66話 貴方は大魔導士になる女よ
「できれば私も一緒に行きたいわね」
打算的な考えだった。ケイティはゲームの中でも生き残り、この国の歴史を語ってくれるキャラクターだ。そうであれば彼女とともに行けば私も助かる道が増えるのではないか。と、ただの打算的な答えが口をついただけだ。
でも、その一言はケイティの言葉を止めた。
「……ミシェル様、説得力ないです」
ケイティは体を離して、くしゃっとした笑顔を浮かべる。涙の後で汚れた頬、真っ赤になった眼、乱れた髪という悲惨な状態なのに、その笑顔だけは儚く消え入りそうで、美しかった。
「あら、私は本気よ?」
動揺しながらも、私は冗談ではないと主張する。
「ミシェル様は諦める前に、どうにかしようとするじゃないですか。アウレリア様やライオネル殿下のことだって……」
私の言葉はケイティには届かなかった。諦めたらそこで何もかも終わってしまうという気持ちが心の隅をかすめた。前世から残っているしこり、縛りだったかもしれない。
「だって、諦めても何も変わらなかった……もの」
諦めても苦しさはそこにあったから、死に物狂いで逃げたんだ。逃げるのは悪くなんかない。
ケイティは目を拭っていつものように目をきらめかせた。
「わたし、ミシェル様を見習いますね……!」
諦め悪くフィリップ殿下にぶつかっていくのだろうか。たぶん、ケイティの性格上そっちの方がハッピーエンドに向かえる気がするわね。だって、そんな性格だもの。
「私、ケイティはぶつかりに行ってる方が安心するわ」
「へへ……でも、まだちょっと不安で……ミシェル様に占ってほしいな。って」
ケイティに占いをしてほしいといわれて、心の距離が近づいたようで少し嬉しくなった。
「ええ、いいわ。身分なんて関係ない。フィリップ殿下の心を掴んだ貴方なら、二人で乗り越えればいいのよ。なんたって貴方は大魔導士になる女よ」
彼女自身にはっきりと告げた。大魔導士になってこの国を守ってほしいという気持ちもあるけど、何より友達の恋路は応援したい。その気持ちが強かった。
「……大魔導士……はい! 頑張りますね、ミシェル様!」
大きなひまわりがぱっと咲いたように眩しくケイティは笑った。
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