96話 ラルフVSノクタリウス
「あれ? ケイティとノクタリウス様は仲良しでしたっけ?」
ノクタリウス様が無視を決め込んでいるというのに、ラルフさんは彼に声をかけた。面白いものを見つけたみたいにからかいの声色が強い。
「僕とケイティはアウレリアのことで意気投合しただけだ。良き話相手だと言えよう」
腕組をしてふんっと鼻を鳴らしながらノクタリウス様はラルフさんに応える。
「ああ、坊ちゃんはアウレリア様にご執心でしたね」
ラルフさんはさらに余裕のある微笑みを浮かべて、ノクタリウス様の恋心を暴露する。と言っても、傍から見てて誰もわかっているのか、ケイティは驚いていない。むしろ目を輝かせている。
でも、私はラルフさんのにこにこ笑顔が気味悪くてしょうがない。だって、目が笑ってないんだもん。ライオネル殿下が言ってたのはこのことね。
「だからどうした?」
ノクタリウス様は額に皺を刻みながらラルフさんを睨みつけている。今ここでどうしてその言葉を吐くのか理解できないという顔だ。
「オレは応援してますよ」
ラルフさんも笑顔のまま、答える。やっぱり目は笑ってない。圧さえ感じる。感じ取っているのか、ノクタリウス様も少し身を引いている。
「アウレリア様の騎士として忠告しますけど。お嬢は隣国に嫁いじゃうから気持ちだけじゃなんとも難しい話ですよ? オレは騎士ですからねぇ。お手伝いしてあげたいですが、お嬢の言うことが一番ですから。嫁ぐというなら、それを優先します。まあ、望み薄いけど、頑張ってくれたまえ宰相の孫くん」
ラルフさんの返答は意外にシビアだ。淡々とノクタリウス様を否定していく。最後には意地悪く笑った。ノクタリウス様は深くため息を吐いてから眼鏡を直した。
「不愉快ですね。やはり、貴方がアウレリアの傍に居続けるなど到底受け入れられない。嫌悪すら感じる」
火花が散る。ノクタリウス様から睨みつけられて、ラルフさんは口笛をふく。
「そう~? オレはわりと好きだよ、面白くて」
にこっと笑うラルフさんにさらに頭に来たのだろう、ノクタリウス様はふんっともう一度鼻を鳴らしてから歩いて行ってしまった。
ノクタリウス様がいなくなったことでケイティがあわあわしていたけど、ラルフさんが「遅れちゃうよ」と背中を押して再び歩き出した。
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