【ヴィクター・エステル ルート】第1話
出会いから数日後。
「リディア様!」
朝、部屋を出ると、ヴィクターが立っていた。
「ヴィクターさん、どうして、ここに?」
「お迎えに上がりました!」
迎え?
「今日は天気がいいですから、一緒に登校しましょう!」
「え、でも私、一人で大丈夫」
「いえ!リディア様をお一人にするわけには参りません!」
ヴィクターは、キラキラした笑顔で私の荷物を持った。
「さあ、参りましょう!」
断れない雰囲気。
登校途中、ヴィクターは色々と話しかけてくる。
「リディア様は、朝食は何を召し上がりましたか?」
「え、パンとスープ、ですけど」
「それだけでは栄養が足りません!明日から、私がお弁当を作ってきます!」
「え、でも!」
「リディア様の健康は、私の責任ですから!」
責任って。
学園に着くと、ヴィクターは私の椅子まで引いてくれた。
「どうぞ、お座りください」
「あ、ありがとう、ございます」
周囲の生徒たちが、ジロジロと見てくる。
恥ずかしい。
「では、私は自分の教室へ。何かあれば、すぐに呼んでくださいね!」
そう言って、ヴィクターは去っていった。
昼休み。
「リディア様!」
またヴィクターが現れた。
手には、豪華なお弁当。
「作ってきました! 一緒に食べましょう!」
「え、でも今朝会ったばかりなのに、いつ」
「昨夜から準備していました!」
昨夜!?
お弁当を開けると、色とりどりの料理が並んでいる。
「すごい」
「リディア様の好きなものを、侍女の方々に聞いて作りました!」
また聞いてる。
でも、食べてみると、美味しい。
「美味しい、です」
「本当ですか!?」
ヴィクターの顔が、パッと明るくなる。
「良かった! リディア様に喜んでいただけて、僕は幸せです!」
その笑顔は、純粋で。
この人、本当にいい人なのかも。
そう思った。
放課後。
「リディア様、お部屋まで送ります!」
「あ、ありがとうございます」
寮まで送ってもらい、部屋に入ると、机の上に、花が飾ってあった。
「え?」
窓の外を見ると、ヴィクターが手を振っている。
まさか、部屋に入って!?
慌てて窓を開けると、ヴィクターが笑顔で言った。
「リディア様のお部屋に花がないのが気になったので! 鍵は侍女の方に開けていただきました!」
「え、ちょっと、勝手に!」
「大丈夫です!掃除もしておきました!」
掃除まで。
「あと、リディア様の服が少し破れていたので、繕っておきました!」
どこまで見てるの!?
「では、また明日!おやすみなさい、リディア様!」
ヴィクターは、満足そうに去っていった。
私は、呆然とその場に立ち尽くした。
この人、優しいけど、何か、怖い。
でも、その時はまだ、彼の「奉仕」が、どこまで行くのか、知らなかった。
翌朝、起きると、ヴィクターが、また寮の前で待っていた。
手には、朝食の入ったバスケット。
「おはようございます、リディア様! 朝食を作ってきました!」
私の新しい日常が、いや、監視が、始まった。




