18話 騎士ラルフ
生徒会室には、大きな応接用のソファーが二つ、テーブルを挟んで向かい合わせに置いてある。奥には、一人用の机と椅子がある。生徒会長用の机だろうと予想ができた。壁には棚がいくつか並んでいて、資料が入っている。
ソファーの左側に一人、 茶色のくせっ毛に翠眼を持つ明らかに学生ではない男が座っていた。服装は綺麗な白基調のシャツにズボンというカジュアルなものだが、清潔感はしっかりとある。腰には青の文様が彫られている剣を携えていて、胸元に騎士の紋章のネックレスをしていることからかろうじて騎士なのがわかる。ガタイが良く、大人の雰囲気が出ている。
「おやあ? 生徒会にお客様二組目なんて珍しいですね。お嬢」
私たちを見てからアウレリア様を見ると、たれ目を綻ばせて目じりに皺が寄る。この人が騎士だ。顔を見てもゲームの内容が思いだせないから自信はないけど、たぶん五角関係のひとりだ。
「お黙りなさい、ラルフ。貴方には関係なくてよ」
「へーい。人が来たんなら、オレは行きますね~。また後でお迎えに来ます」
アウレリア様がツンっとした態度を取るも、ラルフさんはにこにこ笑いながら立ち上がる。立ち上がると身長の高さが引き立つ。
いつものことなのか、アウレリア様はツンとしたままラルフさんを見もせずに声だけで応える。
「ええ。遅ければ貴方を置いて帰りますわ」
「いやあ、それじゃ護衛にならんでしょ。ちゃんとオレが帰るまで待っててくださいね。それじゃあ、お嬢をよろしく頼みます~」
ラルフと呼ばれた男はへらへらしながら私たちに頭を下げて部屋から出て行っていった。しまった、普通に見送ってしまった。かと言って、二人の会話で止めるようなことはできなかったし、もう少しあの騎士について知りたかったな。
私が騎士が去っていた方を見ていると、ライオネル殿下に腕を引かれた。アウレリア様に席を勧められたようだ。私とライオネル殿下は勧められるままに隣同士で席に座る。
「今のはわたくしの専属の騎士ですわ。チャラついてはいますけど、腕はたしかなの。ライオネルはよく知ってると思うけど」
アウレリア様はお茶の準備をしながら先ほど去って行ったラルフさんについて説明をしてくれた。ライオネル殿下に話が振られたようなので、私は隣に座る彼の方に視線を向ける。
「俺と一緒に戦場に行っていたからな、腕がいいのはよく知っている」
戦場というと、主に南側にあるヴァレリアン帝国が頻繁に仕掛けて来ていた戦争のことね。アウレリア様と婚約してからはなくなって平和だけど。戦場とは別に北の森には魔王を封印しているせいか、時折魔物と呼ばれる強い生物が出ることがあるらしい。そういう戦いを今まとめているのがライオネル殿下なのよね。戦場の獅子と呼ばれてるくらい有名だわ。
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