67話 メイド服でお手伝い
ケイティと仲良くなる代償として、私は今メイドの格好をして王宮に来ている。
ケイティとは、生徒会に入って改めてフィリップ殿下と接する方向で話がまとまった。彼女と仲良くなれたことは良かった。翌日、ライオネル殿下に恨み言を言われたとしても、私にとってはプラスだった。
ライオネル殿下の恨み言に、王宮で手伝いをするということで話をつけて、今に至る。
「では、お手伝いをさせていただきますね、ライオネル殿下」
目の前で書類に埋もれているライオネル殿下に挨拶をするも、怪訝そうな表情を返された。不満なのは、置いていった償いで貴方の手伝いをしなきゃいけない私なんですが?
「書類整理を頼む前に、なぜお前はメイド服を着ている?」
どうやら服装がお気に召さなかったようだ。しかし、何も考えなしで王宮のメイドの服を借りたわけじゃない。
「ああ、これですか? 侵入しやすい恰好をしてこいと言ったのは殿下ではありませんか」
「お前を手伝いで呼んだのは、俺が倒れたという場所の確認をしてもらおうと思っただけだ」
「なおさら最適じゃないですか。この格好であれば怪しまれずに王宮を闊歩できます」
言葉に詰まったライオネル殿下に追い打ちをかける。
「それに、メイドとは何かを目撃しやすい服装――立ち位置なんですよ。私の前世では!」
メイドといえば家政婦。家政婦といえば有名な話があったのだから、きっと役に立つはずだ。だから、さっさと場所の確認をさせてほしい。
「……お前、吹っ切れたな」
反論がまた飛んで来るかと思えば、ライオネル殿下は目元を緩めて苦笑し、私の現状を言葉にしただけだった。目を瞬いて、一瞬言葉を失ったけれど、私は腕を組んですぐにいつもの調子で答えた。
「使えるものは使ってみようと思いまして。なんですか、普通のご令嬢が良いというのであればジュリアナ様を選べばよろしいのでは?」
「泥船に乗る気はないし、お前だから信用してここまで入れているんだ」
皮肉に対しても軽く流された。赤い瞳はじっとこちらを見ていて、嘘でもおべっかでもなさそうだ。そこまで信じてもらえると、少しむずがゆい。しっかりと前世の知識を活かしていかなきゃ。
「占いの力を信用していただけているのであれば、存分に発揮できるように目を瞑っておいてください」
「……ああ」
気を引き締めて意気込みを伝えると、なぜか釈然としないというように顔を顰められた。結果を見せてこそということかしら。やるしかないわね。
「早速、掃除と称して片っ端から部屋を見てきます、もちろん寝室は重点的に拝見しますね!」
「……やはり俺も行く」
ひとりで出て行こうとすると、ライオネル殿下は付いてくると立ち上がった。やらなきゃいけない書類があるのでは? と首を傾げて様子を見ていても席に戻る様子はない。
「……良いですが、私はメイドとして徹するのでご了承ください」
ライオネル殿下は頷くと部屋をでる。案内してもらえるのは良いが、ライオネル殿下は目立つので私は彼と距離を置いて歩く。
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