37話 お客様がお出でです
私は帰宅後、自分の部屋で机に向かっている。アウレリア様が言ってたことを書くつもりはないけど、ライオネル殿下には一応お礼と、報告を込めて手紙を書こうと思ったからだ。後、書いて送ったという事実を作っておくことでアウレリア様に話ができるし。
けど、お礼を書くのは想像以上に恥ずかしかった。いままで誰かに手紙なんて書いたことがなかったから、出だしに本当に悩む。アウレリア様の言う通りそのまま書くと恋文っぽくなっちゃうし、それはちょっと……。
悩んでいれば、ノックが響く。
「何かしら?」
「お客様がお出でです」
客、誰とも約束はしてないし、私を目的に家に来る人なんて今までいなかった。だから、誰だかさっぱりわからない。
「……誰?」
「ライオネル殿下です」
「はあ!?」
その名前に、私はすぐさまドレスを準備して客室に向かうことになった。
着替えた私は、客室でライオネル殿下と向かい合わせで座っている。メイドを下がらせてから、何故来たのかを問いかける。
「お話は何でしょうか?」
「体調は戻ったのか」
「はい、おかげさまで。もしかしてアウレリア様が何かおっしゃっておいででしたか……?」
ライオネル殿下自身が訪ねてくるほどだ。もしかしたらあの後、アウレリア様が何か吹聴したのかもしれない。
「ああ、アウレリアがまだ体調がよくないそうだからお前を帰した、というので、様子を見に来た」
「えっと……」
私はもう体調は大丈夫なこと、そしてアウレリア様と話した内容をライオネル殿下に伝えた。
「仲が深まって何よりだ。手紙は、何か適当に書いて送っておいてくれ」
「わかりました」
適当って、今もう言うこと言っちゃったんだけど。言うタイミングも逃してるし、お礼だけ書いておこうかしら。
その件は手紙で処理するとして、新たに出た情報を今は精査したい。
「気になったのですが、アウレリア様にフィリップ殿下は何を叶えてあげたのでしょうか?」
本人には聞けなかった。でも、ライオネル殿下なら何か知ってるかもしれない。
「帝国との婚約時に兄上とアウレリアで話し合いが行われたはずだ」
「アウレリア様から出された条件はわかりますか?」
ライオネル殿下は首を横に振る。フィリップ殿下とアウレリア様との間で終結された内容であり、一般公開はされていないのだろう。
「契約書を漁ってみるか」
それ大丈夫なヤツ? それよりももっと効率良さそうな方法があるじゃない。
「フィリップ殿下にお伺いすればいいのでは?」
「お前はアウレリア自身に聞けるのか?」
「うぐっ」
カウンターをくらって、ぐっと奥歯を噛んだ。
「聞けたなら、そのまま報告してますよ」
「似たようなものだ。王族用の契約書として管理されてるだろうから、しばらく時間がかかるだろうが……探しておく」
「わかりました、よろしくお願いいたします」
仕方ない。探しておくということでこの話はいったん終わりにしよう。
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