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純粋少女と不良少年  作者:
好き と 嫌い
32/51

31 過去の切れ端






文化祭の喧騒も過ぎ、すぐにテスト期間へと突入した。


「わっかんないよ~…。」

「どこが分からないの? 那子ちゃん、俺に言ってごらん。」

「那子に触るな。 下心丸見えなんだよ。」

「お茶入ったけど、緑茶でいいかしら?」


そしてテスト前日、勉強の追い込みとして、斎条邸宅にて勉強会、である。

丁度、休日だからと、那子が提案したものだ。

峰も誘ったけど、バイトだから。と、キャンセルされた。

付き合いの悪いやつだ。


しかし、だ。


「何で耀(よう)がここにいるんだ。」

「ダメ……?」

「可愛い子ぶってんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ。」


耀は首を45度傾けて、上目遣いで口にペンを当てて言った。

可愛くねぇ。

男がやっても可愛くねぇ。

つーか、お前がやるから可愛くねぇ。


「神林先生は私が呼んだんだよ~。」

「那子が?」

「うん。 私、科学苦手だから…。」

「大丈夫だよ、那子ちゃん。 俺が頑張って教えるから!」

「いいのか、それ。 贔屓(ひいき)って言われないよな?」


そんなこと言われたら、那子が迷惑するだろうが。

教師ならちゃんと考えろよな。


「那子ちゃんは特別だということは、聖だって分かるだろう?」

「……まぁ。」

「あなたもあなたよね。」

「お前もだろ。」


斎条は斎条で、那子にベタ惚れじゃねぇか。

デレデレじゃねぇか。


「那子はね、可愛いのよ。」

「知ってる。」

「あなた、那子の幼少時代を知らないでしょう?」

「何っ…!?」


斎条は、那子とはいつから親友なんだ!?

那子の幼少とか、超可愛かったんだろうなぁ。

見たい。

超見たい。


「私の部屋にはアルバムだってあるんだから。」

「くっ…、見たい…。」

「見せるわけ無いでしょう?」

「…………。」

「あなたなんかに見せるわけ無いじゃない。 馬鹿ね。」


悔しい。

すげぇ、負けた気がする。

俺って、こんな斎条に見下されるんだ。

女じゃなかったら、殴ってた。

斎条でよかった。


「でも、那子って成績悪かったっけ?」

「那子はね、ちょっと要領が悪いのよ。」

「解答欄は間違えないんだけど、ちょっとしたケアレスミスがね。 えへへ…。」


えへへ…。って、可愛いなぁ。

リアルに、えへへ…。なんて言わないぞ。

普通は。


「聖君は? どうなの?」

「俺? 別に……。」

「聖も要領悪くてなー。 でも平均並み? 面白味も何もないんだよー。」

「口を開くな。 殴るぞ。」


自慢じゃないが、しかも自慢も出来ないが、いつも平均だ。

成績だけ、何故平均なんだ。

……実は色々と平均しかないのか?

でも、あんまり勉強しなくても、点はそこそこ取れるんだけどな。


「加奈ちゃんは成績いいよね。」

「まぁ、家庭教師もいるし。 親が煩いしね。」

「加奈ちゃんの親、教育家なの?」

「加奈ちゃん、って言わないでください。」

「そんなこと言わないでよ。 昔みたいに〝耀くん〟って呼んでよ。」

「言いませんっ!」


……斎条と耀って、こんなに仲良かったか?


「つーか、〝耀くん〟って、何?」

「前、言っただろ? 言ってなかったかな? 俺と加奈ちゃん親戚なんだよ。」

「そうなんですか?」


俺は大分前に聞いたような気が、しないでも、ない。

いや、ちょっと怪しい。

どうだったかな……。


「昔はよく遊んでやったな~。 家も実際近かったけど、俺が引っ越してからは全然だもんな~。」

「覚えてません。」

「俺の後ろをくっ付いては、〝耀くん、耀くん〟って、言ってたんだぜ?」

「加奈ちゃん可愛い~。」

「那子、違うから! 全然違うから!」


斎条が必死に、那子に弁解している。

彼女とデート中、元カノが現れて、彼女にあの人誰?と、聞かれた彼氏のようだ。


「でも、小学生のとき加奈ちゃん、〝好きな人は年上なんだ〟って嬉しそうに、んぐっ!」

「私が好きだったのは、那子よ! 那子!」


那子が喋っている途中に、斎条が那子の口を塞いだ。

那子が窒息死するじゃねぇか!

早く、手ぇ離せよ!


それに、好きだったのは那子って……。

百合もほどほどにしろよ。


「それより、どこがわかんないの? 私が教えてあげるから!」

「うん…。」







「ありがと~。 お陰でテスト範囲、全部終わったよ~。」

「どう致しまして。 でも、那子ちゃんの為なら、いつだって教えてあげるよ。」

「本当ですか? ありがとうございます。」

「おい、何気に口説いてんじゃねぇよ。」


俺は一発、耀を殴っておいた。

ムカツクものは殴っておく。


「もう暗いから、気をつけてね。」

「うん。 加奈ちゃん、また明日ね~!」

「じゃあな。」

「夜更かしするなよ、加奈ちゃん。」

「しませんっ!」


耀って、斎条に超馴れ馴れしかったのって、子供のとき会ってたからなんだな。

ナンパしてんのかと思ってた。


「聖ー。」

「何だよ。」

「那子ちゃん、送ってってやれよ。」

「…言われなくても、するっつの。」


何だ、こいつ。

プレーボーイの心得でも教えようとしてるのか?

だとすると、気持ち悪いな。


「那子、送ってく。」

「ホント? ありがとう。」


そうしている間に、耀は消えていた。

いつの間にか、消えていた。

音もなく。

忍者か、あいつは。


「明日のテスト、いい点取れればいいな。」

「今日だって頑張ってたんだから、取れるさ。」

「うん。」


那子の点数が良かったのかは、また別の話だ。











ちょっと長いですが、カットするのが面倒だった。

クリスマスなのに、まだこの話…。


聖のクリスマスはまだ来ないです。

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