54話 アウレリアの気持ち2
「もし、妹としてではない愛情だとしたらいかがなのでしょうか?」
「…………」
私の言葉にアウレリア様は大きく目を見開く。考えたこともなかったという表情に、背中に冷や汗を感じる。書記で知ってるからと言って、勝手に人の恋心を暴露してよかったのだろうか、と後悔する。
「私にとっては兄のようなものですもの。それは何も変わりませんわ」
なんか勝手に振られた感じになっちゃった。ごめんなさい、ノクタリウス様。これは私の心の中にとどめておくので、どうか許してください。
「ミシェル様から見ると、そう見えるのかしら?」
どう答えようか。もうこの話題について私に理がある話にはならないだろう。アウレリア様の愛する人候補からひとり外すことができたのだし。
「いえ、その……噂がありましたから」
「あら、ミシェル様は本当に恋愛事情がお好きなのね?」
「占い師としてそういう相談も多いもので、噂が自然と耳に入るだけですわ」
「通りで。貴女、恋愛には相当疎いですものね」
上手く返せてると思ったのに、アウレリア様の言葉は私の心臓に突き刺さった。恋愛経験ゼロなことがにじみ出て居るとでも言うの?
動揺する私をよそに、アウレリア様はライオネル殿下をちらりと見て言葉を続ける。
「貴女と恋路についてお話するのは今度ゆっくり致しましょう。ライオネルがいては話しづらくて仕方ないわ」
「は、はい。喜んで……!」
ショックが拭えないものの、また話してもらえるという内容に条件反射で返事をした。
アウレリア様はふっと表情を緩ませて笑ってくれる。返答に間違いはなかったようでよかった。
「わたくし、他に時間を使いたい人がいるので失礼するわ」
匂わせるだけ匂わせて席を立つアウレリア様。いつの間にか待機していたラルフさんを連れて、中庭を後にする彼女の後姿を茫然と見送るしかなかった。
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