45話 前世の記憶
「では、ケイティ。シルヴァレーン嬢とレオに魔法の説明をお願いしようかな」
「はい! では魔法の基礎ですね。魔法が使える人は、魔力という力を感知して操作することができます。目を瞑って、自分の身体にある魔力を感じます。人によって感じ方は様々ですが私は自分の周りを膜が泳いでるように感じます」
魔力を感じたことがないので、やっぱり魔法は無理かもしれない。その後も説明は続く。
「手のひらに集めて、自分が適性のある――私の場合は水です。その力を使うイメージをします」
ケイティの手のひらに透明な水のボールが浮かんだ。ぷかぷかと浮いたままその場に留まっている。
「これが基礎ですね。ミシェル様もライオネル殿下も目を閉じてやってみてください」
「わかったわ」
「わかった」
私は目を閉じた。身体に膜のようなものは見えない。
「わからないわ……」
「俺もわからないな」
「では、私が補佐しようか」
誰かに手を取られる。声をかけてきたフィリップ殿下だろう。取られた手から熱さを感じた時、目の前がフラッシュがたかれたようにスパークした。目を閉じているのに眩しくて、ぎゅっと力を入れてしまう。
フラッシュが止むと、目の前にいくつかの画像が浮かんでいた。あれ、これって前世の記憶だ。ん? もしかして前世の記憶って魔法だったりする?
どうしようか悩んでいると、勝手に一つの画像が光った。映像が再生された。過去の、ひどい記憶だった。
家族四人には狭すぎるワンルームの家。ゴミ袋が端に積み上げられていて、シンクには洗い物の山。紛れもなく、あたしの幼い頃の家だ。
「お姉ちゃん、お腹空いた……」
「何か作ってよ!」
三つ年下の妹が、五つ下の弟が、辺り前のように私に命令する。世話は誰もしない。あたししかしていない。あたしが世話をしなければこの子たちは、何も食べれない。
「…………」
あたしはコンロに火をつけてお湯を沸かす。妹たちの面倒を見ろと、母に命令されていたから。普段は心を無にしてすべてやってた。でも高校生活の中であたしは自分が特殊なのだと理解していた。中学までは面倒見がいい姉として言われてきたけど、バイトもするように言われて、その金で兄弟の面倒を見るように言われ、あたしは何かが崩落した気がした。
その日、父が帰って来た。酒を飲んで。
「おい! 飯はねえのか!」
叫ぶ父に兄弟はあたしの後ろに隠れて、あたしにどうにかしろという。何故あたしがやらなければならない?
「お姉ちゃん、またお父さんがっ」「どうしよう」「ねえねえ」
何故自分ばかりが兄弟の面倒を見なければならない? 何故、あたしが働いたお金までもを兄弟に使わなければならない? 何故、母も父もあたしを見てくれない? 何故あたしばかりがこんな目に合うの?
ずっとくすぶっていた炎が爆発した。
「もういい加減にして!」
「親に対してなんていう口の利き方だ!!」
あたしの叫びに、父親があたしを突き飛ばした。横に吹っ飛んだあたしは台所のコンロの下の扉に身体を打ち付けた。一瞬だったと思う。沸いたやかんが倒れたんだって。
「うああああ!」
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