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純粋少女と不良少年  作者:
日常 と 思い出
14/51

14 夕暮れの図書室で







高校に入学して、日も浅かった。

毎日毎日、喧嘩ばかり売られて、不良説は流れるし、友達はできないし、最悪で退屈だった。

いつだったかの放課後、家に帰るのも面倒だから、図書室で暇をつぶそうと思っていたときだった。


那子に会ったのは―……


「痛ってぇーなー、あの野郎……」


俺は喧嘩(けんか)中、相手から腹に一発入れられたのだ。

本棚に(なか)ば倒れこむように、横向きでもたれかかった。

そこで思ったのは、腹筋鍛えてて良かった、だ。

なんと(むな)しいことか……。

こんなことに、役立つなんて。


1人で10人も大分キツイのに、今日の相手は20人だった。

しかも金属バット持ってやがるし……。

別に喧嘩に慣れてるわけでも、好きなわけでもないのに、毎日毎日……。

思わず、溜息が漏れる。


―俺がそんなに怖ぇんだったら、喧嘩なんて売らなけりゃいいのに……。


俺は意外と小心者だと思う…、のだが、気がついたら喧嘩してる。

何をやりたいんだ、俺は…、と、自分でも分からなくなる。


その時だった―……。


「ぁ、あの~、そこ、()けてもらっても、ぃ、いですか?」

「…………」


震えた声がしたから、顔を、というより目だけを動かして、後ろを見た。

視界には映らなかったから、視線を下げてみたら、小柄な女子がいた。

多分、同じクラスだった(はず)……。


「あの、そこ……」

「ぁ、悪ぃ」


言われてた内容をすっかり忘れて、その子をずっと見てしまっていた。

睨まれた、とか思われてそうだな。

この吊り上がっている目、どうにかならないものか……。


「ん~っ」


少女と言っていい風貌(ふうぼう)の、その女子を見ると、背伸びをして本を取ろうとしている。

あと少しで手が届くのに、どうしても取れない。

その光景が微笑ましくて、つい、笑みが(こぼ)れた。


「クッ…、ククッ……」

「…っんな!」

「ク、フフ、ハハハッ…!」

「わ、笑わないで下さい!」


どうしても笑いが(こら)えられなくて、腹を抱えて大笑い…、いや、爆笑していた。

その間、その女子はずっと怒っていたような気がする。


こんなに笑ったのはいつ以来だったろうか……。

それぐらい、笑った。


「…はぁ。ほら、本とってやるから、もう怒んなよ」

「…~っ!」


ひょい、と本を簡単にとってやると、不貞腐(ふてくさ)れながらも、女子は礼を言った。


「…ありがとうございます」

「それにしても、小せぇな」

「何か言いましたかっ!?」


小さな独り言は、ちゃんと聞かれていた。


その後、俺はその女子が気になって、本を読んでいるのを隣で眺めていた。











聖視点


聖はこんなに多くは語らない…。

そして、聖も意外と純情だったりする。


短くしました。

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