79話 婚約発表
私は、ライオネル殿下の方へ歩き出す。手を差し出されて、その手に手をそっと重ねた。やっぱり緊張していたみたいで、私の手は冷たい。ライオネル殿下の体温に安堵したのか、すっと手に血が通ってくる。だから、つい彼の手をぎゅっと握ってしまった。一瞬肩が跳ねて驚いた様子があったけど、ライオネル殿下が握り返してくる。暖かさにほっとしたのもつかの間、手を握ってしまったことを意識してしまって緊張してしまう。自分から握ったくせに。
ライオネル殿下に連れられて壇を上る。パーティ会場がざわっとする。人々の視線が突き刺さって、背筋が震えた。ライオネル殿下の手に力が入る。彼も緊張しているのだとわかった。私もしっかりしないと。背筋を伸ばす。
ライオネル殿下が手を上げれば、会場はシンと静まり返った。
「今日は集まってくれて礼を言う。めでたい場にふさわしい発表をしたいと思う」
私の喉もことりと鳴った。
「私、ライオネル・カイリスはミシェル・シルヴァレーンと婚約することをここに発表する」
再び会場がざわめく。
うん、見せつけるのはバッチリ。これで大丈夫だよね? 大勢の前で婚約者ごっこするのは思った以上に恥ずかしい。こんな思いしてまでがんばってるんだから、ジュリアナ様は引いてくれるよね!
「婚約者を皆に紹介しよう。……ミシェル」
ライオネル殿下は私の手を引いて隣へと促す。一歩前に出て、私はカーテシーをしながら名乗ろうとした。
「ミシェル――」
「うそよ!!」
大きな声が邪魔をした。案の定、ジュリアナ様が髪に負けず劣らず真っ赤な顔をして、中央に躍り出て来た。
「私との婚約はどうなるのですか!?」
「すでに破棄しているはずだが?」
必死な声色にぴしゃりと答えるライオネル殿下。
「……殿下、どうしてですの! たかが伯爵家の令嬢に殿下の婚約者が務まるとでも!?」
けど、ジュリアナ様は負けずにライオネル殿下に食って掛かった。
侯爵家のプライドが傷ついたとでも言いたげに行ってくる。でも、私の家はただの伯爵家じゃなくて、辺境伯なんだけど? 王族の隣に私の親たちが座っているのが見えないのかしら?
家のことで喧嘩を売られているのはライオネル殿下ではなく、私。本当はライオネル殿下に仕切ってもらおうかと思ったけど、私が受けて立つべきね。
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