11 君の言葉とその笑顔
「何で?何で無いの!?」
突然ですが、私は失くなってしまった本を探している最中です。
図書室の本だから、失くしたら買い直さないといけないし…。
「那子?どうしたの?」
「加奈ちゃん……」
図書室に来ない私を、探しに来てくれた加奈ちゃんが声をかけてくれた。
私は今にも泣きそうな顔で、加奈ちゃんを見た。
「図書室で借りた本、失くしちゃった……」
「どこかに忘れたのかもよ?探すの手伝うから、心当たりがあるなら教えて?」
「昼休みに中庭に行って、教室まで持ってきたはずなんだけど……」
「じゃ、私は中庭に行って来るから、那子は他のトコ探してみて!」
「うん、ありがとう!加奈ちゃん」
加奈ちゃんはダッシュで、中庭の方へ行ってしまった。
持つべきものは親友だぁ~……。
なんて、しみじみ思っていても仕方がない。
私は図書室に行ってみた。
図書室の戸を開けた。
図書室には最近図書委員になったばかりの、聖君がいた。
他にも担当の人はいるけど、部活があるから。と、聖君が殆ど仕事をしている状態だ。
今日も、本の整理をしたりと、大変そうだ。
私も図書委員が良かったけど、委員になったらなったで、仕事が忙しい。
読書クラブなんて続けられない。
一時期なったことはあるけど、直ぐやめた。
本を分類するのが大変で、仕事が追いつかなくなったからだ。
「那子、どうした?」
聖君はカウンターで、何かを書いていた。
私からは書いている内容は見えない。
「あ、聖君。私ね、借りた本、失くしちゃったみたいで、あの……」
「…本?中庭のベンチに置いてあったけど、これか?」
聖君はカウンターに置いてあった本をとって、私に見せた。
タイトルは『world』。
私が借りた本だった。
今、こんなこと考えるのも何だけど、最近借りている本が英語のタイトルばかりのような気がする。
「あ、それだ!」
私はホッとして、本を受け取りながら安堵の溜息を漏らした。
本当によかったぁ~……。
「もう、失くすなよ。図書室の本なんだから」
「うん!ありがとう!」
聖君は照れ臭そうに、顔を背けた。
そこで、那子は思い出した。
「あ、加奈ちゃんにも探してもらってたんだ!」
「斎条も?」
「うん。メールしないと!」
那子は素早く携帯を取り出し、のんびりしている姿とは打って変わって、
凄まじい速さで文字を打ち込んでいる。
―使い慣れたら、こんなに速く動かせるもんなんだな。
そう思った後、那子が携帯をポケットに入れ、顔を上げた。
「聖君、本当にありがとう。私、すごく焦っちゃったんだよね」
そう言って、那子は満面の笑みを浮かべた。
「…別に、俺は何もしてない、から」
そう言う聖だったが、満更でもない表情をしていたのに、本人は気がついていなかった。
あっさりと終わってしまった…。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




