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私、悪役令嬢なのに攻略対象に溺愛されています!? 〜乙女ゲーム世界で5人の王子様に囲まれる日々〜  作者: 恋咲ロマンティカ


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プロローグ

平凡な終わりと、新しい始まり


雨が窓を叩く音が、やけに大きく聞こえる夜だった。

私は今日も残業を終え、誰もいないオフィスで一人、ぼんやりとパソコンの画面を眺めていた。

28歳、独身、彼氏なし。

特別不幸なわけでもないし、かといって幸せというわけでもない。

可もなく不可もない、そんな人生。


「……はあ」


思わず溜息が漏れる。

学生時代はそこそこ勉強して、そこそこの大学に入って、そこそこの会社に就職した。

友達もいるし、仕事も嫌いじゃない。

でも、心のどこかでいつも思っていた。


「もっと何か、できたんじゃないかな」


叶えたい夢があったわけじゃない。

なりたい職業があったわけでもない。

ただ漠然と、「このままでいいのかな」という不安だけが、胸の奥でくすぶり続けていた。


スマホを手に取る。

SNSを開けば、友人たちの幸せそうな投稿が並んでいる。

結婚、出産、昇進。

みんな前に進んでいる。

私は、何をしているんだろう。


「……もう帰ろ」


重い腰を上げて、オフィスを後にする。

傘を差して駅へと向かう道すがら、コンビニの前を通りかかった。


ふと、店内のゲームコーナーが目に入る。


『エルデンハート・アカデミア 完全版』


派手なパッケージに、美麗なイラストの男性キャラクターたちが描かれている。

乙女ゲームだ。

学生時代、友達に勧められてプレイしたことがある。


「懐かしいな……」


なんとなく手に取って、レジへ向かった。

どうせ今夜も一人だ。

昔を思い出すのも、悪くない。


部屋に帰って、すぐにゲームを起動した。

久しぶりに見るオープニング映像。

王立魔法学園を舞台に、主人公が5人の魅力的な男性キャラクターと恋に落ちる物語。

そして、彼女たちの前に立ちはだかる悪役令嬢、リディア・ヴァンフェルト。


「そういえば、このリディアって最後、国外追放されるんだよね……」


プライドが高く、主人公をいじめ、最終的には婚約者である王太子に捨てられる。

典型的な悪役令嬢だ。

画面の中で、金色の髪と碧眼の美しい令嬢が、高圧的な笑みを浮かべている。


「まあ、自業自得だよね」


そう呟いて、私はゲームを進めようとした。

その時だった。

突然、視界が真っ白になる。


「え……?」


体が浮くような感覚。意識が遠のいていく。


(何これ……まさか、過労……?)


