01 出会いは瞬間に
一時限目の終わりを告げるチャイムが、鳴り終わった。
「ぉ、わったぁ~」
「何、言ってんの。まだ一時限目でしょ」
私は昨日、徹夜で小説を読んだが為に、目の下に隈がくっきりとあった。
貴重な睡眠時間を、貴重な読書時間と引き換えにした証拠だ。
申し遅れましたが、私、嵐 那子といいます。
只の読書好きの女子高生です。
ちょっと、人の顔を覚えるのが苦手です。
そして、私と他愛のない話をしてるのは、友人兼読書仲間の斎条 加奈ちゃんです。
超が付く程の美少女で、いつも黒い髪が輝いて見えます。
そして、情報通。
私が周りの話についていけるのは、加奈ちゃんの情報のおかげです。
私たちは読書クラブに所属しています。
部員は私たちだけなんだけど……。
「それよりさ、今日アイツ来てるの、知ってる?」
「ふぇ?アイツって?」
「…アンタそういう話は疎いんだっけ?」
私は何の話かわからず、頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。
「〝永野 聖〟って、知ってるよね?」
「永野君って、同じクラスでしょ?あとは、休みがちってことくらいしか……」
「じゃあ、不良ってことは?」
「え、そうなの?」
加奈ちゃんは、やっぱり。と、言わんばかりに溜息をつく。
「高校入学して、2ヶ月は経ってるでしょう?」
「うん」
私は適当に相槌を打った。
「入学式の日に、上級生を殴ったらしくて、その日からずっと停学だったのよ」
「そんなに荒れてるの?」
「荒れてるって言うか、喧嘩を買ってるって言うか……」
「へぇ~……」
のほほん、とした返事に呆れたのか、加奈ちゃんはまた深い溜息をついた。
「停学のことは学校が、曖昧にして対処したんだって」
「何で?」
「知られたくなかったんでしょ、学校側が」
「そっかぁ……」
またも頼りない返事をした私に、念を押すように加奈ちゃんは言った。
余程、心配らしい。
「…絶対に、あいつには近寄らないで!分かった!?」
「わかったから、そんなに力まなくても大丈夫だよ!?」
加奈ちゃんの押しに、私は少し拍子抜けしてしまった。
「あっ!次、科学じゃない!」
加奈ちゃんは時計を見ると、急いだように言った。
何故なら、生徒が普段授業をする教室は西棟。
特別活動教室など、体育館や科学室は東棟にある。
それを梯子する廊下は約50mあって、更に科学室は3階にあり、1年の教室は2階。
移動する時間は急いでも、2~3分程かかってしまう。
そんな中でも、私はキリのいいところで読書を終わらせたい。
だけど、加奈ちゃんはそれを許してはくれませんでした。
「那子!次、移動教室だってば!」
「ぅ~、あと5分~」
「5分もないから!科学室、行かないと!」
「ぇ~……」
「早く!」
私は加奈ちゃんに引っ張られ、廊下に出た。
なるべく早歩きで、科学室へ向かう。
走ると風紀委員会から罰則を食らうから。
「そんなに、あの小説面白かったの?」
「面白いよ!今度貸す?」
「私も読みかけがあるから、それ読んだらね」
「うん!」
「それから那子、あんまりフラフラ歩かないで」
私が気付かなかっただけで、かなり危なっかしく歩いていたらしい。
擦れ違う相手とは、後何センチかで相手とぶつかるところだった。って、加奈ちゃんは言っていた。
「あと永野聖、結構授業サボってるから、どっかで会ったら気をつけてね」
「心配性だな~、加奈ちゃんは……」
「だって、こんなにフラフラ歩いてるんだから、心配するに決まってるでしょ!」
「はいはい、分かったよ~……」
ドンッ
余所見をしていた私は、誰かにぶつかってしまった。
言われた傍から……。
自分でも呆れてしまう。
「わ、すみません……」
私は上を見上げた。
その人は背が高かったのだ。
―うわぁ、キレイな顔してる……。
多分男子なんだろうけど、すごくキレイだった。
あと、すごく睨まれた。
「お前、どこ見て歩いてんだよ」
「す、すみませんでしたぁ!!」
「あ、那子!」
私は脱兎の如く逃げた。
だって、怖かったし、怖かったし、怖かったし……。
兎に角、逃げた。
多分、科学室なんて通り過ぎてしまった。
自分でも、何処を走っているのか分からなかった。
恋愛系は初挑戦だったので、自分でもよくわかりません。
感想を頂ければ嬉しいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




