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純粋少女と不良少年  作者:
出会い と 繋がり
3/51

03 スキ、キス、スキ。







唇が触れる。


「ッ……!」


顔が熱い。

思わず手で顔を(おお)ってしまう。


「顔、赤い……」

「いま、な、なにをっ……!」

「俺への詫びだろ」

「なん、で……?」


分からない。

あんな理由でキスなんてできるの?

目的は一体、何!?



「好きだから」

「……ぇ」

「キライな奴にキスはしない」

「そ、れ……って?」


更に顔が赤くなる。

頭が上手く回らない。

頭が真っ白になる。


「でも……」

「不満?」


イヤじゃない。

キライじゃない。


腕で顔を隠しているけど、永野(ながの)君も顔が赤くなっている。

照れ隠しなの、かな?


「これ、俺の一世一代の告白なんだけど」

「……でも、なんで、私?」

「憶えてないのか?図書室で会った時のこと」

「図書室?」


私は全然、憶えていなかった。

人の顔を覚えるのも苦手だから、尚更…。


「図書室でお前に本、(すす)められた上、夕方まで読まされた」

「……本?」


あ、()っすらと…。

確か、入学して少し日が過ぎた頃だ。


「俺、お前の影響で読書するようになったんだ」

「そうなの?」

「しかも、(ほとん)どお前が読んでた本」


私が読んだ本…って、ファンタジー系とか学園モノとか恋愛系が多いけど……。

結構、乙女路線じゃなかったっけ?


流石(さすが)に、恋愛系とかは無理だけど……。SF系の本とかは、お前が先に借りた本ばっかり」

「……本当に?」

「本当だよ」


不良と言われている人が、私と同じ本を読んでいたなんて、ちょっと衝撃だ。


「……でも、永野君って、不良なんでしょ?」

「……不良?」


永野君は〝不良〟と言われるのが心外だ。とでも言うかのように、怪訝(けげん)そうな顔をした。


「だって加奈ちゃんが……」

「喧嘩売られてるだけだ。怪我するのも嫌だし、相手に鳩尾(みぞおち)とか食らわせるだけ」

「不良じゃないんだ……?」

「俺、目付き悪いから、不良だ。……って思われるんだろうな。」


じゃあ、皆の勘違い……?

まぁ、私もちょっとはそう、思ってたんだけど。


「5月に学校来て無かったっていうのは……?」

「事故に遭った。一ヶ月も入院してたんだ」


そう言って、永野君は自嘲気味に笑った。


何か、大分誤解のある人だな。

〝ずっと停学〟って言われてたけど……。


「話逸れたけど、返事は?」

「……えっ!?ぁ、私、あの……。」


突然、そう言われて、(あせ)って、どもってしまった。

永野君がそう思ってくれていたとは、露ほども知らなかったし。


「今じゃなくても、いいから……」


永野君はそう言ってくれたけど、私は永野君が求めているような答えは、今は出せない。

だけど、伝えたいことは言っておこうと思った。


―だって、こんなに素敵な人なんだもの!


えぇ、つまり、惚れてしまいました。

この人に、きっと、そうです。


「私、まだ永野君のこと、全然わからない」


永野君は黙って、私の話を聞いてくれている。


「だけど、永野君のこと、もっと知りたい。……って、思ったの」

「うん」

「だから、永野君には、まだ応えられない」


私がそう言うと、永野君は頷いた。


「だろうな。 話したのなんて、まだ2回だし」

「ごめんなさい……」

「お前が謝る事ないだろ」


永野君は私に優しく言ってくれた。

優しすぎるぐらい…。


「私ね、永野君のこと、もっと知りたいの。だから、友達からじゃ、ダメかな?」

「……友達から?」

「うん」


永野君は一瞬、考え込むように目を伏せた。


「わかった。友達から、な。」


その言葉を聞いてから、私の目が少し光った。


「それから、永野君、読書好きだよね?」

「まぁ……。」

「だったら、読書クラブに入らない?」


拍子(ひょうし)抜けしたのか、永野君は目を見開いた。

きょとん……、としてて、ちょっと可愛い……。


「そんなの、あるのか?」

「あるよ!私と加奈ちゃんしかいないんだけどね。

 放課後、図書室に集まって好きな本のこととか、語ったりするの」

「………楽しい、のか?」

「私は楽しいよ!永野君も入ろうよ!」

「じゃあ、入ろ……」

「本当に?やったぁ!」


永野君が答えるより早く、私が突然、声を出したので、永野君は驚いていた。

内心、私は心が(はず)んでいた。


「加奈ちゃんと2人だったから、もう一人ぐらい増えないかなって思ってたの!」

「俺がいても、大丈夫なのか?」

「大歓迎だよ!読書仲間が増えるの、とっても嬉しいから!」

「そうか……」


そんな、ほのぼのとした空気も(つか)の間だった。


バンッ!


新たな人物が現れてからは、殺伐(さつばつ)とした雰囲気が漂っている。


「那子!?」

「加奈ちゃん!?」


私の名前を呼んだのは、加奈ちゃんだった。

私は条件反射で叫んでしまった……。


「なっ……!?あんた、ちょっと!永野聖!何であんたが那子といるのよ!?」

「何でって、那子が好きだから。」


この永野君の発言から、更に誤解と怒りを生むことになってしまいました。











1話1話の内容が長いとのことなので、短くしてみました。

区切るところ、間違っていないか心配です…。

これ、短編小説用に書いたモノなので、結構長かったんだなぁ。と、

自分でもやっと自覚したところです。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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