【ルシアン・ノワール ルート】第1話
出会いから数日後。
「リディア嬢、放課後、魔法学準備室へ来たまえ」
授業が終わると、ルシアンに呼び止められた。
「は、はい」
また、個人指導。
正直、ルシアンは苦手だ。いつも皮肉を言うし、私をからかってくる。
でも、断れない。彼は教師だから。
準備室に入ると、ルシアンが本を読んでいた。
「来たか。座りたまえ」
私は、指定された席に座る。
ルシアンの目の前。
「今日は、君の魔法の基礎を見る」
「はい」
「では、簡単な魔法を。光の魔法を見せてみたまえ」
言われた通り、手のひらに光を灯す。
でも、すぐに消えてしまう。
「ふむ」
ルシアンは、顎に手を当てて考え込む。
「やはり、基礎がなっていないね」
「す、すみません」
「謝る必要はない。ただ、このままでは君は落第だ」
ルシアンは、席を立って私の隣に来た。
「だから、私が直接教えてあげよう」
そう言って、彼は私の手を取った。
「っ、ルシアン先生!?」
「魔法は、魔力の流れが重要だ。こうして」
彼の手が、私の手を包む。温かい。
そして、魔力が流れ込んでくる。
「感じるかい?魔力の流れを」
「は、い」
「いい子だ」
耳元で囁かれて、心臓が跳ねる。
な、何この距離。
「君は、素直だね。教え甲斐がある」
ルシアンの声が、妙に優しい。
「これから毎日、こうして教えてあげよう」
「え、毎日!?」
「当然だろう?君を落第させるわけにはいかない」
そう言って、ルシアンは私の頭を撫でた。
「どうした?顔が赤いぞ」
「な、何でもないです!」
ルシアンは、くすくすと笑う。
「可愛いね、君は」
からかわれてる。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
それから毎日、放課後はルシアンとの個人指導になった。
最初は緊張していたけど、徐々に慣れてきた。
ルシアンは確かに毒舌だけど、教え方は丁寧だった。
そして、時々、優しかった。
「今日はよくできたね。褒めてあげよう」
「あ、ありがとうございます」
「ご褒美に、何か欲しいものはあるかい?」
「え?」
「君が頑張ったからね。何でも言いたまえ」
何でも、と言われても。
「じゃあ、先生の、名前で呼んでもいいですか?」
「ほう?」
ルシアンは、少し驚いた顔をした。
「私だけ、ルシアン先生じゃなくて、ルシアン、さん、って」
「面白い願いだね」
彼は、ニヤリと笑った。
「いいだろう。ただし、二人きりの時だけだ」
「はい!」
「では、呼んでみたまえ」
「ルシアン、さん」
「うん、いい響きだ」
彼は満足そうに頷いた。
「では、私も君を、リディア、と呼ぼう」
その声は、いつもより甘く聞こえた。
そして、私は気づいていなかった。
これが、彼の「罠」の始まりだということを。