最後に頭をよぎったのは、そんな現実的な心配だった。



目を覚ましたとき、私は知らない天井を見上げていた。


「……ここ、どこ?」


起き上がろうとして、違和感に気づく。

体が、軽い。そして、髪が視界に入る。


金色の、長い髪。


「え……?」 


慌てて周りを見渡す。

豪華な装飾が施された部屋。

大きな鏡が目に入り、私は吸い寄せられるようにその前に立った。

鏡に映っていたのは、見知らぬ少女。

いや、違う。

見知っている。

金髪碧眼、高慢そうな美貌。

さっきまでゲーム画面で見ていた、あの悪役令嬢——


「リディア・ヴァンフェルト……?」


まさか。

でも、目の前の現実を否定することはできなかった。

私は、『エルデンハート・アカデミア』の悪役令嬢に、転生してしまったのだ。


それから数日間、私——

いや、リディアとなった私は、この状況を理解しようと必死だった。

ゲームの知識が次々と蘇る。

リディアは公爵令嬢で、王太子アレクシスの婚約者。

しかし物語が進むにつれて、主人公をいじめ、最終的には婚約破棄され、国外追放される。


「絶対に嫌だ……!」


この世界で生きていくしかないなら、せめて破滅だけは避けたい。

幸い、今はまだ物語の序盤。学園に入学する前だ。つまり、まだ主人公とも、攻略対象の男性たちとも出会っていない。


「よし、なら方針は決まった」


悪役令嬢としてではなく、普通に生きよう。

主人公の邪魔はしない。

攻略対象たちにも関わらない。

そうすれば、破滅フラグは避けられるはずだ。

そう決意した私は、鏡の中の自分に向かって、力強く頷いた。

でも、このとき私はまだ知らなかった。

この世界の「ルール」が、私の知っているゲームとは、少し——

いや、大きく違うということを。

そして、運命の歯車は既に、静かに動き始めていたのだ。



第一章:学園生活の始まり 

入学式

エルデンハート王立魔法学園。

この国で最も権威ある教育機関であり、貴族や王族の子弟が通う名門校だ。広大な敷地には荘厳な校舎が立ち並び、魔法陣が刻まれた石畳が美しく輝いている。

入学式の日、私——

リディア・ヴァンフェルトは、馬車から降り立った。


「リディア様、お気をつけて」


侍女が手を差し伸べてくれる。


「ありがとう、大丈夫よ」


できるだけ柔らかく微笑む。

元のリディアなら、きっと横柄な態度を取っていたはずだ。でも私は違う。

破滅フラグは絶対に立てない。

周囲の視線が集まる。


「あれが、ヴァンフェルト公爵令嬢……」


「王太子殿下の婚約者よね」


「美しい方だわ……」


ひそひそと囁く声が聞こえる。

リディアは有名人なのだ。良くも悪くも。


(目立たないようにしないと……)


そう思いながら、校舎へと向かおうとした瞬間——


「リディア」


低く、よく通る声が背後から響いた。

振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。

銀髪に深紅の瞳。

整った顔立ちに、感情を感じさせない冷たい表情。華麗な王族の制服を纏い、その場の空気を支配するような威圧感。


アレクシス・エルデンハート。


この国の第一王太子にして、ゲームの攻略対象の一人。そして——


「婚約者として、一緒に入場する。当然だろう?」


私の、婚約者。


「あ、はい……」


心臓が跳ねる。

ゲームで見るより遥かに、存在感が強い。

アレクシスは私の返事も待たず、すっと手を差し出した。エスコートを求めているのだと理解するのに、数秒かかった。


「……失礼します」


恐る恐る、その手に自分の手を重ねる。

瞬間、アレクシスの指が、私の手を強く握った。


「っ……!」


「逃げるな、リディア」


顔を上げると、彼の深紅の瞳が、私を見下ろしていた。

その目には、何か——

理解できない感情が渦巻いていた。


(何……この人、ゲームと雰囲気が違う……)


背筋に冷たいものが走る。

でも、周囲の視線もある。

私はただ、微笑みを保つことしかできなかった。

アレクシスと並んで、入学式会場へと入る。

生徒たちの視線が、一斉に私たちに集まった。


「王太子殿下と、ヴァンフェルト令嬢……」


「お似合いだわ……」


羨望と、少しの嫉妬が混じった視線。

私は、ただ息を潜めていた。


(早く式が終わってくれ……)


そう祈りながら。

入学式が終わり、ようやくアレクシスから解放された。


「ふう……」


控室で一人、大きく息を吐く。


(なんか、ゲームで見たアレクシスと違う気がする……)


ゲームの中では、クールで完璧だけど、主人公には優しい王子様だった。

でもさっきの彼は、何か——

重い。


「まあ、私は関わらないようにするんだし、大丈夫よね」


そう自分に言い聞かせて、教室へと向かおうとした時だった。


「おい、そこの!」


突然、後ろから声をかけられた。

振り返ると、そこには赤い髪の青年が立っていた。

筋肉質な体格に、騎士科の制服。

真っ直ぐな瞳が、私を見つめている。


「え……私?」


「ああ。お前、さっき王太子と一緒にいた令嬢だろ。廊下は走るな、危ないぞ」


「走って……ない、です、けど……」


私はゆっくり歩いていただけなのに。

青年は腕を組んで、少し考え込むような顔をした。


「……そうか。なら、いい」


そして、じっと私を見つめる。 


「……あの」


「ああ、悪い。俺はガブリエル・レイヴン。騎士科だ。よろしくな」


ガブリエル——!?


ゲームの攻略対象、二人目。


(え、もう出会っちゃったの!?)


