【アレクシス・エルデンハート ルート】第1話
出会いから数日後。
「リディア、今日は私と共に過ごせ」
朝、教室に入った瞬間、アレクシスが私の手首を掴んだ。
「え、でも今日は授業が」
「休講にさせた」
またか。
アレクシスは有無を言わさず、私を連れて王太子専用の離れへと向かう。
豪華な調度品に囲まれた部屋。
外からは誰も入れない、完全な二人きりの空間。
「座れ」
ソファに座らされ、アレクシスが隣、ではなく、異常に近い距離に座る。
「あ、アレクシス様、近いです」
「婚約者だ。問題ない」
彼の深紅の瞳が、じっと私を見つめる。
「なぜ、お前は私から逃げる?」
「逃げてなんか」
「嘘をつくな」
彼の手が、私の頬に触れる。
冷たい手。
でも、その目には熱があった。
「お前は、入学初日から私を避けている。なぜだ」
そりゃ、破滅フラグ回避のためだけど。
「お前が他の男たちと話しているのを見ると」
アレクシスの手に、力が込められる。
「殺意が湧く」
彼は本気だ。笑っていない。
「特に、レイヴン。あの騎士、お前の隣で笑っていたな」
「ガブリエルさんは、ただの」
「『さん』?」
アレクシスの目が、細められる。
「私には様をつけて、あの平民騎士には『さん』か」
怖い。
「お前は私のものだ、リディア。それを、理解させる必要があるようだな」
そう言って、アレクシスは私を抱き寄せた。
「っ、アレクシス様!?」
「もう逃がさない。お前は、ずっと私の側にいろ」
耳元で囁かれる声。
それは、命令ではなく、懇願にも聞こえた。
「私は、お前なしでは、もう生きられない」
その言葉に、私の心臓が跳ねる。
これって、本気で、私に。
アレクシスは顔を上げ、私の目を見つめた。
「毎日、お前と共に過ごす。朝も、昼も、夜も。いいな?」
それは質問の形をした、命令だった。
私は、震える声で答えた。
「はい」
アレクシスは、初めて、ほんの少しだけ、微笑んだ。
「いい子だ」
でも、その笑顔の奥に、何か危険なものが見えた気がした。
私、大丈夫なのかな。
不安と、でも少しだけ、嬉しさが、胸の中で混ざり合っていた。




