21 喧騒の波の中に…
あと数日で白桜祭が始まる―…。
「平和だな、ここは」
「静かだね~」
…と、屋上で休息をとっているのは1組の“バカップル”。
まだ正式に付き合ってはいないとしても、傍から見れば恋人同士である。
那子と聖、2人が白桜祭数日前に何をしているかというと、束の間の休息を取っている最中だ。
因みに、白桜祭とは、彼らが通う〝白桜高校〟の文化祭の名称である。
「でも、もう少しで時間だから手伝いに行かないと…。」
「まだ大丈夫だって。 那子は今までの作業を頑張ってたから、皆が時間をくれたんだ。」
そうだけど…。と言葉を続けようとする那子を聖が止めた。
抱きしめて―…。
「ひ…じり、くん?」
「充 電 中 です」
「そう です か」
聖がロボットのように言うので、那子もつられて片言になってしまった。
「白桜祭の準備で忙しくって、なかなか一緒にいられないだろ?」
「うん」
「だから、今はこれで我慢しておきます」
「うん。 じゃあ、私も」
そう言って、ぎゅう~っと那子からも抱きしめ返した。
その行動に聖の理性が保たれたのも、奇跡と言うべきか…。
今にでも押し倒したいという気持ちを留めたのは、那子の友人―斎条 加奈の存在もあったからだろう。
聖は命拾いしたとでも言っておこうか。
そんなことをした暁には、斎条によって何をされることか…。
最近は役員や係りの仕事で、一緒に帰る日も少ない。
こういった時間は、聖にとって救いというか、癒しである。
しかし、そんなひと時は、予鈴によって終わってしまった。
那子たちのクラスは、文化祭でも定番の喫茶店。
クラスの半分の女子と男子が交代でウェイター、半分は裏方で宣伝したり厨房で慌しく動いたりするという配分である。
勿論というか、那子と斎条はウェイトレスで、聖が裏方。
聖は未だにクラスに溶け込めていない状況なので、そこまで真面目に仕事をしていない。
まぁ、する気もないのだろうが…。
そして、それを咎める人も那子と加奈しかいないので、その状況はあまり変っていない。
「ほぉ? 立派にサボりですか、永野くん」
「…テメェは何でここにいるんだよ、クソ教師」
「あのねぇ、先生に向かってその口の利き方は、一体何なんだ!?」
那子と別れた後も、ずっと屋上にいた聖を見つけたのは、耀だった。
「昼寝中なんで、静かにしててください」
「お前、白桜祭の準備は?」
「他の奴らがやってんだろ。 俺がいても邪魔なだけだし」
「…邪魔? 何で?」
「みんな、俺のこと嫌ってんだよ」
耀は不思議そうな顔で、聖をマジマジと見た。
何で聖のことを嫌っているのか、心底、不思議そうな顔で。
―コイツ、噂とか知らないのか?
聖は訝しげに耀を見ながら、思った。
耀は何か閃いたと言わんばかりに手を叩いた。
「お前、もしかして苛められてんの?」
「…違う」
「ヤメロッ! 〝お前バカじゃねーの?〟って目で見るのはヤメロッ!」
耀は聖からの目線を遮るかのように、両手で顔の前にバリケードを作った。
聖は一つ、溜息を吐いた。
「確かめもしないのに、一人でそう思ってても仕方ないだろーが」
耀は慰めるように言った。
「教室、行ってこいよ。 何か変わるかもしんねーし」
聖は怪訝そうな顔で、耀を凝視した。
またもや、耀は両手でバリケードを作っていた。
「加奈ちゃーんっ、見てみて!」
「できたんだ。 ウェイトレスの服」
那子は加奈がよく見えるように、くるっとその場で回って見せた。
「那子、可愛いよ」
那子は照れくさそうに、えへへ。と笑った。
「加奈ちゃんは?」
「できてるよ」
「見せて、見せて!」
「当日のお楽しみね」
「え~!?」
騒がしい教室の中、ふわふわとした会話をしているのはこの2人だけだった。
他の担当のところでは、指示の声や怒号が飛び交っている。
裏方は調理室の準備や、看板などの小道具づくりなど、切羽詰っているのだろう。
ウェイトレスやウェイターは、自分たちで制服を作らなければいけないので、大変だったりする。
空き教室でミシンをガタガタさせて、こっちはこっちで忙しい。
それぞれの仕事が一段落、あるいは終わったりしたら、他のところを手伝わなければならない。
まだ、準備は終わりそうに無い。
白桜祭まで、あと数日…。
やらなければいけないことは沢山ある。
そんな中、調理室にいる裏方たちに衝撃が走る。
お久しぶりです。
前回の投稿から、丁度4ヶ月がたちました。
私は元気であります。




