14 夕暮れの図書室で
高校に入学して、日も浅かった。
毎日毎日、喧嘩ばかり売られて、不良説は流れるし、友達はできないし、最悪で退屈だった。
いつだったかの放課後、家に帰るのも面倒だから、図書室で暇をつぶそうと思っていたときだった。
那子に会ったのは―……
「痛ってぇーなー、あの野郎……」
俺は喧嘩中、相手から腹に一発入れられたのだ。
本棚に半ば倒れこむように、横向きでもたれかかった。
そこで思ったのは、腹筋鍛えてて良かった、だ。
なんと空しいことか……。
こんなことに、役立つなんて。
1人で10人も大分キツイのに、今日の相手は20人だった。
しかも金属バット持ってやがるし……。
別に喧嘩に慣れてるわけでも、好きなわけでもないのに、毎日毎日……。
思わず、溜息が漏れる。
―俺がそんなに怖ぇんだったら、喧嘩なんて売らなけりゃいいのに……。
俺は意外と小心者だと思う…、のだが、気がついたら喧嘩してる。
何をやりたいんだ、俺は…、と、自分でも分からなくなる。
その時だった―……。
「ぁ、あの~、そこ、避けてもらっても、ぃ、いですか?」
「…………」
震えた声がしたから、顔を、というより目だけを動かして、後ろを見た。
視界には映らなかったから、視線を下げてみたら、小柄な女子がいた。
多分、同じクラスだった筈……。
「あの、そこ……」
「ぁ、悪ぃ」
言われてた内容をすっかり忘れて、その子をずっと見てしまっていた。
睨まれた、とか思われてそうだな。
この吊り上がっている目、どうにかならないものか……。
「ん~っ」
少女と言っていい風貌の、その女子を見ると、背伸びをして本を取ろうとしている。
あと少しで手が届くのに、どうしても取れない。
その光景が微笑ましくて、つい、笑みが零れた。
「クッ…、ククッ……」
「…っんな!」
「ク、フフ、ハハハッ…!」
「わ、笑わないで下さい!」
どうしても笑いが堪えられなくて、腹を抱えて大笑い…、いや、爆笑していた。
その間、その女子はずっと怒っていたような気がする。
こんなに笑ったのはいつ以来だったろうか……。
それぐらい、笑った。
「…はぁ。ほら、本とってやるから、もう怒んなよ」
「…~っ!」
ひょい、と本を簡単にとってやると、不貞腐れながらも、女子は礼を言った。
「…ありがとうございます」
「それにしても、小せぇな」
「何か言いましたかっ!?」
小さな独り言は、ちゃんと聞かれていた。
その後、俺はその女子が気になって、本を読んでいるのを隣で眺めていた。
聖視点
聖はこんなに多くは語らない…。
そして、聖も意外と純情だったりする。
短くしました。




