気遣いは嬉しかった。
教室に着くと——
「よし、俺はここで待ってるからな!」
「え、授業は……?」
「俺、騎士科だから教室違うんだ。でも、お前が授業終わるまでここにいる」
「え!?」
「何かあったらすぐ駆けつけられるように!」
(それ、授業サボるってことじゃ……!?)
「ガブリエルさん、それは駄目です!ちゃんと授業受けてください!」
「でも……」
「私は大丈夫ですから!」
ガブリエルは、不満そうな顔をしたが——
「……分かった。でも、何かあったら、すぐ呼べよ!」
そう言って、去っていった。
(やれやれ……)
昼休み。
「リディア!」
またガブリエルが現れた。手には、お弁当。
「一緒に飯食おうぜ!」
「あ、はい……」
中庭で、二人で昼食。
ガブリエルのお弁当は豪快だった。
肉、肉、肉。
「ガブリエルさん、お肉ばっかりですね……」
「だって、肉が一番うまいだろ!」
「でも、野菜も食べないと……」
「野菜……苦手なんだよな……」
子供か。
「はい、これ」
私は、自分のお弁当から野菜を分けてあげた。
「え、いいのか?」
「はい。だから、食べてください」
「……おう!」
ガブリエルは、嬉しそうに野菜を食べた。
「……うまい」
「本当ですか?」
「ああ。お前がくれたから、うまい」
その笑顔は眩しかった。
午後の授業が終わる。
当然のように、ガブリエルが教室の前で待っていた。
「お疲れ、リディア!」
「お疲れ様です……」
「よし、寮まで送るぞ!」
「あ、でも今日は図書館に寄りたくて……」
「じゃあ、図書館まで一緒に行く!」
(ついてくるんだ……)
図書館に着いて、本を探しているとガブリエルが常に隣にいる。
「ガブリエルさん、本は……?」
「俺は本読むの苦手だから。お前の護衛してる」
「護衛って……図書館ですよ?」
「どこでも危険はある!」
(過剰すぎる……!)
でも、周りの男子生徒たちが、ガブリエルを見て避けていく。
(ああ……これ、近寄るなオーラ出てる……)
夕方、寮に戻る。
「じゃあな、リディア!また明日!」
「はい、おやすみなさい……」
部屋に入って、やっと一息。
(ガブリエルさん、いい人だけど……ちょっと過保護すぎる……)
でも、悪い気はしない。
誰かに、こんなに心配されたのは初めてかもしれない。
翌朝。
寮から出ると、やっぱりガブリエルがいた。
「おはよう、リディア!」
「おはようございます」
「……あれ?」
ガブリエルが、私の顔を覗き込む。
「どうしたんですか?」
「お前……なんか、顔色悪くないか?」
「え?」
「ちょっと待ってろ!」
ガブリエルは、私の額に手を当てた。
「……熱い!」
「え、そんなことないです……」
「ある!お前、熱あるだろ!」
確かに、少しだるい気はしたけど。
「大丈夫です、授業くらい……」
「駄目だ!」
ガブリエルは、私を抱き上げた。
「っ、ちょっと!?」
「今から医務室連れてく!」
「で、でも……!」
「お前の体の方が大事だ!」
そう言って、ガブリエルは私を抱えたまま走り出した。
(恥ずかしい……!)
でも、ガブリエルの腕は温かかった。
医務室で、案の定、微熱があると診断された。
「ほら見ろ!やっぱりじゃないか!」
「すみません……」
「謝るな!」
ガブリエルは、私の手を握った。
「お前が倒れたら……俺……」
その声は、震えていた。
「俺、また守れなかったって……」
「ガブリエルさん……?」
「……昔、妹がいたんだ」
「え……」
「俺が守るって、約束してたのに……事故で、死なせちまった」
ガブリエルの目に、涙が浮かんでいた。
「だから……もう、誰も失いたくない。特に、お前は……」
彼は、私の手を強く握る。
「お前だけは、絶対に守る。何があっても」
その言葉は重かった。
でも、その重さが愛情なんだと、分かった。
「……ありがとうございます」
「リディア……」
「でも、ガブリエルさん。私、そんなに弱くないですよ」
「……分かってる。でも……」
「心配してくれるのは嬉しいです。でも、過保護すぎると……息苦しくなっちゃいます」
ガブリエルは、ハッとした顔をした。
「……そうか。ごめん」
「謝らないでください。ただ……少しだけ、信じてください。私のこと」
「……ああ」
ガブリエルは、少しだけ笑った。
「でも、やっぱり守る。それだけは譲れねえ」
(やっぱり……)
その笑顔は優しかった。
そして、私は思った。
(この人の「守りたい」って気持ち……いつか、暴走するかも)
その予感はやがて、現実になる。




