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純粋少女と不良少年  作者:
過去 と 変化
26/51

26 小さなエピソード





白桜祭(はくおうさい)当日


文化祭は、9時の生徒会の放送で始まる。

今は8時25分を過ぎたところだ。


「よしっ! 皆、いるな!?」


1-Cでは、峰を中心にクラスメート達が集っている。

しかし、〝戦闘開始〟と言わんばかりに、峰だけが活気付いている。


「もう一度言う!」


開口一番、峰が毎回口にしていたことを、反芻するかのように言った。


「文化祭の争いは、放送が流れる前から始まっている!

 開店は9時だけど、30分前から宣伝をして、客引きだ!」


と、言うが、周りは生返事を返しただけだった。

それから、峰がクラス全体を活気付けるために、音頭をとった。


「これから3日間、頑張るぞー!」







那子と加奈は、ウェイトレスの服を着て、宣伝用の看板を持ち、廊下を歩いていた。

窓を見ると、既に校舎に入ってくる人達の姿も見える。


「って言われてもね。 私、あぁいうの苦手なのよ。」

「峰君も頑張ってるんだから、そういうこと言わないのー。」

「でも、面倒だなーって思わない?」

「私は、行事とか張り切っちゃう方だからなぁ。」

「那子は偉いもんね~。」


決して嫌味ではないその言葉を、那子も理解したのか、微笑んだ。


「それより、加奈ちゃんの服、ちょっと過激だね…。」


加奈は裾が短く、凹凸が少しはっきりしたワンピース姿の自分を見下ろした。


「あぁ、これね。 あの、神林がやったのよ…。」

「先生が?」


加奈はその時のことを思い出したのか、体をわなわなと震わせた。







それは、加奈が放課後、一人で服を作っていたときだった。

そんな時、ひょっこりと現れたのが、耀だ。


「あれ? 加奈ちゃん何してるのー?」

「話しかけないでください、邪魔です。」

「あ、ウェイトレスの服づくりか! そういえば、喫茶店やるって言ってたなぁ~♪」

「……」


先生を無視するなー。とは言うが、そもそも本人はそんなこと気にしていない。


「どれどれ、その糸の解れを、この俺が直してあげよう!」

「結構です。」


と、加奈は言ったのだが、いつの間にか耀の手には、加奈が持っていた服があった。


「ちょっ…と!」

「だいじょぶ、だいじょぶ~♪」

「か、返してっ!」


立ち上がって手を伸ばすも、空を掴んだだけだった。

そして、さっきまで加奈が座っていたイスに、いつの間にか耀が座っていた。

更に、ミシン台に服を広げ、縫い始めるではないか。

加奈はそんな耀を、戸惑いながら見ていた。


それから数分後…。


「でけたー!!」

「って、ちょっと、何よソレ!」


耀の手によって改造された加奈のコスチュームは、ワンピースの裾が妙に短くなっていた。

心なしか、バスト辺りとウエストがきつくなったのではないかと、心配だ。


「僕は加奈ちゃんのスリーサイズを把握してるから、きっとびったり…、ぐはぁっ!!」


教師として問題発言を口走った時には、耀は左頬を殴られていた。


「何であんたが私のスリーサイズ知ってて、服を勝手に作り変えてるのよ!」

「俺は、女の子を一目見ただけで、スリーサイズが分かってしまう目を持っているのだよ。」


左頬を押さえながら、耀は真顔で瞳を輝かせた。


「…も、もう、帰って!」


加奈はそんな耀に耐え切れず、顔を背けた。

耀は加奈が本気で怒ったと思い、焦って弁解しようとしたのだが、


「あ、ごめっ…。 その、」

「いいから、帰って!!」


その思いも空しく、耀は教室を後にした。

耀がいなくなったと分かった加奈は、その場に座り込んだ。

赤面した顔を、服に埋めて…。



その時のことを思い出すと、顔が赤くなり、発作のように鼓動が速くなる。

このことは誰にも、きっと那子にも言えないことだ。


教師とのちょっとした事件だと、他の人は思うだろうが、加奈にとっては一大事である。

異性と話すだけで、顔が熱くなり、鼓動が速くなることなんて、今までなかったのだから…。

でも、加奈はこの気持ちが何なのか、自覚するのはまだまだ先のことだろう。







「お、ウェイトレスはっけーん!」


前方から、誰かに声をかけられて、加奈は我に返った。

その声の主は、神林 耀だ。


「那子ちゃんは、いつもより可愛いなぁ~。」


いつものように、耀は軽い調子で話しかけるが、加奈は耀を避けるように、後ろに下がる。

そんな加奈に気づいたのか、耀は加奈を見て、言った。


「やっぱりな。」

「…何がですか。」


加奈は耀を睨んだ。

それでも耀は、加奈に近づきながら笑顔で言った。


「僕の仕立てた服の方が、加奈に似合うと思ったんだ♪」


耀は手を振って去っていった。

加奈の頬にキスを残して…。


「~~…っの、阿呆教師!!」


加奈は耀の去っていった方向に向かって、叫んでいた。


「お褒めに預かり光栄ですよ~…っと♪」











加奈と耀の話ですね。

ちょっと長いですが…(;´∀`)


文化祭編は結構、長くなるかも(;´Д`)

嫌だなぁ…(´∀`)アハハ…。

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