22話 第一王子フィリップ
しばらくして扉が叩かれる。そしてすぐに開いた。ひとりの青年が顔を出す。長めのストレートな金髪が動作によって揺れ、爽やかな碧色の瞳は優しく微笑む。細長くてひょろっとした優男という風貌で、彼は入って来た。
「やあ、アウレリア。新しい子がいるね」
口調も穏やかで優しかった。アウレリア様を呼び捨てにするところから、すぐに第一王子のフィリップ殿下だと察しが行く。
「ええ、ライオネルの婚約者のミシェルですわ」
「君がライオネルの……!」
ぱっと大輪が咲くように朗らかに笑うので、一瞬固まってしまった。どうやら、邪険にはされていないようで一安心だ。
私は、一拍遅れてしまったものの立ち上がってカーテシーをする。
「初めまして、ミシェル・シルヴァレーンです」
「ああ、フィリップ・カイリスだ。よろしく」
にこにことした笑顔は圧がある。頬がひきつりそうだ。でも、彼も五角関係の重要人物のひとり。ちゃんと情報を集めなければ。
「それで、ライオネルのどこが気に入ったんだい?」
いきなり質問をされて、動揺する。初対面の相手、しかも異性の相手に食い気味に質問とは、よほど気になっているようだ。
「フィル! 初対面で聞くような内容ではなくてよ」
アウレリア様が止めてくれてほっとした。まだ上手く設定を詰められてないので、あまり深く突っ込まないでほしい。
フィリップ殿下は「そうか」と軽く頭を掻いて、少し残念そうに眉尻を下げる。
「フィルにはわたくしから話しておきますわ。ミシェルはライオネルを呼んできてちょうだい」
「は、はい!」
アウレリア様はてきぱきと指示をする。私はフィリップ殿下に頭を下げると、ライオネル殿下を呼びに隣の部屋へ行った。隣の部屋は真ん中に長机が二台セットされ、椅子が囲むように置かれている。会議室みたいな作りだった。
「ライオネル殿下、フィリップ殿下が参りました」
「ああ、わかった」
ライオネル殿下は頷くと立ち上がってドアまでやってくる。ノクタリウス様も一緒に立ち上がってついてきた。
面白い、楽しい、と感じて頂けたら、
下の星マークから評価やブックマークをいただけますと、今後の活力になります!
 




