55話 思いだしたのか!?
「アウレリア様って、本当に謎ね」
「……話をまったく違う方向に持っていくしな」
私の呟きにライオネル殿下がため息を吐いて同意する。どうやら、まったく違う話をされていたらしい。フィリップ殿下がお説教してるかもと言っていたし、そうなっていたのかもしれない。
「何をお話してたんですか?」
気になっていたので聞いてみる。
「……昔の話を少しな」
詳しく話さないということは私には聞かせたくない話なのだろうか。濁すかのように話題を変えてくる。
「ひとりでここまで来たのか?」
「はい」
「迷わずに?」
「ええ、なんだか懐かしくて、見たことあるような場所を歩いていたらたどり着きました」
「思いだしたのか!?」
腕を掴まれて、勢いよく叫ばれた言葉に私は目を瞬く。ライオネル殿下の表情は眉根が寄って真剣そのものだ。冗談とかいうのではないとひしひし感じる。
なんのことだろう? 思いだしたって、王城のこと?
「……あの、幼い頃もしかしてライオネル殿下と会ったことあります?」
私の返答に、ライオネル殿下は困惑を極めたように口をへの字にする。難しい顔をしているところから、会ったことはありそうだけど、どんな関係だったか話すのを憚っているというとこかしら。
思い出せないけど。
「すみません。懐かしくはあるのですが、幼い頃の記憶は覚えてなくて……」
私の言葉にライオネル殿下は顔を落とした。
「…………くせに」
「はい?」
小さくて聞き取れない。
「お前が、十六歳になると戦場には立てなくなってしまうと言ったんだ……」
零された言葉が頭に入ってこなかった。どういうこと? 幼い私が、ライオネル殿下に言ったの? 十六歳になった今年、戦場に立てなくなるような何かが起こるって。
「……いや、悪い。思いだせていないんだ。気にしないでくれ」
私の様子に、ライオネル殿下は腕を離して、席を立つ。追いかけることはできなかった。頭がずっと混乱していたから。幼い私は、何を知っていたの?
第二王子である彼についても何か詳細を知っていたというの?
ぐるぐると考えても、記憶が戻ってくるわけじゃない。ただ、どうしていいのかしばらくはその場に固まっていた。
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