【ガブリエル・レイヴン ルート】第1話
出会いから数日後。
「リディア!」
中庭を歩いていると、後ろから大きな声で呼ばれた。
振り返ると、ガブリエルが駆け寄ってくる。
「お、おはようございます、ガブリエルさん」
「ああ、おはよう!」
彼は満面の笑みで、私の隣に並んだ。
「なあ、今日の午後、訓練場来ないか?」
「訓練場ですか?」
「ああ!お前に、俺の剣技を見せたくてさ!」
何その理由。
でも、断る理由もない。
それに、ガブリエルの笑顔は、なんだか断れない。
「わかりました」
「本当か!?」
ガブリエルの顔が、さらに明るくなる。
「じゃあ、絶対来いよ!待ってるからな!」
そう言って、彼は嬉しそうに去っていった。
午後、訓練場へ向かうと、ガブリエルが、一人で剣を振るっていた。
その動きは、力強く、でも美しい。
一振り一振りに、迷いがない。
「すごい」
思わず呟くと、ガブリエルが気づいた。
「リディア!来てくれたのか!」
汗を拭いながら、駆け寄ってくる。
「ああ、見ててくれたんだな! どうだった?」
「とても、強そうでした」
「だろ! 俺、騎士団でも上位なんだぜ!」
得意げに笑うガブリエル。
その姿は、どこか少年のようで。
「なんで、私に見せたかったんですか?」
ふと、疑問が口をついた。
ガブリエルは、少し驚いた顔をして、それから、真剣な表情になった。
「俺は、お前を守りたいんだ」
「え?」
「初めて会った時から、思ってた。この人を、守らなきゃって」
彼の真っ直ぐな瞳が、私を見つめる。
「理由は、わかんねえ。でも、お前が誰かに傷つけられるとこ、想像しただけで胸が苦しくなる」
「ガブリエルさん」
「だから、俺の強さを見せたかった。お前を守れるって、証明したかった」
彼は、私の手を取った。
「リディア。俺を、お前の騎士にさせてくれ」
その言葉は、真剣で、熱くて。
私は、頷いていた。
「はい」
ガブリエルは、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう!絶対、お前を守るからな!」
でも、その時の私は、まだ知らなかった。
彼の「守る」という言葉の重さを。
そして、その守りが、いつか私を、縛ることになるとは。
その夜、寮に戻ろうとすると。
「待て、リディア」
ガブリエルが、また現れた。
「ど、どうしたんですか?」
「寮まで送る」
「え、でも男子寮と女子寮、逆方向ですよね?」
「関係ねえ。お前の安全が最優先だ」
いや、でも。
結局、ガブリエルに寮まで送られた。
「じゃあな!また明日!」
「は、はい」
部屋に入って、窓から外を見ると、ガブリエルが、まだそこにいた。
私と目が合うと、手を振る。
まさか、ずっといるつもり。
そして、その予感は当たった。
翌朝、窓から外を見ると、ガブリエルが、寮の前で立っていた。
一睡もしていないような顔で、でも笑顔で。
この人、本気だ。
私の新しい日常が、始まった。