「……お前、名前は?」


「り、リディア・ヴァンフェルトです……」


「リディア……か。覚えた」


ガブリエルは満足そうに頷くと、その場を去っていった。

私は、呆然とその背中を見送った。


(あれ……おかしいな。ガブリエルって、もっと後で主人公と出会うはずなのに……)


不安がよぎる。

でも、まあ、名前を教えただけだ。

これ以上関わらなければ大丈夫。

そう思い直して、私は教室へと急いだ。



魔法学の授業

午後、最初の授業は魔法学だった。

教室に入ると、既に多くの生徒が席についている。私は目立たないように、後ろの方の席に座った。 


「おい、そこ」


またしても、声をかけられる。

今度は誰だと振り返ると——

長い黒髪に、アンニュイな雰囲気をまとった青年。教師用のローブを纏い、教壇の前に立っている。

ルシアン・ノワール。

魔法学の若き天才教師にして、攻略対象の三人目。


「君、後ろに座るには早すぎるんじゃないか?まだ授業も始まっていないのに、もう諦めているのか?」


皮肉めいた笑みを浮かべて、彼は私を見下ろす。


「い、いえ……!」


「なら、前に来たまえ。リディア・ヴァンフェルト嬢。君のような優秀な家の令嬢なら、前で学ぶべきだろう?」


(うわ、嫌味……!)


でも逆らえない。私は仕方なく、前の席へと移動した。

ルシアンは満足そうに笑うと、授業を始めた。


「では、魔法学の基礎から始めよう……」


彼の講義は、確かに分かりやすかった。

でも、時折私に視線を向けては、意地悪な質問を投げかけてくる。


「リディア嬢、では君はどう思う?」


「え、えっと……」


私が答えに詰まると、彼はくすくすと笑う。


「やはり、見た目だけで中身は空っぽか。美しい花には棘がある、というが……君の場合は棘もないようだね」


(この人、絶対私のこと嫌いだ……!)


周囲の生徒たちがクスクスと笑う。

私は顔を真っ赤にして、下を向くしかなかった。

でも、授業が終わったとき——


「リディア嬢、少し残りたまえ」


ルシアンに呼び止められた。


(え、何……怒られる……?)


恐る恐る教壇に近づくと、彼はニヤリと笑った。


「君、面白いね。もっと君のこと、知りたくなった」


そして、私の顎に指を添える。


「これから、個人指導をしてあげよう。……逃げないでくれよ?」


その声は、甘く、そして——

どこか危険だった。


(やばい、これ絶対フラグ立ってる……!)


私は、震える声で答えた。


「は、はい……」


ルシアンは満足そうに笑うと、私を解放した。

図書館での出会い

放課後、私は図書館に逃げ込んだ。


(もう、何なの今日は……!)


アレクシス、ガブリエル、ルシアン——

ゲームの攻略対象と次々に出会ってしまった。

しかも、なんだか全員、私に興味を持っている気がする。


(おかしい……私、悪役令嬢として嫌われるはずなのに……)


図書館の静けさに、少しだけ心が落ち着く。

本棚の間を歩いていると、ふと、美しいピアノの音色が聞こえてきた。


(図書館にピアノ……?)


音の方へ近づくと、図書館の奥、小さな音楽室のような空間があった。

そこで一人、ピアノを弾く青年がいた。

銀髪に青い瞳。

華奢な体つきに、中性的な美貌。

儚げな雰囲気が、彼を包んでいる。


セラフィム・アルテミス。


宮廷音楽家にして、攻略対象の四人目——

彼は、私に気づくと、ぴたりと演奏を止めた。


「……ごめんなさい、邪魔しちゃって」


「いえ……」


セラフィムは小さく首を振った。


「……あなたは?」


「リディア・ヴァンフェルトです」


「……リディア」


彼は私の名前を、まるで祈るように呟いた。

そして——


「……美しい、名前」


「え……?」


「あなたの、音が……聞こえる」


セラフィムは、じっと私を見つめた。


「あなたの心の音。それは……とても、綺麗」


何を言っているのか、分からなかった。

でも、彼の瞳は、まるで私の全てを見透かしているようで——


「……また、会えますか?」


「え、ええ……」


セラフィムは、ほんの少しだけ、微笑んだ。

そして再び、ピアノを弾き始めた。

私は、その音色に包まれながら、静かに図書館を後にした。



中庭での遭遇

夕暮れ時、私は中庭を歩いていた。

今日一日で、攻略対象の四人と出会ってしまった。


(もう一人、ヴィクターってキャラがいたはず……)


侯爵家の次男で、献身的な性格。

ゲームでは、主人公に一途に尽くす王子様タイプだった。


(まあ、彼とは会わないかもしれないし……)


そう思った瞬間——


「あの、すみません!」


突然、後ろから声をかけられた。

振り返ると、金髪碧眼の、端正な顔立ちの青年が立っていた。


「落とし物ですよ」


彼は、ハンカチを差し出してくる。


「え……私の?」


「はい。さっき、廊下で落とされていたのを見かけたので」


確かに、私のハンカチだ。


「ありがとうございます……」


「いえ。……あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」


「リディア・ヴァンフェルトです」


「リディア様……」


青年は、まるで宝物を見るような目で、私を見つめた。


「僕は、ヴィクター・エステルと申します。侯爵家の次男で……」


ヴィクター——!?

