78話 花言葉
「あら、今日はおひとりですのね?」
ジュリアナ様が話しかけてくる。口元を扇で隠しながらも目は軽蔑の色を示していた。お兄様が反応したので、後ろ手でそっと制して止める。
「ええ、婚約者の晴れ舞台ですから」
名前は言わないが、ふっと鼻で笑ってライオネル殿下のことを示唆する。前回ライオネル殿下が行った婚約者という言葉を借りることで、お互いに婚約者同士だと認めていると提示した。
私の強気な態度にジュリアナが一瞬怯む。いつの間にか集まっていた取り巻きがざわざわとお互いに何かを言い合っている。
「あら、妄想もそこまで行くと甚だしいですわね。今日も殿下に合わせた格好をしてくるなんて、なんて愚かなんでしょう」
そういうジュリアナ様も白基調に金色の刺繍。赤いリボンなど意識している恰好だ。私よりもボリュームがあるドレスは華やかで眩しいくらい。二人並んでると私の方が貧相に見えるだろう。
でも、こっちにはライオネル殿下がついているのだから問題ない。
「いえ、これはライオネル殿下に贈っていただいたものです」
「まさか! 貴女がライオネル殿下に贈物などしていただけるわけないでしょう。わたくしは、ライオネル殿下からキンモクセイを贈ってもらったことがありましてよ」
いきなり贈物の牽制を始めてくる。
でも、花言葉はもう私は知っている。
キンモクセイね、”初恋”とかの意味もある時はあるみたいだけど、この場合はどれかというと……。
「謙虚という意味もありますわね。その意味の通り、少しは謙虚になった方がよろしいのではなくて?」
ライオネル殿下が様子を見に来て固まったのが目の端に止まる。
お前、花言葉知ってたのかとでも言うような視線に、苦笑ってしまう。いままで送られた花について特に触れなかったし、だいたい花言葉についてはアウレリア様に言われてから、勉強したのだし。知らなかったのよ。
「私はワスレナグサを送っていただきましたのよ」
花言葉は”私を忘れないで”もしくは”真実の愛”。どちらかというと、私が忘れているので思いだしてほしいという方の意味だとは思うけど、ジュリアナ様はそんなことは知らないわけで、婚約者に贈る花言葉の意味として取るなら”真実の愛”に決まっている。
「他にもスイセイランとか。さすが温室がある王城の花は季節を問わないですわよね」
第二王子だから王城の温室を使えるわけで、ライオネル殿下からだと証明にもなるだろう。ちなみに花言葉は”特別な存在”である。特別というのはどうとでも取れる。実際私は幼い頃に彼に死の宣告をしたのだから特別だろう。けれど、婚約者という立場であればそれは優位に動く。要は勝手に相手が想像してくれるのだ。
花言葉は複数の意味があれば都合よくとることもできる。そしてこういった女子同士の争いの場合、マウントを取れた方が勝つの布石。
押し黙ったジュリアナ様に、私は目を細めて口元に笑みを作る。さて十分に煽ったところで、そろそろ婚約発表だ。
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