17話 侯爵令嬢と平民との間は不穏
私はケイティに笑いかけようとして、アウレリア様が冷たい視線を彼女に送っていることに気づいた。ピタッと動きを止める。これは、私が言葉を挟むとややこしいことになる。
「貴方はいつまでそこで人の話を聞いていらっしゃるの? ミシェル様に謝罪はなさったのかしら?」
「あ、えと……」
アウレリア様は声を張り詰めてケイティに詰め寄る。ケイティは何を言っていいのかわからないのか、私に何度もお辞儀をする。
アウレリア様が注意したのだから、私からさらに催促することは余計だろう。ケイティを見たまま彼女の言葉を待つしかない。
「あの……その……シルヴァレーン様、すみません、前を見ずに飛び出してしまって」
「大丈夫よ、怪我もしていないから」
やっと謝罪の言葉が出せたケイティに、安心してほしいと笑って見せる。本当は腕が痛いんだけど、ここで言ってはケイティが気にするし、アウレリア様がさらにケイティのイメージを悪くするかもしれない。
「本当にすみません……! 私、ここで失礼しますっ」
ケイティは目に涙をためてもう一度お辞儀をすると、踵を返して廊下を駆けて行ってしまった。
「まったく廊下を走るのではありませんと言ってますのに」
アウレリア様がため息を吐いてから、零す。その声には先ほどの問い詰めるような厳しさではなく、じんわりと心配が滲んでいるように聞こえた。アウレリア様は表情を引き締めて切り替え、「どうぞ」と私たちを生徒会の部屋へと案内してくれる。
ケイティと何があったんだろう。ケイティは目に涙があったし、アウレリア様は厳しい口調だったし、侯爵令嬢と平民、しかも能力値の高い平民との間でのいざこざとか、不穏でしかない。
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