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純粋少女と不良少年  作者:
不安 と 黄昏
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49/51

48 好きだってことを







お化け屋敷を前にして、(みね)が俺にしがみついてきた。


「やっぱ、やめようぜ!メリーゴーランドの方がまだいいよっ」

「嫌なら外で待ってればいいだろ」

「1人も嫌なんだよーっ」


駄々こねてる子供かよ。


「もう、強制連行しか手段ないじゃない。永野(ながの)くんは峰くん引きずってて」

「…ぁぃ」


ぐちぐちと言っている峰をずるずると引きずって、中へと入る。

チラッと那子(なこ)を見たら、瞳が爛々(らんらん)と輝き、生き生きした顔をしていた。

ここに来る間に色々と話したら、映画もホラーが好きらしいし、

テレビ番組の特集でも、心霊写真の特集などはかかさず見ているらしい。

正直、意外で驚いた。

まぁ、そんなところも可愛いな。とか思うんだけど……。


「きゃっ……!」


どんっ。と、那子は壁にぶつかったらしい。

いくら暗いと言っても、ぶつかるとは……。


「危なっかしいなぁ」


そう言うと、那子は照れ笑いをした。

俺は息を吸って、


「なぁ、那子」

「なぁに?」


あー、心拍数上昇中。

こういうの照れるんだけど、チャンスは今しかないだろ。


「…手、繋いでおくか?」

「うん。壁に激突しそうだしね」


と、笑顔で言って、手を差し出してきた。

その手を取って、指を絡め、強く握り締めて、握り返されて、少し緩めた。

那子の手は少し、ひやっとして、冷たかった。


―那子と手を繋ぐのって、これが初めてじゃないか?


俺の心臓が早鐘を打つように鳴る。

繋がれた手から那子の手へと、この振動が伝わるんじゃないか、と思いながら握りなおす。







「楽しかったね!」


そう言って喜んでいるのは、那子だけだ。

しかも上機嫌で笑顔。


怖がらせる仕掛けがあっても、那子は平然としていて、驚かなかった。

むしろ、かなり喜んでいたような……。

斎条(さいじょう)だって、驚いてたぞ。

峰は案の定叫び声を上げていたし。

叫び疲れたのか、今はぐったりしている。


「飲み物買ってくるけど、何かいるか?」

「私、カフェオレがいい」

「僕、オレンジジュース」

「後で、代金徴収(ちょうしゅう)するからな」

「私は着いて行きますっ」

「おう、じゃ、行くか」


俺と那子は近くにある自販機に向かった。

本当に近くの、50mほどの所にある自販機なんだけどな。


「アイスも食べるか?」

「んー、飲み物だけでいいかな。とりあえず」

「じゃあ、(おご)ってあげよう。(ちな)みに拒否権はないぜ」

「…お言葉に甘えさせて頂きます」

「じゃ、何がいい?」


那子は自販機を見つめて、悩んでいる。

その間に、俺は自分の分と頼まれた分を買う。


「ココアがいい」


小銭を投入して、那子にボタンを押させる。


「ありがとう」

「どういたしまして」


プルタブを開けようとする那子を見ていたら、固いのか、なかなか開かなかった。


「空けようか?」


那子は俺を見て、ちょっと悔しそうな顔をした。


「お願いします」


缶を渡された。

プロタブを引っ張ると、プシュッと、開いた音がした。


「どうぞ」

「どうも」


那子が一口飲んで、一息ついた。

それを待って、俺は歩き出す。

那子も俺に(なら)って歩き出す。


こんな。

こんな、他愛のないことで胸がいっぱいになる。

きゅっと、胸が締め付けられたと思ったら、ふわっと体が軽くなったような感じ。

好きな人が隣にいて、好きな人が俺を好きでいてくれて。

それがどんなに嬉しくて、頬が(ほころ)んでしまうことなのか。

口元が緩んでしまうことなのか。


―俺は知ってしまった。


「那子」

「んー?」


呼ぶと、彼女は少し顔を上げ、俺を見つめる。

俺は身を(かが)めて、顔を近づけた。


―その瞬間だけ、2人っきりの世界に思えた。


顔を離すと、那子は頬を赤らめていた。

俺は、くすっ、と笑い、


「ココア味」


那子は、はっとして我に返ったかと思うと、更に頬を赤らめた。

耳まで赤い。

驚いたのか、恥ずかしいのか、口をぱくぱくさせて俺に何か言おうとしている。

きっと、こんなところでいきなりキスするな。とかだろう。


「立ち止まってないで、早く来いよ。まだ乗ってないアトラクションもあるんだからさ」

「ぅ……、ま、待ってよ~!」


―どんなに短くても、愛しい、愛しい、大事な君との時間。











やっと更新でございます。

絶対に終わらせておきたいので、今月中に終わらせたいけど、

終わるかどうか……!

終わるまで、また、終わっても、この作品を楽しんでくだされば幸いです。

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