30.5 勝利の真相
3-A 打ち上げ会場―カラオケにて
「それでは、皆さん。 白桜祭、お疲れさん! 乾杯!」
『カンパーイ!!』
あるカラオケ店の広い一室では、3-Aの生徒と担任が打ち上げをしていた。
その会場と化した部屋では、勝利の宴のように盛り上がっていた。
白桜高等学校、白桜祭優秀賞、3年Aクラス。
全校24クラスの頂点に立ったクラス。
貪欲にも、優秀賞とその賞品の〝食堂のタダ券〟を獲得したクラス。
何よりも、3-Aの生徒を優秀賞へと導いた、神林耀が担任のクラス。
神林耀。
今年、若くして担任を持った人物。
詳しく言えば、始業式早々、3-Aの担任が事故に巻き込まれ入院中、
臨時担任になったが、周囲からはその業績を称えられ〝担任〟だと認められている。
神林先生が担任じゃなきゃイヤ!と、女子生徒が言うぐらいの人物である。
備考欄には、〝イケメン〟と表記されている。
しかし、何故、神林耀が3-Aを優秀賞、否、勝利へと導いたのか…。
神林耀の、白桜祭武勇伝はLHRへと遡る。
この時間は白桜祭の出し物を決めるためのものだった。
中々、案が固まらなたかった3-Aに鶴の一声が……。
「俺、キャバクラやってほしいなー。 ついでにホストクラブも作っちゃえば?」
そう、この一言が、3-Aを優秀賞へと導いたのだった―…。
しかし、この案がよく通ったものだ。
考案した本人曰く。
「女子がいればそれなりに儲かる」
…だ、そうだ。
それはどういう意味なのかは闇の中だが、それなりに考えがあっての案なのは事実らしい。
「いや、ただ俺はハーレムを作り上げようと……」
…などと、浮ついた虚言は聞こえなかったことにしよう。
神林耀の助言は、作業中にも及び、生徒達の士気も上がりに上がった。
そして当日には、教師や多くの生徒が足を運ぶことになった。
何も問題もなく、商売繁盛した3-Aは優秀賞になったわけだ。
クラスの白桜祭実行委員長は、壇上でこう言った。
「全部、神林先生のお陰っす!」
そんな彼、否彼ら3-Aに、神林耀は一言。
「いや、君達の頑張りあっての、賞だよ。」
と。
その一言に3-Aの生徒達は涙し、教師達は感動し、
更には全校生徒が悔しさを忘れたかのように、激励した。
そうだ。
「嘘だ。」
「本当だって。」
「嘘だ。」
「お前も聞いていただろう。 神林先生の、あの感動的な一言を。」
場所は神林宅のリビング。
ソファの上で、聖は仏頂面、耀はにやにやしたような笑みを浮かべていた。
「俺は信じない。」
「本当です。 そうじゃなきゃ、あの感動はない。」
神林耀の武勇伝を、聖は信じないの一点張り。
そんな聖を耀は眺めている、そんな図だ。
「お前は、ホストみたいだな。 キザな言葉を並べて、馬鹿な女を口説くんだ。」
「そんなことはしない。 俺は紳士的に女性を落とすよ。」
「似非紳士」
「不良」
「へたれ」
「野良猫」
会話は悪口へと変わっていき、最終的にはただの口喧嘩になっていった。
しかし、これが3-Aの勝利の真相である。
短く乏しい説明だったが、何とか理解して欲しい。
悩んだ末、こうなった。




