5話 占いの館始めました
学院の端に位置する部室の一室。ここは占い部が管理する占いの館。占いの名に相応しく、上からいくつものカーテンが垂れ下がり、暗めの照明だ。中央にはテーブルと椅子が向かい合わせに二脚。片方に私が座り、反対側に相談者が座る形だ。
前世の記憶を取り戻してから、私はお母様が学生時代にしていた占い部を引き継ぐ形で占い師をしている。
今世のお母様は占い師。恋愛関係=占いなんて単純な構図だけど、情報収集するにはもってこいなわけで、お母様に学生時代使ってた占いの館を引き継がせてもらったの。引きこもりで初めて学院に通う私には知り合いなんていなかったしね。
今日も、目の前に座る相談者にそれっぽく応える。
「大丈夫です。彼女にとっては今とてもつらい状況だとは思いますが、困難を乗り越えた先にこそ幸せはあるものです。二人の距離が近づくチャンス、貴女は見守って上手くいった後に心配していたことをお話すればいいのですわ」
「わかりましたわ。わたくし、あの子が乗り越えるまで見守って支えますわ……!」
相談者は立ち上がってお辞儀をし、カーテンを手で開いてから元気よく外へと出て行った。部活扱いなので金銭は発生しない。
「ふう、上手くいくといいんだけど……いままでの傾向的に問題ないはず」
占いの館と称しているけど、実は私は占いをしていない。正確にはできないのだ。
残念ながら私は、お母様の占いという魔法の力を引き継いではいないのよね。お母様の魔法は、王族直属の魔法で、前世風に言うなら予知魔法ってとこかしら。
魔法は使えなくても、占いに訪れる人の話は前世で見た小説や漫画みたいな状況ばかりで、だったら定番はこういう行動じゃない? という返答をすると、それが不思議なことにしっかり当て嵌るのだ。あくまでゲームの世界ということなのかしら。
そんなこんなで”当たる占い”としてひっそりと女子の間では噂になっている。
カーテンが開き、大きめな影が館内に入ってくる。今日、三人目のお客様ね。時間的にこの人で終わりにしようかしら。
テーブルの前に座っている私にツカツカと客が歩み寄ってくる。
「占いの館へようこそ」
私は定番の文句を述べた。
目の前まで客が来ると、その風貌が明らかになる。暗い中でもかすかな光を拾い上げて光る金髪に、燃えるような赤い瞳。きりっとした眉は意思の強さが伺えた。服装は普通の学生服を着ているが、大きな手にしている白い手袋が目立つ。それでいて気品が漂う佇まいを見て取れば、彼がこの国の第二王子ライオネル様だと誰でもわかるだろう。
何故ここに第二王子が? ことりと喉が鳴ってしまった。
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