29 後夜祭
峰の粋な計らいで、俺は那子を誘った。
そして、場所は図書室。
何故、図書室なのか。
それは…―
「まさか、聖君が人酔いするなんて思わなかったよ~。」
「…ごめん。」
「私は大丈夫だよ? 一通り回ったし。」
俺が人酔いして、緊急避難所、もとい、偶然近くにあった図書室に人の波から脱出したわけだ。
「ホント、ごめん……」
「もう、謝んないでよ~、大丈夫だから!」
情けない。
男として、情けない。
「でも、白桜祭も終わりだね。」
「…そうだな。」
「何か、買ってくる?」
「や、大丈夫……。」
そんな素っ気無い返事をして、窓の外を見やる。
ここはグラウンドがよく見えるから、ちょっとした穴場だ。
今は、リサイタルやらバンドやらで盛り上がってるらしい。
「そういえば、神林先生がね、実験発表してたんだよ!」
「あー、そういや、何かやるって言ってたな…。」
「3日間、色々な実験をやっててね、面白かったよ~!」
「そっか…。」
「…聖君、まだ、具合悪い?」
「ちょっと…。」
また、素っ気無い返事しか返せなかった。
那子はちょっと暇そうに、マジックショーを見物している。
「流石に疲れちゃったね~、クラスの。」
「確かに。 ハードスケジュールだった…。」
「とりあえず、トラブルも何もなくて、よかったよ~。」
俺は那子に何もなくてよかったよ。
ナンパとかされなくて……。
「ねぇねぇ、後夜祭はどうするの?」
「グラウンドでキャンプファイヤーだろ?」
廃材をグラウンドで燃やしてキャンプファイヤーってのは、法律で大丈夫なのか?
ギリギリ危ないと思うのだが……。
「それから、キャンプファイヤーの周りで、ダンス踊るんでしょ?」
「……そう、だった、か?」
「そうだよぉ。 加奈ちゃん、言ってたもん。」
「俺、踊れないし。」
「適当に回ってればいいんだよ!」
適当!?
いいのか、それで!?
それで、踊ったことにはならないと思うのだが、どうなんだろう。
「まぁ、まだだろ、ダンスは。」
「そう? もう、そろそろだよ?」
「…マジで?」
「うん。」
那子は、輝きをたたえた瞳で、俺を見る。
そんな瞳をされたら、俺は那子とShall we dance?
…と、言わなければいけない気がしてくるじゃないかっ!
「嫌なら、いいけど…。」
那子の言葉に、俺は何を思ったのか、
外の喧騒を耳にしながらも、俺は立ち上がる。
その勢いで、目の前の那子の腰へと、自分の手を回して、体を引き寄せる。
「えっ…!」
驚いた那子の顔が目の前にある。
外では、司会らしき声と、なだらかな曲が聞こえてくる。
多分、キャンプファイヤーの周りに集まって、下手なステップでも披露していることだろう。
「な、何…?」
「何って、踊るんだろ?」
行き場を失っていた那子の手が、俺の手を取り、片方の手が背中に回される。
「聖君、ヘタ~」
「仕方ないだろ! 那子だって、出来てねぇじゃんか!」
「えぇっ!? ひどいよぉ!」
そうしている内に、曲も終わりに近いてきた。
「那子」
「何?」
「……好きだ」
「…私も。」
聖と那子がイチャコラしている時だった。
「呼びにきたっていうのに、あのカップルめ…。」
図書室の戸の前には、一人の人物がいた。
「あ~ぁ~、僕も彼女の1人や2人、作るかな~。」
峰は一人、またグラウンドへと向かいながら、呟いた。
取りあえず、いちゃいちゃしてるのが書きたかった…!
最後の方がぐだぐだなのは、気にしない。




