42 順風満帆。順調、順調
冬休みが終わり、新学期が始まった。
那子とは順調に、お付き合いをさせて頂いております。
まだ二週間しか経ってないんだけどな……。
「聖君、帰ろー」
「ん」
「ちょっと待てー」
今日も一緒に帰ろうとしていた矢先に、奴に呼び止められた。
「…何だよ、峰」
「那子ちゃーん、ちょっとコイツ借りるわー」
「わかったー」
俺達はこそこそと教室の隅で耳打ちするように話す。
話があるなら、休み時間にでも話せばいいものを……。
「何だよ?」
「お前さー、那子ちゃんとはどこまで進んだんだよ?」
「聞いて驚け、キスまでだ」
それも、付き合う前に不意打ちされたキスのことだ。
もう、あれから数ヶ月は経っている。
付き合ってからは、実はしていない。
付き合い始めたのは、約二週間ぐらい前だからな。
「嘘っ、永野君はプレイボーイだと思っていたのに」
「うわっ、斎条!?」
いつの間に隣に来たのか、斎条がいた。
「でも、まぁ、キスぐらいなら、許すわ」
「那子と何かしらするごとに、何故お前に許しを請う必要があるんだ?」
「だって、心配なんだもの。那子のお父様にもお願いされちゃったしね。
そう言えば永野君、お父さんに会ったのよね?」
「あぁ、まぁな」
那子に告白された翌日、那子に呼び出され、那子のお父さんと会ったのだ。
「で、どうだったの?」
「那子から聞いてないのかよ」
「だって、聞いてないもの」
「聞かないんだな……?」
「そんなに不思議なことでもないでしょう?何でもかんでも那子に聞いたりしないわ」
まぁ、それもそうか。と思ったから、那子のお父さんとのことについて話すことになった。
「ただ、何か、簡単な質問をされただけだったぜ?」
「その質問はね、永野君」
「お、おぉ……」
「その人が本当に那子の彼氏に相応しいかテストする為の質問なのよ……!」
「何ぃぃいい!?那子ちゃんのお父さんは、そんなに厳しいのですか!?」
いつの間にか、峰の斎条に対する態度がかなり下手になっている。
しかも敬語かよ。
「特に那子のことになったら、すごいわよ」
「過保護って、わけでもないんですよね?」
「まぁ、奥さんが亡くなってるわけだから、娘を溺愛することは不思議でもないわよね」
「あぁ、そうだな」
「ところで、聖はなんて質問されたんだ?」
「そうだなぁ……」
回想するとしよう。
那子の家に入ったら、リビングに通されて、ソファにはお父さんが座っていた。
挨拶もそこそこに、俺はお父さんの向かいに座った。
「那子は自分の部屋にいなさい」
「うん、わかった」
そして、お父さんは単刀直入に、
「那子のことは好きなのか?」
と、聞いてきた。
だから俺も、正直に答えた。
「はい、勿論です」
「どれくらい?」
「那子の為なら死ねます」
「那子のどこが好きなんだ?」
「全てです」
「デートはしたのか?」
「はい、しました」
「那子とはどこまで進んだ?」
「キスまでです」
「そうか、なら許そう」
「ありがとうございます」
「ところで、君の髪は地毛なのか?」
「いいえ、染めました」
「何で、染めたんだ?」
「従兄に強制的に染められました」
「理由は?」
「高校生になるんだから、これぐらいやっておけ、と言われました」
「染め直さないのか?」
「そうしたら、従兄にまた染められます」
「…そうか。ところで、喧嘩はしているのか?」
「もう、していないです」
「今まではしていたのか?」
「売られたから買っていた、って感じです」
「ところで、那子を幸せにできることが、君にはできるのかな?」
「はい、必ず、那子を幸せにします」
ここら辺で回想終了。
「何だ、それ。那子ちゃん検定か何かかよ」
「会話って言うよりも、何かの面接みたいね」
「仕方ないだろ、緊張してたんだよ」
もう、冷や汗がヤバかったんだからな。
見た目の優しそうな感じとは違うんだからな。
オーラとか雰囲気が怖いんだぞ!
「へぇ、聖でも緊張するんだな」
「…おい、峰。それ、どういう意味だ」
「え?何かマズいこと言ったか?」
「そうして、2人の溝は深まっていった……」
「不吉なモノローグを付けるな、斎条」
でも、その後、何とか那子のお父さんとは和解した形になった。
冬休みが終わらないうちに、また出張先に行っちゃったけど。
「ねーえー、終わったぁ~?」
「あぁ、終わった、終わった」
「あ、待てよ!僕等も一緒に帰るからな!」
「そうよ、抜け駆けなんて酷いじゃない」
「抜け駆けって、別にいいじゃん」
「早く帰ろー」
「はい、はい」
まぁ、こんな感じに那子と、斎条や峰とも、上手くやっているつもりだ。
順調に、荒波荒風立てずに、
「皆と一緒に帰るのって、少ないよね」
「峰は部活やってるし、斎条は稽古があるしな」
「まぁ、帰られる時は一緒に帰りましょうよ」
「滅多にあることじゃないしな!」
「峰にも彼女が出来れば、いいんだけどな~」
「それは嫌味か?嫌味なのか!?」
他愛のない話をしながら。
回想のシーンのモノローグ少ないけど、そっちの方がいいかな?
全体的にもモノローグ少ないけどね。