攻略対象、五人目……!


(全員と会っちゃった……!)


「もしよければ、これからもお会いできたら嬉しいです。何かお困りのことがあれば、何でも仰ってください。僕は、リディア様のお役に立ちたいんです」


その言葉は、純粋で、真っ直ぐで——

でも、どこか、危うかった。


「あ、ありがとう……ございます」


ヴィクターは、柔らかく微笑んだ。


「では、また」


彼は優雅に一礼すると、去っていった。

私は、その場に立ち尽くした。


(どうしよう……)


攻略対象、全員と出会ってしまった。

しかも、全員が私に興味を持っている。

ゲームの知識では、彼らは主人公に恋をするはずだった。

でも、この世界では——

何かが、狂っている。

夕陽が、私の影を長く伸ばしていた。



数日後の朝

入学から一週間が経った。

私、リディア・ヴァンフェルトの日常は、予想外の方向に進んでいた。


「リディア、今日の昼食は一緒に取る。いいな?」


朝、教室に入った瞬間、アレクシスが私の隣に座っていた。


「え、でも王太子殿下は別の……」


「アレクシスと呼べ。婚約者だろう」


有無を言わさぬ口調。周囲の生徒たちが、羨望と嫉妬の視線を向けてくる。


「は、はい……アレクシス、様」


「様も不要だ」


(無理を言う……!)


アレクシスは満足そうに頷くと、私の手を取った。


「授業が終わるまで、ここにいる」


「え、でもアレクシス……殿下は確か政治学の……」


「休講だ」


絶対嘘だ。

でも、彼の深紅の瞳が私を見つめていて、何も言えなくなる。

昼休み、アレクシスに連れられて学食に向かおうとすると——


「リディア!」


ガブリエルが駆け寄ってきた。


「今日の昼飯、一緒に食おうって約束しただろ!」


「え、してない、です、けど……」


「したはずだ!俺、覚えてる!」


絶対してない。

アレクシスが、冷たい視線をガブリエルに向ける。


「レイヴン。リディアは私と食事をする」


「は?何言ってんだ、お前。リディアは俺と……」


「私の婚約者だ」


「婚約なんて、ただの政略だろ!リディアの気持ちは聞いたのか!?」


二人の間に、火花が散る。


(え、ちょっと、私を巡って喧嘩……!?)


「あの、二人とも……」


「リディア、こっちだ」


「いや、リディア、こっち!」


両腕を掴まれて、引っ張られる。


「痛い、です……!」


その時——


「騒がしいな」


低く、冷たい声が響いた。

ルシアンが、呆れたような表情でこちらを見ている。


「教師として注意しよう。廊下で騒ぐな。特に、レイヴン、お前は騎士科だろう。令嬢に乱暴するな」


「し、してねえよ!」


ルシアンは私に近づくと、私の腕をそっと取った。


「リディア嬢、大丈夫かい?」


「は、はい……」


「なら良かった。……ところで、昼休みは空いているかな?個人指導の続きをしたいんだが」


「え、でも今は昼休み……」


「だからこそ、静かに勉強できるだろう?」 


ルシアンは、私の耳元で囁く。


「……それとも、この二人と一緒がいいのかな?」


(どれも嫌だ……!)


結局、三人に囲まれたまま、身動きが取れなくなった私を救ったのは——


「……あの」


小さな声だった。

振り返ると、セラフィムが遠慮がちに立っていた。


「リディアさん……図書館に、一緒に……来ませんか?」


「セラフィム……さん」


「静かな場所で、お話ししたくて……」


その儚げな表情に、思わず頷きそうになった瞬間——


「リディア様!」


明るい声が響いた。

ヴィクターが、トレイいっぱいの料理を持って現れた。


「お昼ご飯、作ってきました!リディア様の好きそうなものを選んでみたんです!」


「え、どうして私の好みを……」


「侍女の方々にお聞きしました!さあ、一緒に食べましょう!」


(ストーカーじゃん……!)


