32話 トラウマの令嬢ジュリアナ再び
三日ほど休んでしまったが、毎日見舞いの手紙と花を届けてくれたし、ライオネル殿下にお礼を言わないと。学院へ行き、ライオネル殿下は生徒会の時間から来るのだと聞いて、なぜかほっとした。気まずいと思っていたのかもしれない。
教室に入り、いつもと同じ後ろの席に行こうとすると複数の影が立ちはだかった。忘れはしない赤い髪の彼女――ジュリアナ様が取り巻きを連れて、腕を組み顎をあげていかにも馬鹿にしたようにこちらを見ている。
心臓が跳ねた。ドキドキと早く鳴る。私は胸元を手で掴んだ。
「シルヴァレーン嬢。どうして貴方がずっとライオネル殿下と一緒にいらっしゃるのかしら?」
ライオネル殿下がいない時に話しかけてくるなんて。どうしよう。対応してくれる人は今日はいない。
でも、どうにかしないと。こんなイヤな相手に負けちゃダメっ。私が言わなきゃ。
「生徒会へ同時期に入ったからではないでしょうか」
表情は動かせない。でも、声が上ずらないように静かに返した。返答できたことで、大きく鼓動してた心臓が段々と静かになる。
なんだ、こんな簡単に返せるじゃない。
「まあ! なぜ貴方が生徒会に?」
ジュリアナ様は口元に手を当て、目を広げて、大げさに驚いてみせる。しかも大きな声で、周りのクラスメイトたちから視線が集まるのがわかる。
でも、もう緊張しなかった。手が震えることもない。胸元を握り締めていた手を外して、ジュリアナ様をしっかりと見た。赤紫の吊り上がった眼はまだ少し怖い。でも、相手は普通の女の子だ。そう思えたら、なんてことはなかった。
私は冷静に言葉を返す。
「私の家系の力を、生徒会に役立ててほしいとのことでしたので」
「貴女のお母様、王族に媚売ってますものね。やっぱり娘も同じなのかしら」
くすくすと周りのご令嬢がわざと笑い声を漏らす。小さい声で蔑む言葉を交わしているのがちらりと聞こえる。
お母様のことをそんな風に言われるとは思ってなかった。少しカチンとくる。でも、王族直属の部下をそんな風に悪く言っても良いのかしら……?
私がなんて返そうか考えていると、取り巻きのひとりの令嬢がこれ見よがしに言葉を吐く。
「やっぱりジュリアナ様の方が華があって、ライオネル殿下のお隣に並ばれるのにふさわしいですわ~」
「そうよ、お父様が王家に婚約の復活を持ちかけてるのよ」
胸を張って堂々と嬉しそうに言い放つジュリアナ様。
再度婚約を望んでるみたいだけど、もう成立しないんじゃないかしら? 私、婚約者としてサインしちゃってるし。だいたい婚約破棄されてからいままで何もなかったのに、今更婚約を結ぶはずもないでしょうに。
次々と疑問が浮かんで、言葉にできない。
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