86話 ミシェルの恋バナ
「そうだ、聞いてくださいアウレリア様」
「何かしら?」
「ミシェル様、この間ライオネル殿下にお姫様抱っこされて医務室に行ったんですよ」
「げほげほっ!」
話題が飛び火してきて思わず咽た。ケイティに「大丈夫ですか!?」と声をかけられるも、手で制して、問題ない旨を伝える。それよりも何故? 今、ここで、私のその話題を出すの? そっちの方が問題だ。
「……詳しくいいかしら?」
私が大丈夫だとわかった途端、アウレリア様が何故か食いつく。ちょっと待って、紅茶飲んで反論させてっ!
「あ、あの! どうして私の話なんですか!?」
「恥ずかしがらなくても良いではないですか、婚約者なのですし」
面白そうに口端を上げて言うアウレリア様の背中に毒々しい花が見えるような気がする。
「それはそうですが……」
反論が出ない。アウレリア様にそれは違うんですよ。とも言えず、ケイティの方に視線を投げた。なんでこの話を振ったのよ。という恨みの念も込めて。
「かっこ良かったですよ、ライオネル殿下。具合が悪くなったミシェル様を颯爽と抱きかかえて行っちゃったんです!」
「まあ、やればできるじゃない」
話を続けないでっ! 私の、話はいいっ! 恥ずかしくてもだもだする。心臓が痒い。
「そうね、生誕祭でも押されて転びそうになったミシェルを抱きとめてたし、ちゃんとやってるのね」
「え!? そんなことあったんですか?」
「ええ、思わずドキドキしてしまったわ。花言葉もばっちりだったし、今度褒めてあげなきゃ」
弟自慢に気をよくしているようだ。私は止まらない会話に無の境地になりつつ、きゃっきゃうふふと恋愛話をする二人を眺める。傍から見れば可愛い。話の内容が私とライオネル殿下主体じゃなければ、もっと良い。
たしかにライオネル殿下は顔もいいし、性格はむかつくこともあるけど、ちゃんと協力的だし、私がしたいことを尊重してくれている。またとない良き契約パートナーだ。と今なら認める。でも、私はまだ何も成せていないから、婚約者という立場を利用したい。だから、意識したくない。
だいたい、契約パートナーなのだから、意識した後はお先真っ暗。怖いことが目に見えてる。このままでちょうどいいのだ。
「ミシェルはライオネルのことどう思っているの?」
「えっ?」
意識しないと思っていたところにちょうどアウレリア様から質問が来る。「好きですよ」とさらっと返せばよかった。咄嗟のことに驚いてしまって、言葉が上手くでない。
「婚約者だからと言って恋愛感情を持つかどうかは人それぞれでしょ。しっかり聞いてみたいと思ったの」
前に好意があるとアウレリア様には話してたはずだが、どうやら見抜かれていたらしい。どうしよう。口先で好意があると告げてもきっとまた信じてはもらえないだろう。
面白い、楽しい、と感じて頂けたら、
下の星マークから評価やブックマークをいただけますと、今後の活力になります!




