27 白桜祭
一方、最終調整に取り掛かっている厨房では…。
「ぅーしっ! 皆、頑張るぞー!」
と、言いながら、峰は周りの級友と騒いでいた。
「お前ら、いい加減手伝えよ。 厨房とか」
「聖、そんな固いこと言うな。 これも青春の1ページだぁっ!」
「張り切るトコ、違うだろーが」
級友と張り切っているが、周りとは思いっきり温度差が違う。
目の前の作業には、目もくれていなかった。
聖は溜息を吐きながら、さっきまでは、あんなに活気があったのにな。と思っていた。
「ま、心配しなくても、9時ンなったら本気出すよ」
「…最終調整ぐらい、手伝えよ」
「あぁ、厨房めっちゃテンパってるよな~。 アッハハハ~☆」
「笑ってる場合じゃないだろ」
「じゃ、実行委員長は手助けしに行ってくるよ。 仕方なしにね~」
「それがお前の仕事だっつーの」
手をひらひら振って、峰は厨房に消え去った。
―峰のこういう姿を見る限り、悩みを抱えているなんて、思えないよな…。
『いよいよ、白桜祭が始まります。 3日間、生徒の皆さんは頑張ってください。』
生徒会が白桜祭、開始の短いアナウンスの後、様々なBGMがメドレーのように流れた。
選曲は誰の趣味か、あるいは生徒会各々の好みか、それらの曲が校内では浮いていた。
「いらっしゃいませー!」
BGMがけたたましく流れる中、〝喫茶 ONOGUCHI〟も開店した。
「3名様、ごあんな~い!」
「至急! ティーセット追加!」
「早く、これ持っていけ!」
「お待たせしました~!」
1-Cは既に、喧騒の波にのまれた。
厨房にいる人やウェイトレスなどは、慌しく動いている。
聖と峰は最初のタイムスケジュールは非番だったが、売れ行きが気になり、レジ近くで確認している。
那子も加奈も宣伝に出向いていた。
「…すごいな、人が。」
「そりゃーなぁ。 白桜祭は毎年、色んな所から、色んな人が来るんだぜ。 知らないのか?」
「今年、こっちに来たばっかりだからな。」
「地方人?」
「いや、実家はここら辺だけど、従兄の家の方が近かったんだ。」
「そっか。」
そう相槌を打った峰は、何か思い立ったのか、急に聖の腕を掴んできた。
「何っ…!」
「折角だし、白桜祭、満喫しないと損だろ!?」
そして、いきなり走り出した。
「峰っ、ストップ! 止まれ!」
「お客さん、〝みね臨時特急〟は、止まることを知りません!」
「知るかっ!!」
廊下は走るなーっ!という声を聞き流しつつ、2人は走る。
「ここ、ここ!」
「どこ、だって…?」
聖は息も絶え絶えに、吸ったり吐いたりを繰り返している。
峰はそんなことお構いなしに、聖をぐいぐい引っ張る。
「やっぱ、料理部のカフェテラスっしょ~!」
「テラスっつーか、中庭…」
「何も言うな! よし、行こう!」
料理部は様々なところに模擬店などを出している。
メニューは場所によって違うらしく、中庭はチュロス、ベルギーワッフル、クレープなどが各300円で販売してある。
それ相応の値段かは、食べてみないとわからない。
しかし、そんなところでも廻り合わせはあるもので…。
「あ、聖君だ~」
「那子…」
「何だ、あんた達も来てたの」
―これは、もう、運命ではないだろうかっ…!
「爆発しろー」
「何だって…?」
「いや、なんでもない。」
峰が何かを口走ったが、聖は気にしないことにした。
次、もう一度言ったら、どうなるかは分からないが…。
「俺チュロスー。 あ、あのクレープも捨てがたい…。 ワッフルもいいなぁ~。」
「迷うぐらいなら、全部買えよ。」
甘いものには興味がない聖は、急かすように峰に言った。
そんな峰を見て、加奈が一つ提案した。
「皆、それぞれ買って、回し食いすればいいじゃないの。」
「君達っ、間接ちゅーは気にしないのかい…!?」
「子供じゃあるまいし。」
「何それ? お菓子?」
加奈はその点については無関心だが、那子にはそれ以前の問題だった。
見かねた聖は、峰に忠告するように、短い言葉で言う。
「峰」
「何?」
「お前、わかってるよな…?」
「間接ちゅーのこと? 那子ちゃん食べた後、聖がそれを食べれば問題ないのでは…?
あ、これは、もしかして、死亡フラグなの?」
何かを察した峰は、一気に顔を青ざめた。
「わたし、クレープ買って来るね~」
「よし、俺はチュロス! 加奈ちゃんはワッフルよろしく!」
「わかったわ」
「聖は場所確保!」
「……」
寂しいとは、ひとカケラも思ってはいない。
しかし、席を取ろうとして、満席のテーブルに近づくのだが、自分を見て人が逃げていくのは少し空しい、と感じていた聖だった。
そして、数分後、3人は戻ってきた。
「美味しい~」
「だろ? 料理部の作ったものは何でも美味しいんだぜ!?」
「あら、永野君は食べないの?」
「いや、俺、甘いものは…」
苦手だから。と聖が言おうとした時だった。
「私が食べさせてあげるよ! はい、あーん」
峰がその光景を見てニヤニヤ笑い、加奈が恐ろしい感じに髪を逆立てたりする中、聖はいつになく、赤面していた。
もう、それは指先まで。
皆が食べ終わった後、急に峰が騒ぎ出した。
「って、君達! そんなことをしている場合じゃなかった!」
「な、なな何だよ、急に…!」
さっきまでの焦りを隠そうとして、隠し切れていない聖が聞くと、峰が焦りながら答えた。
「次! 俺らの番! 回ってきたの! もう、行かねば!」
「そういえば、皆同じ時間だったわね。」
「え、もう?」
「よし、皆捕まれぇ! 〝みね特急〟は止まりませんぞっ!!」
峰、一人で暴走するなっ!という声を聞き流しつつ、3人は峰の後を追った。
「白桜祭は、まだまだこれからだぞーっ!」
そんな峰の言葉を聞きながら…。
「文化祭」から「白桜祭」に変更しました。
学校名は白桜高校です。
今更ですが(;´∀`)
他の文章も直しておきますので、
誤字・脱字があれば、報告お願いします。
峰って、こんなキャラだったっけ?




