76話 第二王子の生誕祭
あっという間にライオネル殿下の生誕祭がやって来た。
舞踏会に出たことがない私は、踊りの練習や準備に辟易してしまった。ドレスとかアクセサリーはライオネル殿下から一式届いてほっとしたけど。私、生誕祭上手く立ち回れるかしら……? 不安になる。
生誕祭でライオネル殿下と婚約発表をする方向でもう話が進んでいるので、ドレスはライオネル殿下に合わせた色になっているようだ。基調はお祝い事だから白。挿し色に金色、アクセサリーに赤色。といったところだ。どちらかと言えば細見な私は上部が小さく、すそに向かって広がる形のドレスで、華奢が目立たないようにひらひらした短い袖がついている。長いドレスの裾は地面に擦れやすいので歩くときは注意が必要だったりする。
着付けや髪はメイドがすべてしてくれて、私はお兄様と城内の待機室にいる。お兄様は私とは違って、白基調に銀の挿し色、紫のアクセサリーといった我が家の色合いの服装を着ている。
まだ婚約発表はしていないので、ライオネル殿下とは別々に入場をする手筈になっているはずだったが、なぜかライオネル殿下が待合室に顔を出してきた。
「邪魔をする……ミシェル、綺麗だ。似合っている」
私と同じ色合いの服装で、アクセサリーは私の髪の銀色を基調に目の色である薄い紫を挿し色に使っている。いつもよりもかっちりとした服装に、金色の髪と赤い瞳がよく合っている。改めて見ると、整った目鼻立ち、若干釣り目な赤い瞳は意思の強さを感じさせる。顔がいい、かっこいいと思う。さらに私を見て頬を緩められては、見惚れて返答がワンテンポ遅れてしまう。
「……あ、ありがとうございます。殿下も大変お似合いですよ」
私の社交辞令な返答にライオネル殿下はお兄様をちらりと見やる。話しづらいのだろうか。
お兄様に殿下と話があるからと、部屋の外に移動してもらった。
「何かご用でしょうか?」
「ハートフォード嬢のことだ。婚約を発表すれば大人しくなるだろ? 前に言っていたことまでやる必要があるのか?」
「あります」
大いにある。婚約発表しても嫌がらせはなくならないと思うのよね。婚約者に相応しくないだとか、婚約破棄を迫られる恐れもある。だから、ライオネル殿下に、私は釘を刺す。
「いいですか。ジュリアナ様の対応は私が主導しますので、見守っててください。ライオネル殿下はこの前言った通りにしてくださればいいです」
「だが、それだと契約が……」
「お気になさらず。契約がなくても、私――できるだけのことはするって決めましたから」
幼い私が残した日誌のように、私ももう少しだけ自分で挑戦してみようと思った。
その気持ちが伝わったようで、ライオネル殿下は頷いてくれた。
「わかった。お前の好きなようにしろ。サポートする」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
頼りにしている。と言葉にはできなくて、目で彼の赤い瞳を見つめた。ライオネル殿下はそれ以上何も言わずに、部屋を後にしてくれた。
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