20話 宰相の孫と侯爵令嬢の関係
私たちが腰を下ろすと、ノクタリウス様はアウレリア様の隣へと腰かけた。
そして彼は会話を再開する。
「生徒会に入っていただけるとは助かります。人手不足でして、アウレリアも忙しくしているのです」
「人数も少ないと聞いているからな。兄上を待つ間、生徒会についてご教授願えないだろうか」
「僭越ながら、私が務めさせていただきます」
ライオネル殿下とノクタリウス様の会話が終わると、アウレリア様が立ち上がって私の方へと来る。
「では、ミシェル様にはわたくしが生徒会のお仕事についてお教え致しますわ」
「よろしくお願いいたします」
アウレリア様の申し出にこれはチャンスと心が躍る。しかし、腰を浮かせかけたアウレリア様の手をノクタリウス様が取って、話が止まる。
「いや……そうだな、ミシェル嬢はアウレリアに任せよう。しかし、荷物などは私が持ってくる」
言いかけてやめる。その動作にひっかかりを覚えた。ゲームのイメージだったら、「自分が両方面倒見る」とか一言二言あってもいいくらいだ。「女同士ですから」とアウレリア様が丸め込むとこまで想像できる。けど、あっさりと引き下がったのだ。
「資料がある隣の部屋には、私とライオネル殿下が移動する。君は座ってシルヴァレーン嬢と話すがいい。欲しい書類があるなら取るから言ってくれ」
ノクタリウス様の圧にアウレリア様は顔を曇らせた後、小さく息を吐いてから再び私の前に腰を下ろした。結局は過保護な様子に私はどうするべきか視線を漂わせる。ライオネル殿下が立ち上がるので、彼らが生徒会室の隣の部屋に行くことは決まったことなのだろう。
アウレリア様がノクタリウス様に何かを言って、いくつかの書類をテーブルに出してもらっていた。それから、ノクタリウス様とライオネル殿下は隣の部屋へ移動して行った。
聞いてもいいのかわからない雰囲気に、私は紅茶を嗜むアウレリア様をちらりと見た。
「ノクスは心配性なのよ。幼い頃、私が病弱だった時に面倒を見てくれたから……そのままだと思ってるみたい。今はもうなんともないのに、ああやって面倒焼いてくるの。幼い頃の名残だから、私も強くは言えなくて」
視線を落とす様子は、少し哀愁が漂っている。昔からの関係というのはなかなかに崩しがたいのだろう。前世の私も幼い頃からの関係には、独り暮らしをして逃げる以外に方法が思い浮かばなかったし。ただ、アウレリア様にとってノクタリウス様との関係がどこまでの重荷なのか私にはわからない。
だから、初めて話す私が助言と言って、口を突っ込むことは難しい。関係性を教えてくれるだけで良いスタートだと思った方がいいだろう。私は相槌を打つことに留めた。
「でも、最近ああやって妙に距離を置くのよね、なんなのかしら……」
ぽつりと零したアウレリア様の言葉に私は心当たりがあった。占い部を初めてすぐ、ノクタリウス様が占いの館に来た時のことだ。入学式の時の約束通り来た彼は、友達の体をとって相談してきたのだ。「押してダメなら引いてみろ」と助言したわけだけど、実践してるとは思わなかった……。
私は、曖昧に頷くことしかできなかった。
アウレリア様はすぐに話を変えてくれる。
「さて、生徒会のお仕事ですけど――」
それからしばらくは生徒会の仕事を教えてもらった。一般的な事務のような仕事で、前世の私の仕事ほどではないから、簡単にできるだろう。説明も終盤にかかってくると雑談が混じり始めた。
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