87話 ケイティの恋バナ
私は、正直に答える。
「人として尊敬しています」
今はそれが精いっぱいだ。私の言葉にアウレリア様は目を細めて私の顔色を伺う。
「そう……やっぱり貴方って恋愛に鈍感なのね」
「っ……申し開きもありません」
アウレリア様の言葉に図星を刺されて、私は肩を竦めた。こんな私に恋愛相談なんか無理よね。そうよね。
「ミシェル様はご自分の恋愛に鈍感なだけですよ? 私は助けてもらいました」
ケイティが助け舟を出してくれる。昨日のフィリップ殿下が告白してケイティが逃げた時の話ね。ケイティが前向きになれたのを再確認できてうれしい。
「じゃあ貴女は好きな人がいるのね?」
「はい! でもまだまだ見合わないから、私頑張ることにしたんです」
ケイティはふんっと鼻を鳴らして拳を作り、やる気をアピールする。お互いの気持ち以外がハードル高いのよね、ケイティの場合。
ケイティははたっと目を瞬いてから身体を縮こませる。何か気がついたことがあったようだ。どうしたんのだろう?
私とアウレリア様はケイティが話し出すのを待つ。
「……あのアウレリア様ってフィリップ殿下の元婚約者なんですよね?」
「ええ、そうね」
「やっぱりその、好きだったとか……」
指を突き合わせながらもじもじと聞くケイティに対して、今度はアウレリア様は目を瞬く。そして口元を隠しながらくすくすと笑った。
「ああ、そういうこと。貴女、フィルが好きなのね」
「え!? あ、なんで!?」
アウレリア様の言葉にケイティは驚いて顔を真っ赤にしている。鈍感と言われてる私でもそんな仕草と直球な質問があれば察せられるくらいなのだ、アウレリア様が察するのなんて簡単だろう。
でも、アウレリア様の気持ちは私も知りたい。前に聞いた時は誤魔化されてしまったし、今なら前よりも本音に近い気持ちを聞けるかもしれない。
「安心してちょうだい。私は彼なら国王としてやっていけるし、私ならそれを支えられると思ったから婚約を承諾しただけよ」
「……でも、アウレリア様はフリィップ殿下のこと好きですよね?」
ケイティは唇を尖らせる。綺麗なアウレリア様には焼きもちをやいてしまうようだ。たしかに、恋敵がアウレリア様だったら劣等感が強くなりそう。なんでもできるし、美しいし、頭も家柄も良し! 勝てる見込みがみえないのよね。わかる。
それにフリィップ殿下とアウレリア様が仲が良いのは公然の事実。アウレリア様がフリィップ殿下を嫌いだとはたしかに思えない。
アウレリア様は困ったように眉尻を下げ、諭すように優しくケイティに語り掛ける。
「婚約者だからと言って恋愛感情を持つかどうかは人それぞれと言ったでしょう? フィルのことは心から好きよ。幼い頃からノクスとライオネルと一緒に私の面倒を見てくれたから。三人とも同じように好きよ」
三人とも同じように、いかに大事な相手なのかアウレリア様の口調が物語っていた。
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