97話 尾行見つかる
パン屋前の路地裏で、私とライオネル殿下は二人の様子を眺める。
「変わり映えしないな」
ライオネル殿下の言葉が胸に刺さる。王城から街へ行くまで二人は他愛ない会話をしていた。特に収穫のない会話を。要するに、尾行にあまり意味がない。
「では他に方法があったというのですか?」
収穫がないのは仕方ないじゃないという意味も込めて、ライオネル殿下を一瞥する。
「それは――」
「みーつけた」
ライオネル殿下の言葉を遮って、軽い口調の大人の声が降って来た。大きな影がで視界が暗い。
「ひぇ」
「……ちっ」
私の小さな悲鳴に、ライオネル殿下の舌打ち。ラルフさんが笑顔で私たち二人を見下ろして、その後ろでケイティが困ったような顔をしていた。
ケイティがパン屋裏手の自分の家へ私たちを案内してくれた。家の中は基本木製で暖かい感じが漂う。私を含めた四人は、リビング中央にある木のテーブルを囲んで座る。一番奥がラルフさん、時計回りにケイティ、私、ライオネル殿下の順だ。
ケイティが淹れてくれたお茶を目の前にしながら、緊張が走る。
「それで、お二人はどうしてこちらへ?」
にこにこ温和な表情を浮かべて、ラルフさんは私たち二人を交互に見てくる。さて、なんて答えようかしら。バラバラな返答だと面倒くさいことになるのは目に見えている。私が最初に場を制するのが早そうね。
「私はケイティに会いに来たの。前にも一度来てますし、その時に買ったパンが美味しくてまた買わせていただこうかと」
付き添いで来たというカードをライオネル殿下に渡す。
「俺も前回同様、ミラの付き添いだ」
ライオネル殿下はパスしたカードをちゃんと使ってくれた。よかった。
「それなのに路地裏にいたと?」
ラルフさんの目が細められて疑っているのが丸わかりである。
「道に迷ってしまっただけです」
これ以上話すと余計にボロが出そうだし、ここは話を変えてしまおう。
面白い、楽しい、と感じて頂けたら、
下の星マークから評価やブックマークをいただけますと、今後の活力になります!




