表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純粋少女と不良少年  作者:
日常 と 思い出
17/51

17 君は太陽







「あっつ~いぃーよぉ~」

「那子、扇風機を一人で独占しないでよ」

「だって暑いんだもん」


梅雨が明けてすぐ、太陽がギラギラと(まぶ)しく輝いた。

それから一週間か二週間は、とても暑い日が続いている。

今も、太陽が沢山の建物の屋根やアスファルトを照り付けている。

その所為(せい)で、学校の中もサウナのように暑く感じる。


「図書室が、こんなに暑くなるなんて思わなかったわね」

「本当だよね~。図書館ならクーラー効いてて快適だけど~」


那子は暑すぎて、語尾が間()びしている。

那子の親友、斎条(さいじょう)加奈(かな)扇子(せんす)を持ち込み、(あお)いでいる。

そして俺、永井(ながい)(ひじり)はその光景を眺めながら、読書中だ。


「今は図書室のクーラー、使えないのよね」

「ねぇ~?酷いよね?拷問(ごうもん)だよぉ~」


そう、この夏真っ(さか)りだというのに、肝心のクーラーが故障した。

原因は、寿命だろう。

機械も寿命には逆らえないらしい。

代わりに、申し訳程度の扇風機が設置された。


「海にも行きたーいぃ~よぉ~」

「はいはい」

「…今度行くか?海」


俺の言葉に反応したらしい、那子は瞳を輝かせてこちらを向いた。

斎条は疑惑の目でこちらを睨みつけている。

コイツは元々、男を(とりこ)にする美貌(びぼう)がある所為(せい)か、その姿が妙に妖艶(ようえん)である。

俺以外の男はその姿にそそるだろう。

俺以外の男は!


従兄(いとこ)が海に行く予定があるから、連れて行って……」


くれる。と、言い終わらないうちに、那子は言う。


「連れて行ってくだしゃい……!」


興奮状態なのか、最後の言葉に(よう)音が混じった。

それが何処(どこ)か可愛らしい。


「…従兄って、神林先生の事?」

「あぁ、まーな」


聞いてきたのは斎条だ。

斎条は俺の従兄―神林(かんばやし)耀(よう)親戚(しんせき)だから、こっちの事情も聞いているかもしれない。

斎条からそのことについては、特に聞かれていないが、興味が無いだけだろう。


「ねぇ、海には何時(いつ)行くの?」

「確か、夏休みに入ってすぐだった気がする……」

「確か、夏休みに入ってから一週間後だったかしら」

「そうなの!?」

「…何でお前が知ってんだ」

「情報が何故(なぜ)か耳に入ってくるのよね、フフ……」


斎条は奇妙に笑った。

俺はコイツの事はあまり好きではない。

何を考えているのか、全くわからないし、不気味だ。


「まぁ、取り合えず、私の家に来ない?ここよりは、涼しいと思うわよ」

「行きます!」

「永野君は?」

「…俺はいい」


そう答えると、斎条は微笑んだ。

不気味に。


「そう。じゃあ、今日は邪魔者はいないのね」

「お前、俺のこと〝邪魔者〟って言ったか?」

「だって最近、那子と一緒にいられないんですもの」

「…………」


斎条は立ち上がって、那子の手を引いた。


「行こう、那子」

「うん!」


那子は笑顔で答えた。


「聖君、またね!」

「あぁ、またな」


2人が図書室からいなくなると、俺は立ち上がった。

そして、一つの窓に近づいて、開けた。


「……っ」


俺は咄嗟(とっさ)に、目を(すが)めた。

目を眇めたのは(まばゆ)い太陽の所為(せい)だった。

窓からは太陽の光が(つるぎ)のように差し込んでいた。


徐々に慣れ、目を開けると、玄関から元気に飛び出す生徒達。

暑い中、外でランニングをする運動部、外でカメラを手にしている写真部や、

デッサンをしている美術部。

文化部に分類されている(はず)の吹奏楽部が、ランニングしている姿を眺めていた。

吹奏楽部でも、体力づくりをするんだな。


「…眩しいなぁ」


俺は、太陽を直視した。

太陽を直接見ると、目が悪くなる。

…とか、何とか昔に言われたことがある。


「太陽か。…那子みたいだな」


俺は独り言を言うと、自然に笑みが零れた。

何なんだ、俺。

変態だ。って、何も知らない他人に思われそうだな。


でも、那子は太陽みたいに俺を照らしてくれるような存在なんだ。

本当、キラキラ輝いてるような……。


「…海、どうしようかな」


唐突に、夏休みに、海に行く事を思い出した。


―那子の水着姿、見られるかも……。


そんな考えが頭を()ぎったので、ブンブンと、頭を振った。

…俺も帰るとしよう。


今から、海に行けるのを楽しみにしておこう。

那子のはしゃぐ姿もみたい。

早く夏休みにならないだろうか、と思いながら、軽い足取りで家まで歩く。

赤い夕日に見送られながら……。












更新まで長かった。

ついでに、聖君!モノローグ長い!!


短くしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