結局、五人全員と中庭で昼食を取ることになった。

私を中心に、五人が囲むような配置。


(何この状況……)


「リディア、これ食べろ。栄養がある」(ガブリエル)


「リディア、口を開けろ。食べさせてやる」(アレクシス)


「リディア嬢、水は足りているかい?」(ルシアン)


「リディアさん……僕が作ったサンドイッチ、どうですか……?」(セラフィム)


「リディア様!デザートもありますよ!」(ヴィクター)


(うるさい……!)


でも、口には出せない。

なぜなら、五人とも、本気の目をしているから。



夜、寮の自室

ようやく一人になれた。

ベッドに倒れ込んで、大きく息を吐く。


(おかしい……絶対おかしい……)


ゲームの知識では、攻略対象たちは主人公に恋をするはずだった。

でも、主人公はまだ学園に来ていない。来週、転入してくるはずだ。

なのに、彼らは全員、私に執着している。


(これって、もしかして……私が主人公のポジションになっちゃってる……?)


でも、私は悪役令嬢のリディアだ。主人公じゃない。


「どうすればいいの……」


その時、窓をノックする音がした。


「!?」


慌てて窓を開けると——

アレクシスが、窓の外に立っていた。


「あ、アレクシス!?どうして!?」


「会いたくなった」


(二階なのに……!)


「だ、駄目です!男性が女子寮に……!」


「婚約者だ。問題ない」


問題しかない。

アレクシスは勝手に部屋に入ってくると、私の手を取った。


「リディア。お前、最近私から逃げているな」


「そ、そんなこと……」


「嘘をつくな」


彼の深紅の瞳が、私を見つめる。


「お前は私のものだ。他の男に囲まれているのを見ると……」


彼の手に、力が込められる。


「……殺したくなる」


「っ……!」


本気だ。

この人、本気で言っている。


「あ、アレクシス……手が、痛い、です……」


はっとした表情で、彼は私の手を離した。


「……すまない」


彼は自分の手を見つめ、そして——


「私は、お前を傷つけたくないのに……でも、お前を他の誰かに取られるくらいなら……」


その言葉の先は、言わなかった。

でも、分かってしまった。

この人の「溺愛」は、既に危険な領域に入っている。

アレクシスは窓から去り際、振り返って言った。


「明日も、私の側にいろ。……命令だ」


翌日から、状況はさらにエスカレートしていった。

ガブリエルは、私の護衛を自称して常に後ろをついてくる。

ルシアンは、個人指導と称して毎日放課後に呼び出す。

セラフィムは、図書館で私を待ち、「一緒にいると、心が落ち着く」と離れない。

ヴィクターは、私の頼んでもいないことを次々と叶えてくれる。しかも、「リディア様のためなら何でもします」と、少し怖い笑顔で。


そして、来週——

主人公が、転入してくる。

私は、選択を迫られることになる。



個別ルート分岐選択肢


あなた(リディア)は、誰と恋に落ちますか?


選択肢1:【アレクシス・エルデンハート ルート】

冷たく、完璧な王太子。

でもあなただけには、狂おしいほどの執着を見せる。

「お前は私のもの。それ以外の選択肢はない」→ 所有と支配の、危険な愛の物語


選択肢2:【ガブリエル・レイヴン ルート】

熱血で不器用な騎士。

あなたを守るためなら、世界を敵に回す。

「お前を守るためなら、俺は何だってする」→ 守護と献身の、まっすぐな愛の物語


選択肢3:【ルシアン・ノワール ルート】

毒舌だけど知的な教師。

あなたを自分好みに「教育」したいと願う。

「君は僕がいないと、何もできないね?」→ 支配と依存の、甘い罠の物語


選択肢4:【ヴィクター・エステル ルート】

献身的で従順な青年。

あなたの願いなら、何でも叶える。

「君のためなら、僕は何でもする。……何でも」→ 奉仕と狂気の、危うい愛の物語


選択肢5:【セラフィム・アルテミス ルート】

優しく繊細な音楽家。

ピアノの旋律に乗せて、二人だけの時間を紡ぐ。

「僕みたいな人間が、君の隣にいてもいいのかな……」→ 共依存と救済の、切ない愛の物語


気になる選択肢の第1話をお読みください。



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