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4章 最後に君は
高校二年のある日、
僕は人混みの街中で、偶然君とすれ違った。
小学生の頃から、僕たちの距離はずっと遠いままだった。
中学でも、ほとんど話すことはなくなり、
気づけば君は僕の世界から消えかけていた。
だからこそ、その日、君の姿を見つけたとき、
胸の奥が強くざわついた。
「……久しぶり」
勇気を出して声をかけた僕に、君は少し驚いた顔をした後、
昔と変わらない真っ直ぐな瞳で笑った。
そして、たったひと言。
「君は、君のままでいいんだよ」
それだけ。
それだけなのに、胸が熱くなった。
軽々しいごめんを嫌った君が、最後に僕に残したのは、
否定ではなく、肯定だった。
あの瞬間、僕は何も言えなかった。
ありがとうも、ごめんなさいも、何ひとつ。
ただ、君の背中が人混みに消えていくのを、立ち尽くしたまま見送った。
――だからこそ、今になって響いている。
君が最後にくれたその言葉が、僕の“大罪”をさらに重くしているんだ。




